日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC34] 海域火山

2023年5月23日(火) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (3) (オンラインポスター)

コンビーナ:田村 芳彦(海洋研究開発機構 海域地震火山部門)、藤田 英輔(防災科学技術研究所 火山防災研究部門)、前野 深(東京大学地震研究所)、小野 重明(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/24 17:15-18:45)

13:45 〜 15:15

[SVC34-P12] 伊豆大島砂の浜で発見した西之島起源の漂着軽石

*青木 かおり1平峰 玲緒奈2石村 大輔2佐藤 智紀3吉田 健太3、常 青3渡辺 樹2鈴木 毅彦1 (1.東京都立大学島嶼火山・都市災害研究センター、2.東京都立大学大学院 都市環境科学研究科、3.国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター))

キーワード:福徳岡ノ場、西之島、軽石、2021年、伊豆大島

2021年8月13日に小笠原諸島の海底火山福徳岡ノ場が噴火したことにより、大量の漂流軽石が発生した。軽石はラフト(筏)のようになって黒潮反流にのって漂流し、2021年10月以降、大東島・奄美・沖縄諸島へと漂着した。11月下旬以降になると、軽石は関東地方の沿岸や、伊豆諸島、海外では台湾、フィリピンなどに漂着したことが報告された。沖縄本島などに初期に漂着した福徳岡ノ場2021年噴火由来と考えられる軽石群の中には、多様な形態の軽石が見られた(石村ほか、2022)。各地に漂着した軽石の大半は良く発泡した灰色の軽石で粗面岩である(Yoshida et al., 2022)。また、「チョコチップ」に例えられる玄武岩マグマに由来する苦鉄質鉱物を中心とした黒色の集合体をとりこんでおり(Yoshida et al., 2022)、他に単斜輝石、斜長石が多く、カンラン石を含んでいる。
そのような中で、2021年11月17日午後に、伊豆大島南西部、砂の浜南東端において採取された漂着軽石群の中から無作為に15個の軽石を選び、測色計を用いて軽石の表面の色を測定したところ、福徳岡ノ場由来の軽石とは明瞭に異なった。また、これらは両輝石を含みカンラン石を含まず、基質部分の主元素組成はデイサイトに分類され、福徳岡ノ場起源の軽石ではないことが分かった(青木ほか、2022)。これらの軽石の給源火山を特定するために、上記の15個の軽石の中から4点を選び、XRFと溶液ICP質量分析を用いた全岩化学組成分析で主元素組成および微量元素組成をえた。その結果、これらは西之島起源の噴出物である可能性が極めて高いと考えられる(Tamura et al., 2018)。
西之島は2013年11月以降噴火が断続的に継続し、その噴出物のほとんどは溶岩と考えられているが、2020年6月にはバイオレント・ストロンボリ式噴火に移行し多量の降下火砕物が噴出したとされている(柳澤ほか,2020; Maeno et al., 2021)。2020年6月以降しばらく噴火活動は沈静化し、福徳岡ノ場が噴火した翌日の2021年8月14日に、約1年ぶりに再び噴火したことが観測されている。この噴火によってもたらされた噴出物が海洋上で広範囲に漂流した報告はないが、2021年11月17日に砂の浜に漂着していた軽石が西之島起源と推定されることから、少なくとも西之島において軽石の噴出を伴う噴火活動があり、ある程度まとまった量の軽石が流出した可能性が示唆される。
軽石の流出・運搬過程については、平峰ほか(2020)によって、いったん陸域に堆積した火山砕屑物がさまざまプロセスで海域に流入して噴火イベントがない平常時でも軽石が海浜に漂着することが指摘されている。今回、砂の浜で見つかった西之島起源と考えられる軽石については、2021年8月14日の噴火活動で生産され漂流した可能性に加えて、これまでの噴火活動によって陸上で堆積して形成された軽石層が、新たな噴火活動によって崩壊して海洋に流出した可能性も併せて検討する必要があるだろう。

<引用文献>石村ほか(2022)月刊地理;Yoshida et al.(2022)Island Arc;青木ほか(2022)JpGU発表要旨;Tamura et al. (2018) Island Arc;柳澤ほか(2020)火山;Maeno et al. (2021) F. Earth Sci.;平峰ほか(2020)日本地理学会大会発表要旨