15:30 〜 17:00
[SVC32-P02] 御嶽山2014年噴火後の二ノ池の縮小と雪泥流との関係についての考察
キーワード:雪崩、ドローン、火山灰
厚く堆積した火山灰は、噴火から何年も経過した後でも様々な現象や災害をもたらす。御嶽山2014年噴火の際の火砕物密度流は、一ノ池およびその周辺に厚く堆積し、その北東側に接する標高の低い二ノ池火口内にも流入した。しかし、湖沼である二ノ池までは届かず、その周辺に降下した火山灰の厚さは数cmであった(Maeno et al., 2016)。そのため、噴火直後の二の池の面積は噴火前とほとんど変わらなかった。その後、一ノ池火口からの火山灰の流入や二ノ池火口内の火山灰の移動によって二ノ池は埋め立てられ、その面積は年々縮小している。そうした中、2019年5月21日に、二の池火口南西壁にある一ノ池の火口瀬で比較的規模の大きな雪崩が発生し、火口底で雪泥流となって新築の二ノ池山荘の一部を損壊し、また、給水施設の全壊という被害を出した(國友ほか, 2019)。本研究では、噴火以降の二ノ池の縮小について報告し、その過程で生じた雪泥流の発生原因について議論する。
二ノ池の変化の観察は、名古屋大学御嶽山火山研究施設が開所した2017年以降、剣ヶ峰や二ノ池火口における目視や写真撮影により行ってきた。2020年~2022年の3年間については、ドローンによる空撮写真を用いてその面積の変化を調べた(Fig.1)。撮影に使用したドローン機体(Mavic 2 pro)は趣味で購入したものであり、本格的なドローン測量は行っていないが、岩塊や建物を目印として年毎の写真のサイズを合わせ、二ノ池の面積の変化を求めた。また、ドローン写真から確認できる岩塊の位置を市販の安価な二周波GNSS受信器(DG-PRO1RWS)を用いたPPK(Post Processing Kinematics、GEONET三岳を使用)により測定した。PPKの位置精度は数cm程度である。2022年9月13日の時点で二ノ池の面積(窪地の面積)は約650m2であり、国土地理院の空中写真(2014年撮影)から求めた噴火直後の窪地(水深が深く池の色が濃い部分)の面積約6500m2と比べると約10%の大きさにまで縮小している。また、2020年頃までは乳白色がかったグリーンに見えた池の色も、2021年以降は黄土色に見え、窪地の深度も浅くなっているとみられる。現在、約1年間で半分になるペースで二ノ池の面積は縮小しており、このまま行けば、あと数年で消滅する可能性がある(Fig.2)。なお、二ノ池の縮小は2018~2019年頃から加速したように見える。原因としては2018年の大雨やその後の降水量の増加にともなう一ノ池からの火山灰流入量の増加、2019年の雪泥流による二ノ池火口底の火山灰の撹拌や移動が考えられる。
2019年5月21日の雪崩はこうした状況の中で発生した。地元の方々への聴取では、雪崩は一ノ池火口瀬で発生したことがなく、また、これほど大きな雪崩も経験がないとのことである。なぜ、2019年に限って一ノ池火口瀬で大きな雪崩が発生したのかが問題である。2019年の雪崩発生の直接の原因は直前の降雨である。普段なら一ノ池に溜まった水は、火口瀬のガレの下を流れて上の雪層に影響することなく二ノ池火口底に到達するため雪崩には到らない。しかし、2019年は、ガレ内の水の流れが滞り、雪層底面に吹き出したことが雪崩のトリガーになったと考えられる。気象条件では説明が困難であることから、一ノ池から流入した火山灰がガレ下の水の流路を塞いだことが原因である可能性が高いと考えられる。2020年以降は、雪解け時期に降水が多くても火口瀬での雪崩は発生していない。雪泥流およびその後の二ノ池火口内の火山灰の移動によって、せき止め状態が解消されたのではないかと推測される。
(謝辞)王滝村の澤田義幸氏および木曽町三岳支所の方々には、雪崩後の写真と二ノ池の情報を提供して頂きました。
Maeno et al. (2016) Reconstruction of a phreatic eruption on 27 September 2014 at Ontake volcano, central Japan, based on proximal pyroclastic density current and fallout deposits. EPS,68: 82.
國友ほか(2019) 御嶽山二ノ池で発生したスラッシュ雪崩, 日本火山学会2019年度秋季大会,P121.
二ノ池の変化の観察は、名古屋大学御嶽山火山研究施設が開所した2017年以降、剣ヶ峰や二ノ池火口における目視や写真撮影により行ってきた。2020年~2022年の3年間については、ドローンによる空撮写真を用いてその面積の変化を調べた(Fig.1)。撮影に使用したドローン機体(Mavic 2 pro)は趣味で購入したものであり、本格的なドローン測量は行っていないが、岩塊や建物を目印として年毎の写真のサイズを合わせ、二ノ池の面積の変化を求めた。また、ドローン写真から確認できる岩塊の位置を市販の安価な二周波GNSS受信器(DG-PRO1RWS)を用いたPPK(Post Processing Kinematics、GEONET三岳を使用)により測定した。PPKの位置精度は数cm程度である。2022年9月13日の時点で二ノ池の面積(窪地の面積)は約650m2であり、国土地理院の空中写真(2014年撮影)から求めた噴火直後の窪地(水深が深く池の色が濃い部分)の面積約6500m2と比べると約10%の大きさにまで縮小している。また、2020年頃までは乳白色がかったグリーンに見えた池の色も、2021年以降は黄土色に見え、窪地の深度も浅くなっているとみられる。現在、約1年間で半分になるペースで二ノ池の面積は縮小しており、このまま行けば、あと数年で消滅する可能性がある(Fig.2)。なお、二ノ池の縮小は2018~2019年頃から加速したように見える。原因としては2018年の大雨やその後の降水量の増加にともなう一ノ池からの火山灰流入量の増加、2019年の雪泥流による二ノ池火口底の火山灰の撹拌や移動が考えられる。
2019年5月21日の雪崩はこうした状況の中で発生した。地元の方々への聴取では、雪崩は一ノ池火口瀬で発生したことがなく、また、これほど大きな雪崩も経験がないとのことである。なぜ、2019年に限って一ノ池火口瀬で大きな雪崩が発生したのかが問題である。2019年の雪崩発生の直接の原因は直前の降雨である。普段なら一ノ池に溜まった水は、火口瀬のガレの下を流れて上の雪層に影響することなく二ノ池火口底に到達するため雪崩には到らない。しかし、2019年は、ガレ内の水の流れが滞り、雪層底面に吹き出したことが雪崩のトリガーになったと考えられる。気象条件では説明が困難であることから、一ノ池から流入した火山灰がガレ下の水の流路を塞いだことが原因である可能性が高いと考えられる。2020年以降は、雪解け時期に降水が多くても火口瀬での雪崩は発生していない。雪泥流およびその後の二ノ池火口内の火山灰の移動によって、せき止め状態が解消されたのではないかと推測される。
(謝辞)王滝村の澤田義幸氏および木曽町三岳支所の方々には、雪崩後の写真と二ノ池の情報を提供して頂きました。
Maeno et al. (2016) Reconstruction of a phreatic eruption on 27 September 2014 at Ontake volcano, central Japan, based on proximal pyroclastic density current and fallout deposits. EPS,68: 82.
國友ほか(2019) 御嶽山二ノ池で発生したスラッシュ雪崩, 日本火山学会2019年度秋季大会,P121.