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[SVC32-05] フンガトンガフンガハアパイ2022年噴火に関するトンガ王国における現地聞き取り調査
キーワード:フンガトンガフンガハアパイ火山、トンガ、噴火、津波、降灰
フンガトンガ・フンガハアパイ火山の2022年噴火と、それに伴う津波に対する現地での対応について、トンガ王国を訪問して聞き取り調査を行ったので、その概要を報告する。トンガ王国のトンガタプ島の北65kmに位置する同火山は2022年1月15日に大規模な噴火を引き起こした。噴煙が世界中の火山噴火で史上最高高度に相当する高さ57kmに達したことが衛星観測で確認されると同時に、太平洋全域にわたって特異な潮位変化が観測され、日本国内でも津波警報が発令された。これを受けて、文部科学省では科学研究費助成事業(特別研究促進費)において「トンガ海底火山噴火とそれに伴う津波の予測と災害に関する総合調査」を立ち上げ、その一環として社会的影響に関する研究班を組織した。発表者は同研究班の一員として2023年1月7日より同月19日までの13日間にわたってトンガ王国を訪問し、トンガタプ島ヌクアロファ市ならびにババウ島ネイアフ市においてトンガ地質サービス職員、WHOトンガ・リエゾンオフィス職員、JICAトンガ支所長ならびに噴火を体験した現地在住の日本人3人を対象に聞き取り調査を行った。調査を通して、現地では前年12月から噴火活動が活発化していたことは広く認識されていたものの、大音響を伴う噴火ならびに引き続く津波の発生は専門家を含め想定されていなかったため、対応計画がないまま突発的な対応に追われることとなったことが確認できた。さらには、新型コロナウィルス感染症への予防的措置として災害支援としての渡航が厳しく制限されたことと、海底ケーブル切断によって情報が途絶したことが現地での対応をさらに難しくしたことも関係者からの証言で確認できた。ただし、津波に関しては、2021年11月にトンガ国内で開催されていた津波防災の日関連のイベントが防災関係者にとっては適切な対応を実施するのに役立ったという意見もあり、事前の準備が功を奏した側面もあったようである。噴火推移の理解に関しては、マグマと海水の相互作用に関する基本プロセスを理解するための海域火山における包括的な観測が必要だと考えられる。その一方、火山災害軽減という観点では、水や食料に火山灰の混入しない方法についての啓発活動を十分に実施することが住民の健康を改善し、不安を緩和する上で重要であることが噴火を経験した一般市民からの聞き取りによって示唆された。