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[SVC31-P09] 伊豆大島南東域のマグマ活動
キーワード:伊豆大島、斜長石コントロール、寄生火山、マグマ水蒸気噴火
伊豆大島は,伊豆-小笠原-マリアナ弧の最北端に位置する活動的な火山島である.3つの旧火山体(岡田・行者窟・筆島火山)を基盤とし,その上位に泉津層群,古期大島層群(以下OOG)と新期大島層群(以下YOG)からなる大島火山が重なる(Nakamura,1964).
本研究の対象地域である伊豆大島南東部には,旧火山体の筆島火山,OOGの龍王崎溶岩,カキハラL3・L2・L1溶岩,下原溶岩,YOGの波浮溶岩,イマサキ溶岩と,OOGからYOGにかけてのマグマ水蒸気爆発・水蒸気爆発を起源とする火山礫凝灰岩層・角礫岩層といった火砕岩層(以下,火砕岩層)が海食崖に主に露出している.Nakano and Yamamoto(1991)によってYOGの溶岩に対して行われている[1]溶岩の全岩化学組成が斜長石斑晶量に支配されているグループ(Plagioclase controlled magma;以下Pl-magma),[2]斜長石斑晶量には支配されていないグループ(differentiated magma;以下D-magma)という2つのグループへの分類を伊豆大島南東部の溶岩及び火砕岩層の岩片に対して行った.その分類は,モード測定による斜長石斑晶量と全岩化学分析によるAl2O3の値の相関関係に主に基づいて行った.
本研究では,伊豆大島南東部の溶岩のうち,斜長石斑晶量とAl2O3の値が正の相関(≧0.4)であった筆島火山の溶岩,龍王崎溶岩,カキハラL2・L1溶岩をPl-magmaに,正の相関を示さなかった,カキハラL3溶岩,下原溶岩,波浮溶岩とイマサキ溶岩をD-magmaに分類した.Pl-magmaはYOGでは観られないことがわかった.これは南東部だけに限らず,伊豆大島のYOGの側噴火の溶岩で普遍的な現象である(気象庁,2008).これは,大島火山のマグマ供給系が,カルデラ形成によって変化したことによるとされている(気象庁,2008).
Pl-magmaの場合,全岩化学組成から斜長石斑晶の組成を引くと石基組成を求めることが出来る(Nakano and Yamamoto(1991)).その方法に基づいて石基の主成分化学組成を比較したところ,旧火山体である筆島火山の系列と大島火山の系列は,明瞭に区分された.
火砕岩層の岩片は,そのほとんどが南東部に露出している溶岩からなる.火砕岩層の岩片には,斜長石斑晶が20 vol.%以上の岩片がいくつか認められた.南東部に露出している溶岩の内,斜長石斑晶が20 vol.%を超えるのは,筆島火山の溶岩のみである.しかしながら,上記の斑晶質な岩片の一部は,筆島火山の溶岩と異なる記載的特徴を示した.それらの岩片は,斜長石斑晶量とAl2O3値に正の相関が観られたので,Pl-magmaに分類し,その石基組成を求めたところ,大島火山の溶岩の石基組成を示した.このことから,大島南東部の地下には大島火山の斑晶質な岩石が伏在していると考えられる.この岩石の起源については,本研究では1)大島北東部に露出している古期大島層群下部の斑状玄武岩,2)南東部のPl-magmaの溶岩のマグマだまり内で斜長石斑晶が濃集したキュムレートである可能性を検討している.
引用文献
Nakamura (1964) Bull. Earthq. Res. Inst., Univ. Tokyo, 42, 649-728.
気象庁(2008) 41p
Nakano and Yamamoto (1991) Bull Volcanology, 53, 112-120
本研究の対象地域である伊豆大島南東部には,旧火山体の筆島火山,OOGの龍王崎溶岩,カキハラL3・L2・L1溶岩,下原溶岩,YOGの波浮溶岩,イマサキ溶岩と,OOGからYOGにかけてのマグマ水蒸気爆発・水蒸気爆発を起源とする火山礫凝灰岩層・角礫岩層といった火砕岩層(以下,火砕岩層)が海食崖に主に露出している.Nakano and Yamamoto(1991)によってYOGの溶岩に対して行われている[1]溶岩の全岩化学組成が斜長石斑晶量に支配されているグループ(Plagioclase controlled magma;以下Pl-magma),[2]斜長石斑晶量には支配されていないグループ(differentiated magma;以下D-magma)という2つのグループへの分類を伊豆大島南東部の溶岩及び火砕岩層の岩片に対して行った.その分類は,モード測定による斜長石斑晶量と全岩化学分析によるAl2O3の値の相関関係に主に基づいて行った.
本研究では,伊豆大島南東部の溶岩のうち,斜長石斑晶量とAl2O3の値が正の相関(≧0.4)であった筆島火山の溶岩,龍王崎溶岩,カキハラL2・L1溶岩をPl-magmaに,正の相関を示さなかった,カキハラL3溶岩,下原溶岩,波浮溶岩とイマサキ溶岩をD-magmaに分類した.Pl-magmaはYOGでは観られないことがわかった.これは南東部だけに限らず,伊豆大島のYOGの側噴火の溶岩で普遍的な現象である(気象庁,2008).これは,大島火山のマグマ供給系が,カルデラ形成によって変化したことによるとされている(気象庁,2008).
Pl-magmaの場合,全岩化学組成から斜長石斑晶の組成を引くと石基組成を求めることが出来る(Nakano and Yamamoto(1991)).その方法に基づいて石基の主成分化学組成を比較したところ,旧火山体である筆島火山の系列と大島火山の系列は,明瞭に区分された.
火砕岩層の岩片は,そのほとんどが南東部に露出している溶岩からなる.火砕岩層の岩片には,斜長石斑晶が20 vol.%以上の岩片がいくつか認められた.南東部に露出している溶岩の内,斜長石斑晶が20 vol.%を超えるのは,筆島火山の溶岩のみである.しかしながら,上記の斑晶質な岩片の一部は,筆島火山の溶岩と異なる記載的特徴を示した.それらの岩片は,斜長石斑晶量とAl2O3値に正の相関が観られたので,Pl-magmaに分類し,その石基組成を求めたところ,大島火山の溶岩の石基組成を示した.このことから,大島南東部の地下には大島火山の斑晶質な岩石が伏在していると考えられる.この岩石の起源については,本研究では1)大島北東部に露出している古期大島層群下部の斑状玄武岩,2)南東部のPl-magmaの溶岩のマグマだまり内で斜長石斑晶が濃集したキュムレートである可能性を検討している.
引用文献
Nakamura (1964) Bull. Earthq. Res. Inst., Univ. Tokyo, 42, 649-728.
気象庁(2008) 41p
Nakano and Yamamoto (1991) Bull Volcanology, 53, 112-120