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[SVC34-P06] 福徳岡ノ場2021年噴火で発生した漂流軽石の漂流経路と拡散
キーワード:福徳岡ノ場、漂流軽石、衛星画像解析、海流
福徳岡ノ場2021年噴火ではVEI4相当(Maeno, et al,2022)の爆発的噴火に伴い大規模な漂流軽石が発生し、日本各地や東南アジアの沿岸に漂着した。漂流軽石は船舶の航行障害のみならず、発電・工業設備の取水障害にもなりうる為、現象の理解は災害対策において重要である。よって福徳岡ノ場2021年噴火では衛星画像を用いた監視や数値モデルによる漂流シミュレーションが試みられ、示された結果は各機関の防災対応に活用された(例えば、美山ほか2022)。このような防災対応の高度化やシミュレーションの高精度化には、詳細な漂流実績データに基づく検証が重要である。
石毛ほか(2022)では、噴火初期から2021年10月下旬までに撮影された光学衛星画像を用いて漂流軽石を観測・解析した。その結果、漂流軽石は噴火フェーズに対応する、3つのグループ(1~3)からなり、順次南西諸島に漂着したこと、グループ毎に漂着軽石の構成成分が異なる事を明らかにした。本研究では、主に使用した衛星(Sentinel-3及びSentinel-2)の解像度に基づく観測限界を迎えた2021年12月まで観測期間を延長し、漂流軽石の漂流経路や拡散過程の詳細を明らかにし、漂流軽石量の定量化を試みたのでここに報告する。なお、以降に記載する月日はいずれも2021年である。
漂流軽石は発生後、早い段階からグループ間が離隔しつつ、9月上旬まで太平洋を西進した。その後、暖水渦※にのって時計回りに半回転し、グループの西進順序が入れ替わった。9月末の台風通過により海流の流れが西方向に変化し再び西進した。
グループ1は10月下旬に沖縄本島東沖に最接近しつつ、そのほとんどが漂着せずに南西進した。その後、大半が宮古島東沖の弱い冷水渦※内に滞留したが、一部は南西進を続け11月下旬にフィリピンに到達した。冷水渦内で滞留した軽石は同海域で拡散し、先行したグループ3と混合しつつ、11月下旬頃の冷水渦消失後に再び南西進し、12月上旬~中旬にフィリピンや台湾へ到達し観測限界を迎えた。
グループ2は10月中旬に南西諸島に接近した際、3つのサブグループ(2-A,2-B,2-C)に分裂した。2-Aは沖縄本島方向に南西進し、10月下旬に沖縄本島北~西海岸に漂着した。2-Bは10月下旬から奄美群島東沖を北上し、11月上旬には四国沖に到達した。2-Cは10月中旬に奄美群島に漂着し、その後11月上旬まで奄美群島東沖に滞留した。11月中旬頃から北上を開始し、四国沖に到達した。なお、2-B・2-Cともに四国沖から衛星観測が困難になったが、黒潮に運ばれ11月中に順次伊豆諸島に漂着したものと思われる。
グループ3は10月中旬に沖縄本島及び与論島に漂着後、一部は南西進し、10月末には宮古島東沖の冷水渦内で滞留した。その後、同海域に到達したグループ1と混合した。
このように、福徳岡ノ場2021年噴火の漂流軽石は海洋中規模渦の消長や台風の影響を受けながら海洋を拡散したことが明らかとなった。これら衛星画像中の漂流軽石に対し、QGISを用いて分布領域をポリゴンで囲い面積を算出した。加えて、True Color画像における漂流軽石の濃淡を用いた漂流面積濃度指標を策定し、各漂流軽石について推定した。その結果、各グループの100%濃度換算した漂流面積の最大値はグループ1が280 km2(発生日から32日目)、グループ2が170 km2(発生日から2日目)、グループ3が35 km2(発生日から24日目)となり、グループ1が最も大きい漂流軽石グループであった。また、漂流層厚を下限に近い1㎝と仮定すると総体積は0.005 km3となる。沖縄県の軽石想定回収量は約10万m3であり、総体積に対して約2%と見積もられる。
このように福徳岡ノ場2021年噴火は高性能な公共衛星が整備されていたこと、天候に恵まれていたこと等が重なり、高い解像度で4カ月間にわたり漂流軽石が追跡できた貴重な事例である。
※冷水渦・暖水渦:海洋に発生する半径約数十から数百kmの環状の流れ
石毛ほか(2022)では、噴火初期から2021年10月下旬までに撮影された光学衛星画像を用いて漂流軽石を観測・解析した。その結果、漂流軽石は噴火フェーズに対応する、3つのグループ(1~3)からなり、順次南西諸島に漂着したこと、グループ毎に漂着軽石の構成成分が異なる事を明らかにした。本研究では、主に使用した衛星(Sentinel-3及びSentinel-2)の解像度に基づく観測限界を迎えた2021年12月まで観測期間を延長し、漂流軽石の漂流経路や拡散過程の詳細を明らかにし、漂流軽石量の定量化を試みたのでここに報告する。なお、以降に記載する月日はいずれも2021年である。
漂流軽石は発生後、早い段階からグループ間が離隔しつつ、9月上旬まで太平洋を西進した。その後、暖水渦※にのって時計回りに半回転し、グループの西進順序が入れ替わった。9月末の台風通過により海流の流れが西方向に変化し再び西進した。
グループ1は10月下旬に沖縄本島東沖に最接近しつつ、そのほとんどが漂着せずに南西進した。その後、大半が宮古島東沖の弱い冷水渦※内に滞留したが、一部は南西進を続け11月下旬にフィリピンに到達した。冷水渦内で滞留した軽石は同海域で拡散し、先行したグループ3と混合しつつ、11月下旬頃の冷水渦消失後に再び南西進し、12月上旬~中旬にフィリピンや台湾へ到達し観測限界を迎えた。
グループ2は10月中旬に南西諸島に接近した際、3つのサブグループ(2-A,2-B,2-C)に分裂した。2-Aは沖縄本島方向に南西進し、10月下旬に沖縄本島北~西海岸に漂着した。2-Bは10月下旬から奄美群島東沖を北上し、11月上旬には四国沖に到達した。2-Cは10月中旬に奄美群島に漂着し、その後11月上旬まで奄美群島東沖に滞留した。11月中旬頃から北上を開始し、四国沖に到達した。なお、2-B・2-Cともに四国沖から衛星観測が困難になったが、黒潮に運ばれ11月中に順次伊豆諸島に漂着したものと思われる。
グループ3は10月中旬に沖縄本島及び与論島に漂着後、一部は南西進し、10月末には宮古島東沖の冷水渦内で滞留した。その後、同海域に到達したグループ1と混合した。
このように、福徳岡ノ場2021年噴火の漂流軽石は海洋中規模渦の消長や台風の影響を受けながら海洋を拡散したことが明らかとなった。これら衛星画像中の漂流軽石に対し、QGISを用いて分布領域をポリゴンで囲い面積を算出した。加えて、True Color画像における漂流軽石の濃淡を用いた漂流面積濃度指標を策定し、各漂流軽石について推定した。その結果、各グループの100%濃度換算した漂流面積の最大値はグループ1が280 km2(発生日から32日目)、グループ2が170 km2(発生日から2日目)、グループ3が35 km2(発生日から24日目)となり、グループ1が最も大きい漂流軽石グループであった。また、漂流層厚を下限に近い1㎝と仮定すると総体積は0.005 km3となる。沖縄県の軽石想定回収量は約10万m3であり、総体積に対して約2%と見積もられる。
このように福徳岡ノ場2021年噴火は高性能な公共衛星が整備されていたこと、天候に恵まれていたこと等が重なり、高い解像度で4カ月間にわたり漂流軽石が追跡できた貴重な事例である。
※冷水渦・暖水渦:海洋に発生する半径約数十から数百kmの環状の流れ