日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC33] 火山の監視と活動評価

2023年5月25日(木) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (9) (オンラインポスター)

コンビーナ:高木 朗充(気象庁気象研究所)、宗包 浩志(国土地理院)、大湊 隆雄(東京大学地震研究所)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/26 17:15-18:45)

13:45 〜 15:15

[SVC33-P02] 火山の地形を考慮した地殻変動計算システムの開発(2)

*川口 亮平1 (1.気象研究所)

キーワード:火山性地殻変動、境界要素法、伊豆大島

火山活動に伴う地殻変動観測データは,火山内部のマグマなど圧力源の移動や蓄積の過程を反映していると考えられるため,火山活動を評価する上で重要である.気象庁でも常時監視火山へのGNSSや傾斜計などの地殻変動観測点の整備が進んでおり,近年は,火口周辺に設置された観測点で,圧力源が地表付近に推定されるような地殻変動データも捉えられるようになってきた.このような火口周辺の観測点で得られるデータは,観測点が山体地形の上に設置されていることから,地形形状の影響を受けていると考えられる.そのため,これらのデータを解析するうえでは地形形状の影響を考慮することが重要である.これまで,火山の地形を考慮した地殻変動を数値計算によって求めるプログラムの開発を進め,山体地形が地殻変動データに与える影響を調べてきた.これまで那須岳を対象として,浅部圧力源の推定結果に山体地形が与える影響を調べたところ,圧力源の深さが観測点の標高と同程度となる場合,半無限均質弾性体を仮定した解析では,変動源の深さや体積変化量の大きさが過大または過少に推定されてしまうことがわかった(川口,2020,JpGU).本発表では,開発してきたシステムの紹介と伊豆大島の気象研究所のGNSS観測点に適用した例について報告する.
地形を考慮した地殻変動計算システムは,山体地形のメッシュモデル作成,境界要素法による地殻変動の数値計算および計算結果の観測点ごとの観測量変換といった部分から構成されている.開発したプログラムを気象庁の火山業務でも活用できるようにすることを目的として,プログラムを動かすためのパラメータ設定などを行う簡易的なGUI操作の環境も作成した.山体地形のメッシュモデルは国土地理院の10mメッシュの数値標高モデル(DEM)などから作成している.地殻変動の圧力源は,球状圧力源と楕円体圧力源を設定できるようにしている.数値計算で得られる観測点ごとの地殻変動観測量は気象研究所で開発された火山用地殻活動解析支援ソフトウェアMaGCAP-V(気象研究所地震火山研究部,2008)のファイル形式で出力するようにしている.
開発してきたプログラムを用いて,伊豆大島の気象研究所GNSS観測点における変位量を計算し,半無限弾性体を仮定した場合と比較を行った.気象研究所では伊豆大島の島内に三原山の山頂周辺を含めて15点のGNSS連続観測点を設置している.本研究では,圧力源の位置を三原山の火口直下として,いくつかの深さに圧力源を設定し,GNSS観測点における変位量を求めた.その結果,圧力源の深さが海抜下1000mの場合,数値計算で得られた変位量は半無限均質弾性体を仮定して求めた場合と比較してもその差はほとんどなかった.一方,圧力源の標高を海抜0mとした場合,三原山山頂周辺の観測点では,数値計算で求められた変位量が半無限均質弾性体を仮定した場合と比べると2倍程度大きくなる観測点があることがわかった.このことは,山頂直下浅部の圧力源を推定する場合,地形の効果を考慮しないと,圧力源の深さが浅くまたは,体積変化量が大きく推定されることになると考えられる.発表では,伊豆大島の実際の観測データに対して,圧力源推定を試みた結果についても紹介する.