日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC32] 火山防災の基礎と応用

2023年5月26日(金) 15:30 〜 16:45 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、石峯 康浩(山梨県富士山科学研究所)、千葉 達朗(アジア航測株式会社)、宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、座長:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、石峯 康浩(山梨県富士山科学研究所)、宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、千葉 達朗(アジア航測株式会社)

15:45 〜 16:00

[SVC32-08] アグン火山山麓の防災力向上における山梨県の取組み

*亀谷 伸子1吉本 充宏1、朝比奈 めぐみ1新堀 賢志2、今野 慎2、ジェニファー サラ2、ウィウィット スルヤント3、アデ アングライニ3、イ ニョマン スクマ アリダ4 (1.山梨県富士山科学研究所、2.特定非営利活動法人 火山防災推進機構、3.ガジャ・マダ大学、4.ウダヤナ大学)

キーワード:防災教育、アグン火山

インドネシア共和国には127の活火山があり、近年も噴火災害がたびたび発生している。例えば、メラピ火山2010年噴火では、逃げ遅れによって周辺地域に人的被害が生じた。今後も同国内の活火山が噴火する可能性は高いため、火山周辺の住民の火山防災意識を高め、噴火時に主体的な避難行動をとれることが重要である。
アグン火山はバリ島の最高峰であり、1843年、1963年および2017年に噴火している。2017年噴火では人的被害はなかったものの、政府の推計の2倍の避難者が生じ、避難所の衛生、食料、救援物資の配布等の社会的問題が生じた。これらの問題は、周辺住民の火山に関する正しい知識が不足していたことや、警戒情報への理解が不十分であったことが要因として挙げられる。火山に関する知識の普及や正しい理解のためには、特に火山噴火は噴火間隔が長い場合もあるため、継続的な教育が必要である。そのため、児童を対象とした防災教育が効果的である。しかし、インドネシア共和国にはそのような教育プログラムは無く、学校単位では実施することが困難であり、また、地方防災局や自主防災組織の連携もできていないという現状がある。このような現状をふまえ、地元の要望により2022~2024年度JICA草の根協力事業として「地方大学を拠点とした低頻度大規模災害に対応可能な防災コミュニティづくり」を開始した。本プロジェクトでは、山梨県が富士山の火山防災のために取り組んでいるコアグループ会議での組織づくりを参考に、複数の組織間での横のつながりを使った同様の仕組みづくりをすることが目標である。2023年2月には、アグン山麓のブサキー村にて現地のウダヤナ大学等と共に火山防災ワークショップを実施し、大学、地方防災局、ボランティアグループ、小学校の教員などとの意見交換や議論をおこなった。議論により、噴火情報に基づく自主的な避難行動が重要であり、そのためには教育現場だけでなく、専門機関の連携によって防災教育を継続していくことが必要であるという共通の認識を確認することができた。本発表では、ワークショップの詳細やプロジェクトの活動予定について報告する。