15:30 〜 17:00
[SVC35-P15] 無人航空機(UAV)による火山災害のリアルタイム把握手法の開発の現状と今後の展望
キーワード:無人航空機、火山災害、リアルタイム、3次元モデル
火山噴火時に火口上空を有人航空機が飛行することは危険が伴うため、無人航空機(UAV: Unmanned Aerial Vehicle)による調査が期待されている。文部科学省次世代火山研究推進事業では、2016年から課題Dのサブテーマ1として「 無人機(ドローン等)による火山災害のリアルタイム把握手法の開発」の検討を進めており、ここでは研究の現状と今後の展望を示す。
本研究を実施する上での前提条件として、市販されているUAV(回転翼)を使用すること、可視画像と熱画像を使用し、レーザや他のセンサは使用しないことがあげられる。UAVにより大量の画像を撮影し、SfM-MVS(Structure from Motion / Multi-view Stereo)技術を用いて三次元モデルを作成するのが基本的な解析となる。点群データや数値表層モデル(DSM: Digital Surface Model)、オルソ画像などが作成できるが、火口周辺は植生が少ない場合もあり、数値標高モデル(DEM: Digital Elevation Model)と同様のデータが作成できる場合もある。作成された三次元モデルから赤色立体地図や高度段彩図を作成し、地形判読等にできる。
研究前半の大きな課題は三次元モデルの精度向上であった。本研究開始時の2016年に阿蘇山が噴火したため、中岳火口周辺をUAVで垂直写真を撮影した。立入規制区域内での限られた時間での計測であり、基準点(GCP: Ground Control Point)の設置はせず、既存構造物を使用した。既存の航空レーザ測量のDEMとの差分解析を試みたが、GCPがなかったため位置調整がうまくできず、精度の高い差分解析が実施できなかった。その後、伊豆大島の実証実験で、GCPを設置すると三次元モデルの精度が向上することを確認できたが、火山噴火中に対象物付近にGCPを設置することは困難な場合が予想される。そこで、2020年にRTK(Real-Time Kinematic)が搭載されたUAVを導入し、GCPがない状態でもGCP設置時と同等レベルの三次元モデルを作成できることを検証した。また、RTK搭載UAVを使用することで、三次元モデルの作成の時間短縮にもつながった。
作成した三次元モデルの利用として、既存データとの差分解析による噴出物厚さの推定、赤色立体地図等を用いた火口および噴出物分布の把握などが想定される。また、伊豆大島の実証実験において、航空レーザ測量では計測しにくい垂直の火口壁について、大量の写真から三原山中央縦穴火口の詳細な火口の三次元モデルを作成した。詳細な地形モデルから火口の容積、火口から溶岩があふれ出す高度が明らかとなった。そのため、噴火中の火口内を離れた地点からUAV等を用いて斜め写真を撮り、斜め写真測量システムを用いて溶岩表面の標高をリアルタイムに把握できれば、溶岩があふれ出すタイミング等の予測も可能となる。
一方、三次元モデルを作成せず、インフラ分野で用いられている手法を用いて、あらかじめ設定した地点を自動巡回し、可視画像と熱画像を撮影し、変化を抽出する方法も研究している。熱画像は夜間においても状況把握ができるため、火口の形成、溶岩等の流出、地熱地帯の拡大などがリアルタイムに把握できる可能性がある。また、現在の噴火警戒レベルは大きな噴石の飛散距離が重要な判断要素であるため、噴石が飛散した場合にUAVによる熱画像を用いた迅速な到達位置の特定などにも活用が期待される。
UAVを用いて撮影した画像から精度の高い三次元モデルを作成する方法は、概ね目途が付いたと考えるが、データ処理の高速化にはまだ改善の余地がある。また、得られた三次元モデルや画像から、噴出物の分布範囲などをAIや機械学習を用いて自動抽出する方法は、ほとんど研究が進められていない。今後はUAVで取得した画像から、自動抽出などを用いて火山の噴火状況をリアルタイムに把握し、その情報を現地から迅速に提供するための技術開発を進めていきたい。
本研究を実施する上での前提条件として、市販されているUAV(回転翼)を使用すること、可視画像と熱画像を使用し、レーザや他のセンサは使用しないことがあげられる。UAVにより大量の画像を撮影し、SfM-MVS(Structure from Motion / Multi-view Stereo)技術を用いて三次元モデルを作成するのが基本的な解析となる。点群データや数値表層モデル(DSM: Digital Surface Model)、オルソ画像などが作成できるが、火口周辺は植生が少ない場合もあり、数値標高モデル(DEM: Digital Elevation Model)と同様のデータが作成できる場合もある。作成された三次元モデルから赤色立体地図や高度段彩図を作成し、地形判読等にできる。
研究前半の大きな課題は三次元モデルの精度向上であった。本研究開始時の2016年に阿蘇山が噴火したため、中岳火口周辺をUAVで垂直写真を撮影した。立入規制区域内での限られた時間での計測であり、基準点(GCP: Ground Control Point)の設置はせず、既存構造物を使用した。既存の航空レーザ測量のDEMとの差分解析を試みたが、GCPがなかったため位置調整がうまくできず、精度の高い差分解析が実施できなかった。その後、伊豆大島の実証実験で、GCPを設置すると三次元モデルの精度が向上することを確認できたが、火山噴火中に対象物付近にGCPを設置することは困難な場合が予想される。そこで、2020年にRTK(Real-Time Kinematic)が搭載されたUAVを導入し、GCPがない状態でもGCP設置時と同等レベルの三次元モデルを作成できることを検証した。また、RTK搭載UAVを使用することで、三次元モデルの作成の時間短縮にもつながった。
作成した三次元モデルの利用として、既存データとの差分解析による噴出物厚さの推定、赤色立体地図等を用いた火口および噴出物分布の把握などが想定される。また、伊豆大島の実証実験において、航空レーザ測量では計測しにくい垂直の火口壁について、大量の写真から三原山中央縦穴火口の詳細な火口の三次元モデルを作成した。詳細な地形モデルから火口の容積、火口から溶岩があふれ出す高度が明らかとなった。そのため、噴火中の火口内を離れた地点からUAV等を用いて斜め写真を撮り、斜め写真測量システムを用いて溶岩表面の標高をリアルタイムに把握できれば、溶岩があふれ出すタイミング等の予測も可能となる。
一方、三次元モデルを作成せず、インフラ分野で用いられている手法を用いて、あらかじめ設定した地点を自動巡回し、可視画像と熱画像を撮影し、変化を抽出する方法も研究している。熱画像は夜間においても状況把握ができるため、火口の形成、溶岩等の流出、地熱地帯の拡大などがリアルタイムに把握できる可能性がある。また、現在の噴火警戒レベルは大きな噴石の飛散距離が重要な判断要素であるため、噴石が飛散した場合にUAVによる熱画像を用いた迅速な到達位置の特定などにも活用が期待される。
UAVを用いて撮影した画像から精度の高い三次元モデルを作成する方法は、概ね目途が付いたと考えるが、データ処理の高速化にはまだ改善の余地がある。また、得られた三次元モデルや画像から、噴出物の分布範囲などをAIや機械学習を用いて自動抽出する方法は、ほとんど研究が進められていない。今後はUAVで取得した画像から、自動抽出などを用いて火山の噴火状況をリアルタイムに把握し、その情報を現地から迅速に提供するための技術開発を進めていきたい。