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[SVC34-P07] 福徳岡ノ場海底火山2021年噴火における漂着軽石・海底軽石の粒子物性と気泡組織
キーワード:福徳岡ノ場海底火山、マグマ水蒸気爆発、気泡組織解析、減圧速度
プリニー式噴火に代表される大規模爆発的噴火は, 減圧によるマグマの発泡・破砕が噴火の原動力として説明される. 火口が水面下の場合はマグマと外来水の接触・混合によりマグマの破砕が促進され, マグマ水蒸気爆発として知られている. 浅海域における事例では比較的小さい噴出率で発生する規模なスルツェイ式噴火がしばしば観測される一方で, 大規模なマグマ水蒸気爆発の観測事例はわずかであり, 現象の描像やメカニズムの理解に乏しい.
小笠原諸島の福徳岡ノ場海底火山では2021年8月に爆発的噴火が発生し, 大規模な噴煙柱を形成するとともに, 噴出物がパミスラフトとして流出した. 浅海域における大規模爆発的噴火は観測事例に乏しく、噴火メカニズムや噴出物の運搬過程を明らかにする上で貴重な事例である。この噴火で観測された噴煙柱は水蒸気と細粒の噴出物が主体であり, 陸上におけるプリニー式噴火とはやや異なる特徴を持っていた可能性がある. したがって、マグマ上昇プロセスを推定し、一般的に高い噴出率を示すプリニー式噴火との比較が重要となる。本研究では噴出物の粒子物性の測定, 気泡組織解析によって, 今回の噴火におけるマグマ上昇過程に制約を与えることを試みた. 試料は漂着軽石(沖縄県読谷村長浜で採取), および新青丸KS-22-05, KS-22-13航海にて海底から採取された軽石・火山灰を用いた.
火山体西側の海底調査では, 海底軽石はパミスラフトからの沈降によって堆積した, あるいは密度流によって運搬されたことが示唆された. 直径数cm程度の軽石の場合, 水冷によって粒子の色や気泡形状が不均質な組織をしばしば示し, 噴出時の代表的な組織を識別することが難しい. 一方で, 火山灰粒子は破砕後に大気中で冷却されており(Tani et al., 2023 IAVCEI), 一部の粒子は水冷破砕による機械的破断(Self and Sparks, 1978)を示す外形がみられない. これらの火山灰粒子は, 海水と直接接触して破砕されたものではなく, 気泡形成とマグマ破砕の履歴が保存されていると予想される.
各試料における空隙率・気泡連結率の測定から, 噴出物は以下の3タイプに区分された. 海底軽石は高発泡度(85-95%)高連結度(>90%)のタイプA, 中発泡度(70-85%)中連結度(55-80%)のタイプBの2つに区分され, 漂着軽石は中発泡度(72-87%)低連結度(20-50%)のタイプCに属する. Mitchell et al., (2021)の手法によりこれらの軽石を評価すると, タイプA, Bは連結気泡の80%程度が海水で満たされた場合に沈むのに対し, タイプCは連結気泡が100%海水に満たされても沈むことができない. よって, 大規模なパミスラフトを形成した要因の1つとして, 噴出物中の気泡の連結が進んでいなかった不十分であったことが考えられる. このような独立気泡を多く含む噴出物は他の海底噴火事例でも報告されており, 気泡核生成と合体のプロセスをより検討する必要がある.
軽石・火山灰粒子の気泡組織は画像解析により定量化した. いずれの試料も300μm未満の気泡の多くは球形に近い形状であり, 合体により一体化していないものと考えられるため, 核形成過程を読み取ることが可能である. 片対数プロットの気泡サイズ分布は漂着軽石で150μm以下, 海底軽石では50-70μm以下の領域において線形であり, 傾きが大きい. このような線形プロットは核形成と成長が一定の速さで継続した場合に生じ, 傾きの増大は核形成率が上昇したことを示す. 気泡サイズのより小さい領域における傾きの変化は、発泡過程のより遅い時期に核形成率が上昇したことを示すことから、海底軽石はより浅部で核形成率が増加した可能性がある. また, 求められた気泡数密度(BND)は2.8-4.5×1013m-3であり, Fiege and Cichy (2015)の手法から減圧速度を推定したところ, 0.2-0.3MPa/sの値が得られた. この値はプリニー式噴火などの大規模爆発的噴火の事例で推定される値より比較的低く, 観測された噴煙柱が高い噴出率に駆動されていないことが示唆される.
小笠原諸島の福徳岡ノ場海底火山では2021年8月に爆発的噴火が発生し, 大規模な噴煙柱を形成するとともに, 噴出物がパミスラフトとして流出した. 浅海域における大規模爆発的噴火は観測事例に乏しく、噴火メカニズムや噴出物の運搬過程を明らかにする上で貴重な事例である。この噴火で観測された噴煙柱は水蒸気と細粒の噴出物が主体であり, 陸上におけるプリニー式噴火とはやや異なる特徴を持っていた可能性がある. したがって、マグマ上昇プロセスを推定し、一般的に高い噴出率を示すプリニー式噴火との比較が重要となる。本研究では噴出物の粒子物性の測定, 気泡組織解析によって, 今回の噴火におけるマグマ上昇過程に制約を与えることを試みた. 試料は漂着軽石(沖縄県読谷村長浜で採取), および新青丸KS-22-05, KS-22-13航海にて海底から採取された軽石・火山灰を用いた.
火山体西側の海底調査では, 海底軽石はパミスラフトからの沈降によって堆積した, あるいは密度流によって運搬されたことが示唆された. 直径数cm程度の軽石の場合, 水冷によって粒子の色や気泡形状が不均質な組織をしばしば示し, 噴出時の代表的な組織を識別することが難しい. 一方で, 火山灰粒子は破砕後に大気中で冷却されており(Tani et al., 2023 IAVCEI), 一部の粒子は水冷破砕による機械的破断(Self and Sparks, 1978)を示す外形がみられない. これらの火山灰粒子は, 海水と直接接触して破砕されたものではなく, 気泡形成とマグマ破砕の履歴が保存されていると予想される.
各試料における空隙率・気泡連結率の測定から, 噴出物は以下の3タイプに区分された. 海底軽石は高発泡度(85-95%)高連結度(>90%)のタイプA, 中発泡度(70-85%)中連結度(55-80%)のタイプBの2つに区分され, 漂着軽石は中発泡度(72-87%)低連結度(20-50%)のタイプCに属する. Mitchell et al., (2021)の手法によりこれらの軽石を評価すると, タイプA, Bは連結気泡の80%程度が海水で満たされた場合に沈むのに対し, タイプCは連結気泡が100%海水に満たされても沈むことができない. よって, 大規模なパミスラフトを形成した要因の1つとして, 噴出物中の気泡の連結が進んでいなかった不十分であったことが考えられる. このような独立気泡を多く含む噴出物は他の海底噴火事例でも報告されており, 気泡核生成と合体のプロセスをより検討する必要がある.
軽石・火山灰粒子の気泡組織は画像解析により定量化した. いずれの試料も300μm未満の気泡の多くは球形に近い形状であり, 合体により一体化していないものと考えられるため, 核形成過程を読み取ることが可能である. 片対数プロットの気泡サイズ分布は漂着軽石で150μm以下, 海底軽石では50-70μm以下の領域において線形であり, 傾きが大きい. このような線形プロットは核形成と成長が一定の速さで継続した場合に生じ, 傾きの増大は核形成率が上昇したことを示す. 気泡サイズのより小さい領域における傾きの変化は、発泡過程のより遅い時期に核形成率が上昇したことを示すことから、海底軽石はより浅部で核形成率が増加した可能性がある. また, 求められた気泡数密度(BND)は2.8-4.5×1013m-3であり, Fiege and Cichy (2015)の手法から減圧速度を推定したところ, 0.2-0.3MPa/sの値が得られた. この値はプリニー式噴火などの大規模爆発的噴火の事例で推定される値より比較的低く, 観測された噴煙柱が高い噴出率に駆動されていないことが示唆される.