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[SVC34-05] 日本海溝域で観測された小笠原諸島南端付近と推定される深海域海底火山活動の可能性のある海中伝搬波
2022年8月頃以降数か月にわたって,日本海溝沿いに設置されている海底ケーブル型観測網「日本海溝海底地震津波観測網」(S-net)の地震計により,観測網の南側から深海サウンドチャネル(SOFAR)を伝搬してきたと考えられる波形が断続的に検出されている.2021年8月に発生した福徳岡ノ場及び2022年1月に発生したフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイにおける海底火山の噴火に伴う海中伝搬波が同観測網により検出されている(岩瀬,2022)が,信号出現パターンがこれらに似ていることから,海底火山活動を反映したものである可能性がある.しかしながら,今回各観測点で観測されている信号の振幅は,これらよりもはるかに大きい.
一方,当該期間中の海域火山活動に関する報告としては,海徳海山において海上保安庁の航空機により2022年8月以降に海面の変色水が確認されている,そこで,海徳海山の位置に信号源があると仮定して各観測点までの伝搬時間を計算し,観測点毎に観測波形の時間軸を伝搬時間分ずらし伝搬距離順に並べたものをFig.1に示す.音速は1500 m/sと仮定し,使用したデータは岩瀬(2022)と同じく,S-netの各観測点を構成する2種類の地震計のうち速度計を使用し,もう一方の地震計である加速度計で計測される重力の方向をもとに鉛直成分を算出した波形データである.横軸は各観測点で検出した信号の信号源での発出時刻(2022年11月5日12:00-13:00 JST)に相当し,縦軸は伝搬距離(km)である.縦に並んだ幾筋もの信号が海中伝搬波であるが,やや左に傾いており,見かけ速度が音速よりも早いことがわかる.これは,信号源の位置が海徳海山よりも東にあることを示唆している.また,その並びも直線からずれており,海徳海山が信号源ではないと考えられる.信号源として福徳岡ノ場を仮定した場合も同様であった.
そこで,今回各観測点への信号の到達時間差から,信号源の位置を見積もったところ,福徳岡ノ場から約2マイル程度南東に離れた小笠原諸島南端付近の海溝斜面上と推定された.この条件でFig.1と同様に処理した観測波形をFig.2に示す.Fig.1に比べ,信号の出現位置が揃っていることがわかる.なお,ここでは音速を1500 m/sと仮定しているが,音速がこれより小さい場合は,さらに南東に離れた場所となる.
観測された信号の振幅が大きいことから,信号源は浅海ではなくSOFARチャネルに伝搬しやすい深度にあると思われる.また観測波形に海面や海底での多重反射と見られる特徴があることから,1000 m以上の深海域で発生した可能性が高い.今後さらに詳細に解析を進める.
謝辞
本研究の実施に際し防災科学技術研究所の公開データ(https://doi.org/10.17598/NIED.0007)を利用しました.伝搬距離の計算には国土地理院のサイト(https://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/surveycalc/surveycalc/bl2stf.html)を利用しました.ここに記して謝意を表します.
参考文献
岩瀬(2022),JpGU2022,SVC31-21
海上保安庁,海域火山データベース海徳海山,https://www1.kaiho.mlit.go.jp/GIJUTSUKOKUSAI/kaiikiDB/kaiyo20-2.htm
一方,当該期間中の海域火山活動に関する報告としては,海徳海山において海上保安庁の航空機により2022年8月以降に海面の変色水が確認されている,そこで,海徳海山の位置に信号源があると仮定して各観測点までの伝搬時間を計算し,観測点毎に観測波形の時間軸を伝搬時間分ずらし伝搬距離順に並べたものをFig.1に示す.音速は1500 m/sと仮定し,使用したデータは岩瀬(2022)と同じく,S-netの各観測点を構成する2種類の地震計のうち速度計を使用し,もう一方の地震計である加速度計で計測される重力の方向をもとに鉛直成分を算出した波形データである.横軸は各観測点で検出した信号の信号源での発出時刻(2022年11月5日12:00-13:00 JST)に相当し,縦軸は伝搬距離(km)である.縦に並んだ幾筋もの信号が海中伝搬波であるが,やや左に傾いており,見かけ速度が音速よりも早いことがわかる.これは,信号源の位置が海徳海山よりも東にあることを示唆している.また,その並びも直線からずれており,海徳海山が信号源ではないと考えられる.信号源として福徳岡ノ場を仮定した場合も同様であった.
そこで,今回各観測点への信号の到達時間差から,信号源の位置を見積もったところ,福徳岡ノ場から約2マイル程度南東に離れた小笠原諸島南端付近の海溝斜面上と推定された.この条件でFig.1と同様に処理した観測波形をFig.2に示す.Fig.1に比べ,信号の出現位置が揃っていることがわかる.なお,ここでは音速を1500 m/sと仮定しているが,音速がこれより小さい場合は,さらに南東に離れた場所となる.
観測された信号の振幅が大きいことから,信号源は浅海ではなくSOFARチャネルに伝搬しやすい深度にあると思われる.また観測波形に海面や海底での多重反射と見られる特徴があることから,1000 m以上の深海域で発生した可能性が高い.今後さらに詳細に解析を進める.
謝辞
本研究の実施に際し防災科学技術研究所の公開データ(https://doi.org/10.17598/NIED.0007)を利用しました.伝搬距離の計算には国土地理院のサイト(https://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/surveycalc/surveycalc/bl2stf.html)を利用しました.ここに記して謝意を表します.
参考文献
岩瀬(2022),JpGU2022,SVC31-21
海上保安庁,海域火山データベース海徳海山,https://www1.kaiho.mlit.go.jp/GIJUTSUKOKUSAI/kaiikiDB/kaiyo20-2.htm