日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC34] 海域火山

2023年5月24日(水) 10:45 〜 12:00 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:田村 芳彦(海洋研究開発機構 海域地震火山部門)、藤田 英輔(防災科学技術研究所 火山防災研究部門)、前野 深(東京大学地震研究所)、小野 重明(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、座長:小野 重明(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、田村 芳彦(海洋研究開発機構 海域地震火山部門)

11:15 〜 11:30

[SVC34-08] 最近の調査航海で明らかになったオントンジャワ海台の地下構造、年代、マグマタイプ

★招待講演

*佐野 貴司1 (1.国立科学博物館)

キーワード:オントンジャワ海台、巨大火成区、海台、モホ、スラブ停滞層、マグマ

オントンジャワ海台(OJP)は、地球上で最も大きな巨大海台であり、地球に現存する最大の火成活動の産物である。そのために多くの地球科学者が注目している火山体である。しかし、その重要性にもかかわらず、OJPの大きさ、体積、形成メカニズムはまだ十分に解明されていない。OJPの地下構造やマグマの起源を明らかにするために、過去10年間に複数の調査航海(MR14-06, KR16-04, KH-17-J01, KM1609)がOJPとその周辺で実施されてきた。今回、これらの調査航海に関連する最近の研究成果を紹介する。
MR14-06とKH-17-J01で得た2年間の広帯域海底地震計データを用いた地球物理学的研究により、OJP下の地殻・マントル構造が以下のように推定されてきた。(1) ScS波の走時残差は正であるため、OJP下のマントル全体の平均S速度は低いと推定される(Suetsugu et al., 2019, Earth, Planets and Space)。(2)OJP中央下と東縁付近のMOHO(地震波速度不連続面)は、それぞれ深さ30~40 kmと20 kmに存在する(Tonegawa et al., 2019, Journal of Geophysical Research)。(3)OJP下のリソスフェア−アセノスフィア境界は周囲のマントルより約40km深く、脱水した残留マントルが存在していることが示唆される(Isse et al., 2021, Communications Earth & Environment)。(4)OJP の下には深さ約 200-300 km に取り残された太平洋スラブが存在し、マントル遷移層にはスラブ停滞層が見られる (Obayashi et al., 2021, Scientific Reports)。
KR16-04 と KH-17-J01 のドレッジにより回収された玄武岩類は、次のような地球化学的・年代学的研究に用いられてきた(Tejada et al., submitted; Sano et al., in preparation)。(1) Kwaimbaita タイプの玄武岩は、海台の主要部で大部分を占めているが、これが東端および南端領域にも存在する。(2)東部(東突出部)から得られた玄武岩の新たな 40Ar-39Ar年代データは、従来の報告値よりも明らかに若い。(3) 東突出部で新たに発見された低 Ti 組成の玄武岩は、OJP の東に位置するマニヒキ海台の玄武岩と地球化学的に類似しており、OJP とマニヒキ海台のマグマ形成が密接に関連していることを示唆している。
その他、OJPに関連する最新の研究成果も発表予定である。