15:30 〜 17:00
[SVC35-P10] 蔵王火山最新期のテフラ層序の再検討
キーワード:蔵王火山、火山灰層序、噴火推移
蔵王火山は東北日本の代表的な活火山の一つである。有史時代の多数の噴火記録があり、将来的に噴火する可能性が高い火山であるため、文科省の次世代火山研究・火山人材育成総合プロジェクトで研究対象火山に含まれている。このプロジェクトの目的の一つに、対象火山の噴火履歴を解明し、それを基に事象系統樹を作成することがある。蔵王火山の活動の全容は2015年に出版された産総研火山地質シリーズの蔵王山火山地質図において全面的に見直され、活動期は6つに分けられ、そのうち3万5千年前から現在も継続している活動が最新の活動期VIとされた。また、活動VIのテフラ研究成果が総括され、約3.3~1.3万年前に4層、約9~4.1千年前に9層、約3千年前前後に1層、約2千年前以降に9層が認定されているとされた。プロジェクトの期間中には、地表踏査に加えトレンチ調査を行い、また、岩相に加え炭素14年代測定値を基にしてテフラ層の露頭間の対比を行い、上記のテフラ層序の再検討を行ってきた。以下にその成果を記す。
約3.3~1.3万年前:従来認められている4層のテフラ層が再確認した。全てラミナの発達したスコリア質火山灰層であり、スコリア層を含むこともある。名称は従来の研究を踏襲しZa-To1~4とする。但し、従来の研究でZa-To3,4と認定されていたものの多くがより新しい時期のテフラ層であることが判明したため、これらの層については分布が大きく修正された。年代はMiura et al. (2008)によるZa-To1~4についての各々約32.5, 30.7, 27.1, 12.9 kaという値を踏襲する。
約9~4.1千年前:従来の研究での露頭間のテフラ層の対比を大幅に修正する必要が生じた。結果として山麓~中腹に広く分布するものは主に3層であることが判明した。何れもスコリア質火山灰主体のラミナの発達した層である。これに加え北部の中腹に分布する特徴的なスコリア層も再確認された。前者はZa-To6,7,8、後者はZa-To5とされているものに対応する。ここではこれらの名称を踏襲する。年代は、従来報告されていた値と今回の調査で得られたものを総合すると、Za-To5,6,7,8は各々約5.8, 5.6, 5.0, 5~4.5 kaと考えられる。なお、Za-To6,7については内部に古土壌の薄層が認められ、形成にある程度の期間を要した可能性がある。また、これまでの研究ではZa-To5の下位に5層が認められていた。今回の調査によって、このうちの最上位層がZa-To6の下部に対比されること、また主に北部に分布するとされてきたその他の4層が南部の刈田岳周辺に広く分布することが判明した。Za-To6の下部に対比された最上位層以外は、下部は白色粘土質火山灰層であり上部は黒色スコリア質火山灰層である。下部の方が上部よりも厚い。名称は従来の研究に従い下位からZa-To5a,5b,5c,5dとする。Za-To5a及び5cの下位の古土壌から各々約8.5~9 ka及び約6.5 kaの年代値が得られている。
約3千年前前後:約3千年前のテフラについてはこの間の調査によって7層からなることが判明した。五色岳活動前のものと考えられるため下位からZa-pre Mochokidae a~gと呼称する。Za-pre shiitake b以外は粘土質白色火山灰層で、e, fは火口に近い地点ではやや砂質火山灰の様相を示し火山礫も含む。Za-pre Otinidae bは青灰色火~灰色粘土質火山灰層である。Za-pre Goshikidake a及びg直下の古土壌から各々約4.5 ka及び約2.8 kaの炭素14年代値が得られている。
約2千年前以降:蔵王火山地質図で認定されている9層が再確認された。最上位の層は白色粘土質火山灰層のみからなり、それ以外はラミナの発達したスコリア質火山灰を主体とし、白色粘土質火山灰層及びスコリア質火山礫層を含む場合がある。蔵王火山地質図では下位よりZa-To9~16とし最上位のものは1895年火山灰とされた。これらは全て五色岳の活動によるものであるが、火口近傍の堆積物との層序の比較から、Za-To9と10は最新の火口である御釜以前に活動した火口からのものであるのに対し、Za-To11以降の7層は御釜火口由来のものと考えられる。そのため、前者をZa-Gs1,2、後者をZa-Ok1~7と呼称することにする。これまでの年代測定結果及び古記録を基にすると、Za-Gs1,2は各々約2~1.4, 1.2~1 ka、Za-Ok1~7は各々13~14世紀, 14世紀, 14~15世紀, 15~16世紀, 17世紀, 19世紀, 1894~1897年と考えられる。
約3.3~1.3万年前:従来認められている4層のテフラ層が再確認した。全てラミナの発達したスコリア質火山灰層であり、スコリア層を含むこともある。名称は従来の研究を踏襲しZa-To1~4とする。但し、従来の研究でZa-To3,4と認定されていたものの多くがより新しい時期のテフラ層であることが判明したため、これらの層については分布が大きく修正された。年代はMiura et al. (2008)によるZa-To1~4についての各々約32.5, 30.7, 27.1, 12.9 kaという値を踏襲する。
約9~4.1千年前:従来の研究での露頭間のテフラ層の対比を大幅に修正する必要が生じた。結果として山麓~中腹に広く分布するものは主に3層であることが判明した。何れもスコリア質火山灰主体のラミナの発達した層である。これに加え北部の中腹に分布する特徴的なスコリア層も再確認された。前者はZa-To6,7,8、後者はZa-To5とされているものに対応する。ここではこれらの名称を踏襲する。年代は、従来報告されていた値と今回の調査で得られたものを総合すると、Za-To5,6,7,8は各々約5.8, 5.6, 5.0, 5~4.5 kaと考えられる。なお、Za-To6,7については内部に古土壌の薄層が認められ、形成にある程度の期間を要した可能性がある。また、これまでの研究ではZa-To5の下位に5層が認められていた。今回の調査によって、このうちの最上位層がZa-To6の下部に対比されること、また主に北部に分布するとされてきたその他の4層が南部の刈田岳周辺に広く分布することが判明した。Za-To6の下部に対比された最上位層以外は、下部は白色粘土質火山灰層であり上部は黒色スコリア質火山灰層である。下部の方が上部よりも厚い。名称は従来の研究に従い下位からZa-To5a,5b,5c,5dとする。Za-To5a及び5cの下位の古土壌から各々約8.5~9 ka及び約6.5 kaの年代値が得られている。
約3千年前前後:約3千年前のテフラについてはこの間の調査によって7層からなることが判明した。五色岳活動前のものと考えられるため下位からZa-pre Mochokidae a~gと呼称する。Za-pre shiitake b以外は粘土質白色火山灰層で、e, fは火口に近い地点ではやや砂質火山灰の様相を示し火山礫も含む。Za-pre Otinidae bは青灰色火~灰色粘土質火山灰層である。Za-pre Goshikidake a及びg直下の古土壌から各々約4.5 ka及び約2.8 kaの炭素14年代値が得られている。
約2千年前以降:蔵王火山地質図で認定されている9層が再確認された。最上位の層は白色粘土質火山灰層のみからなり、それ以外はラミナの発達したスコリア質火山灰を主体とし、白色粘土質火山灰層及びスコリア質火山礫層を含む場合がある。蔵王火山地質図では下位よりZa-To9~16とし最上位のものは1895年火山灰とされた。これらは全て五色岳の活動によるものであるが、火口近傍の堆積物との層序の比較から、Za-To9と10は最新の火口である御釜以前に活動した火口からのものであるのに対し、Za-To11以降の7層は御釜火口由来のものと考えられる。そのため、前者をZa-Gs1,2、後者をZa-Ok1~7と呼称することにする。これまでの年代測定結果及び古記録を基にすると、Za-Gs1,2は各々約2~1.4, 1.2~1 ka、Za-Ok1~7は各々13~14世紀, 14世紀, 14~15世紀, 15~16世紀, 17世紀, 19世紀, 1894~1897年と考えられる。