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[SVC34-P09] 日光海山海底熱水系の地球化学的研究
キーワード:海底熱水活動、日光海山、北マリアナ弧、水ー岩石反応
日光海山は、海洋性島弧であるマリアナ弧北端に位置する島弧の海底火山である。大きなカルデラをなす山体に複数の円錐状のピークがあり、そのうち南西に位置する最大のピークはメインコーンと呼ばれ、山頂にはカルデラを有する。2005年及び2006年の潜航調査では、その山頂カルデラ内に熱水やガスの噴出が多く見られ、火山活動が活発であった。2005年の調査で得られた試料からは、海水試料中の溶存ガス成分がマグマ由来であることが報告され、2006年の調査では、山頂に溶融硫黄が噴出して溜まっている様子も観察されている。日光海山では、これまでに溶存ガス成分や岩石の分析が行われ、論文として報告されているが、噴出する熱水の地球化学的研究についての報告はない。そこで本研究は、日光海山の火山活動の変化を知ることを目指す研究の一環として、熱水の地球化学的特徴の把握を目的とした。試料は、JAMSTEC所属の調査船「かいめい」により2020年12月に実施されたKM-20-10c次航海で採取された、海水及び熱水と元素状硫黄からなる岩片である。
熱水エンドメンバー組成より、K+、Ca2+は、他の海底熱水系から報告されている値の範囲の中で比較的高い値となり、水-岩石反応が進んでいることを示していると考えられる。pHは2.2と海底熱水としてかなり低く、水-岩石反応ではなく、マグマから脱ガスし熱水に溶け込んだ二酸化硫黄の不均化反応で説明できる。よって、日光海山の熱水の化学組成は、水-岩石反応支配型の傾向がありながら、マグマ成分にも富む特徴を持っていると言える。硫黄同位体比の分析結果より、元素状硫黄からなる岩片のδ34S値は、-7.7から-6.5‰となり、既往の値(-7.3~-6.2‰)とほぼ一致した。δ34S値のこのような負の値は、二酸化硫黄の不均化反応により元素状硫黄や硫化水素が生じた場合、島弧の火山岩のδ34S値が約+5‰であることから、これと同じ値をもつと期待される二酸化硫黄に対して、元素状硫黄や硫化水素が32Sに富むようになることで説明されている。熱水中硫化水素のδ34S値は、硫化水素濃度が最も高いため起源に関する情報も最も強く反映していると考えられる試料で、-4.3‰であった。この値は二酸化硫黄の不均化反応に由来するものと考えられる。
したがって、日光海山の熱水は、水-岩石反応が進んでいながらマグマ成分の寄与も明瞭であることが分かった。2006年に活発なマグマ活動が確認された14年後でも、日光海山はマグマ活動が続いていると言える。
熱水エンドメンバー組成より、K+、Ca2+は、他の海底熱水系から報告されている値の範囲の中で比較的高い値となり、水-岩石反応が進んでいることを示していると考えられる。pHは2.2と海底熱水としてかなり低く、水-岩石反応ではなく、マグマから脱ガスし熱水に溶け込んだ二酸化硫黄の不均化反応で説明できる。よって、日光海山の熱水の化学組成は、水-岩石反応支配型の傾向がありながら、マグマ成分にも富む特徴を持っていると言える。硫黄同位体比の分析結果より、元素状硫黄からなる岩片のδ34S値は、-7.7から-6.5‰となり、既往の値(-7.3~-6.2‰)とほぼ一致した。δ34S値のこのような負の値は、二酸化硫黄の不均化反応により元素状硫黄や硫化水素が生じた場合、島弧の火山岩のδ34S値が約+5‰であることから、これと同じ値をもつと期待される二酸化硫黄に対して、元素状硫黄や硫化水素が32Sに富むようになることで説明されている。熱水中硫化水素のδ34S値は、硫化水素濃度が最も高いため起源に関する情報も最も強く反映していると考えられる試料で、-4.3‰であった。この値は二酸化硫黄の不均化反応に由来するものと考えられる。
したがって、日光海山の熱水は、水-岩石反応が進んでいながらマグマ成分の寄与も明瞭であることが分かった。2006年に活発なマグマ活動が確認された14年後でも、日光海山はマグマ活動が続いていると言える。