日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC32] 火山防災の基礎と応用

2023年5月26日(金) 13:45 〜 15:15 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、石峯 康浩(山梨県富士山科学研究所)、千葉 達朗(アジア航測株式会社)、宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、座長:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、石峯 康浩(山梨県富士山科学研究所)、宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、千葉 達朗(アジア航測株式会社)

15:00 〜 15:15

[SVC32-06] 御嶽山における登山者動向把握実験と登山者データリアルタイム共有実験

*宮城 洋介1、吉森 和城1、金田 成元1臼田 裕一郎1 (1.国立研究開発法人 防災科学技術研究所)

キーワード:登山者動態データ、リアルタイム情報共有、情報可視化、御嶽山

日本国内には111の活動的な火山があり、その中には富士山や御嶽山、那須岳といった、登山者や観光客(以下登山者)が火口近傍まで近づくことのできる火山も多く存在する。2014年9月に御嶽山で発生した噴火では、山頂付近に登山者が多くいる時間帯に噴火が発生したため、噴火の規模は小さいながら、火山災害としては戦後最多の死者行方不明者を出す大災害となった。この際、現場で災害対応を行う地方公共団体をはじめとする防災関係機関にとって、登山者の動向(※ここでは「おおよその数」と「おおまかな位置」)を把握することに時間を要し、また適切な情報共有・情報伝達など緊急時の連携が十分にとれず、避難指示や救助・救出活動といった応急対応に際し困難が生じた。噴火発生時に登山者の動向を把握し適切に情報を共有することは、防災関係機関が適切・迅速な災害対応をとるために重要であり、平時においても避難計画策定に当たっての現実的なバックデータとして使用することができ、避難訓練などの事前防災対策においても役立つと考えられる。
これまで富士山や那須岳において、登山者に小型のビーコンを配布し事前に登山道に設置したレシーバーでビーコンを検知することでビーコンを持った登山者の動態データを取得しその動向を把握する実験(「富士山チャレンジ(2015~2019、2021)」、「那須岳チャレンジ(2020、2021)」と呼称)を実施してきた。2022年は御嶽山において同様のシステムを用いた実験(御嶽山チャレンジ2022)を実施し、地元自治体等(長野県木曽町、名古屋大学)による登山者参加型避難訓練と連携することで、登山者の避難行動モニタリングを試みた他、取得した登山者データを含む様々な情報をリアルタイムで閲覧することができるオンラインのビューワーで可視化し、防災関係機関と共有する実験を行った。
登山者の避難行動モニタリングの結果、噴火発生を模擬したサイレン後に山小屋へ移動した登山者がいた一方で、山小屋にとどまるなどの避難行動をとっていない登山者がいたことから、場所によってサイレンが聞こえない(聞こえづらい)場合があることが分かった。また、情報共有実験を通じて防災関係機関と火山災害対応に関する意見交換を行った結果、共有するべき情報や共有の仕方について、登山道だけではなく避難所や対策本部にもレシーバーを設置し関係機関が同じ情報を共有できるシステムが必要である、災害発生時だけではなく平時の混雑状況の把握や遭難者対応などにフェーズフリーで活用することが重要である、などの意見が挙げられた。
これら実験を通してまた過去の実験結果も踏まえて、低頻度故にこれまで十分に議論されてこなかった火山防災上の課題を整理し、課題解決に向けた考察を行う。