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[SVC36-P02] 北海道東部,屈斜路火山における120 ka最大規模カルデラ形成噴火堆積物(KpⅣ)の石質岩片構成物分析
キーワード:カルデラ、屈斜路火山、石質岩片構成物、マグマ供給系
カルデラ形成噴火においては,本質物質以外の石質岩片の種類や量比の時間的・空間的な変化を解析することで,火道・火口の変遷やカルデラ進化過程を議論できる (Suzuki-Kamata et al., 1993; Hasegawa et al., 2022).特に,マグマ供給系が議論されている噴火に対してこの手法を適用することで,より高解像度のカルデラ形成噴火過程の復元が期待できる.本研究では,北海道東部の屈斜路火山における最大規模のカルデラ形成噴火である屈斜路火砕流Ⅳ (KpⅣ: VEI>7)を対象とし,石質岩片の構成物分析を行った.
KpⅣは大きく4つのUnitに分けられる.Unit 1は薄いシルト質の降下火山灰層である.Unit 2は複数の降下軽石からなり,カルデラ北東方でのみ観察できる(火砕サージを挟在).Unit 3は下部と上部(Unit 3-L・3-U)からなる軽石流堆積物で,各基底部に石質岩片濃集部をもつ.また,Unit 3はカルデラ北方と南方で層相が異なり,北方ではスコリアを含む特徴がある.Unit 4は,カルデラ北東方に限定的に認められる比較的小規模なスコリア流堆積物である.
本研究では各Unitの分布傾向や層相変化を考慮し,カルデラを大きく北西(NW),北東(NE),および南(S)の3地域に分け,合計7地点でUnit 2~4を採取した(Unit 1は細粒のため未採取).採取した-5~-2φの粒子について,肉眼観察と薄片観察によって以下の分類を行った.本質物質と石質岩片の量比は重量%で求めた.石質岩片については,12種類(比較的新鮮な火山岩8種,堆積岩,変質岩3種:褐色,緑色,白色)に分類し,カウント数(合計200カウント以上)で各種の比率を求めた.比較的新鮮な火山岩(以下,火山岩)とは,斜長石が清澄な状態を保っている火山岩で,斑晶量の異なる輝石安山岩・デイサイトなどからなる.変質岩は主に斜長石の白濁や緑色化が進行した火山岩である.ボーリング調査などから,屈斜路火山の基盤岩は主に新第三紀の火山岩・堆積岩からなり,それらの上に第四紀前期の外輪山が形成されている(八幡,1989).新第三系の中では,最も古いイクルシベ層が強変質した火山岩からなり,その上位の夕映川層・尾札部層に堆積岩が含まれる.これらの層序・岩質から,巨視的に見て,火山岩は外輪山起源,堆積岩・変質岩は新第三系由来(堆積岩は比較的上位)と考えて議論を進める.
本質物質を含む堆積物全体における石質岩片の割合は,Unit 2で44~54 %,Unit 3およびUnit 4では22.4 %~99.6 %(石質岩片濃集部)である.Unit 2の降下軽石層は,下位から上位に向かって変質岩の割合(石質岩片全体における割合,以下同様)が43 %から15 %へと減少し,火山岩は47 %から73 %に増加する.Unit 3-Lでは,NE・Sで火山岩が66~74 %を占め,堆積岩は1~10%,変質岩は19~33 %である.一方,NWのUnit 3-Lは変質岩の割合が多い(50~59 %).Unit 3-Uは65~74 %が火山岩であるが,特にNE方向では堆積岩の割合が全ユニット中で最も多く,19 %である.Unit 4は変質岩の割合が58 %と全ユニット中で最も多い.
Hasegawa et al., (2016) およびMatsumoto et al., (2018) では,KpⅣ噴火では独立して存在した少なくとも3つの苦鉄質マグマが,断続的に別々の火道から珪長質マグマに貫入した可能性を指摘している.また,各ユニットで不均質な状態の縞状軽石が噴出していること等から,苦鉄質マグマの貫入がそれぞれのユニット噴火の引き金であったとしている.本研究結果では,深部由来と考えられる変質岩の割合が増加するのは,Unit 2の初期,NW方向のUnit 3-LそしてUnit 4である.上記のデータを統合すると,KpIV噴火では,Unit 2, Unit 3およびUnit 4のそれぞれが,苦鉄質マグマの深部からの貫入~珪長質マグマとの混合によって駆動され,噴出したと結論できる.特にUnit 3-LではNW方向で変質岩が急増することから,Unit 3を駆動した苦鉄質マグマの貫入はカルデラ北西部で起きたと考えられる.Unit 4は,Hasegawa et al., (2016)によって,苦鉄質マグマがカルデラ北東部へ貫入して発生したとされており,本研究の結果と整合的である.Hasegawa et al., (2016)では,Unit 3-Uの噴出も苦鉄質マグマの貫入で駆動されたとしているが,このこととUnit 3-U のNE方向における堆積岩の増加との関係については,今後さらなる検討が必要である.
KpⅣは大きく4つのUnitに分けられる.Unit 1は薄いシルト質の降下火山灰層である.Unit 2は複数の降下軽石からなり,カルデラ北東方でのみ観察できる(火砕サージを挟在).Unit 3は下部と上部(Unit 3-L・3-U)からなる軽石流堆積物で,各基底部に石質岩片濃集部をもつ.また,Unit 3はカルデラ北方と南方で層相が異なり,北方ではスコリアを含む特徴がある.Unit 4は,カルデラ北東方に限定的に認められる比較的小規模なスコリア流堆積物である.
本研究では各Unitの分布傾向や層相変化を考慮し,カルデラを大きく北西(NW),北東(NE),および南(S)の3地域に分け,合計7地点でUnit 2~4を採取した(Unit 1は細粒のため未採取).採取した-5~-2φの粒子について,肉眼観察と薄片観察によって以下の分類を行った.本質物質と石質岩片の量比は重量%で求めた.石質岩片については,12種類(比較的新鮮な火山岩8種,堆積岩,変質岩3種:褐色,緑色,白色)に分類し,カウント数(合計200カウント以上)で各種の比率を求めた.比較的新鮮な火山岩(以下,火山岩)とは,斜長石が清澄な状態を保っている火山岩で,斑晶量の異なる輝石安山岩・デイサイトなどからなる.変質岩は主に斜長石の白濁や緑色化が進行した火山岩である.ボーリング調査などから,屈斜路火山の基盤岩は主に新第三紀の火山岩・堆積岩からなり,それらの上に第四紀前期の外輪山が形成されている(八幡,1989).新第三系の中では,最も古いイクルシベ層が強変質した火山岩からなり,その上位の夕映川層・尾札部層に堆積岩が含まれる.これらの層序・岩質から,巨視的に見て,火山岩は外輪山起源,堆積岩・変質岩は新第三系由来(堆積岩は比較的上位)と考えて議論を進める.
本質物質を含む堆積物全体における石質岩片の割合は,Unit 2で44~54 %,Unit 3およびUnit 4では22.4 %~99.6 %(石質岩片濃集部)である.Unit 2の降下軽石層は,下位から上位に向かって変質岩の割合(石質岩片全体における割合,以下同様)が43 %から15 %へと減少し,火山岩は47 %から73 %に増加する.Unit 3-Lでは,NE・Sで火山岩が66~74 %を占め,堆積岩は1~10%,変質岩は19~33 %である.一方,NWのUnit 3-Lは変質岩の割合が多い(50~59 %).Unit 3-Uは65~74 %が火山岩であるが,特にNE方向では堆積岩の割合が全ユニット中で最も多く,19 %である.Unit 4は変質岩の割合が58 %と全ユニット中で最も多い.
Hasegawa et al., (2016) およびMatsumoto et al., (2018) では,KpⅣ噴火では独立して存在した少なくとも3つの苦鉄質マグマが,断続的に別々の火道から珪長質マグマに貫入した可能性を指摘している.また,各ユニットで不均質な状態の縞状軽石が噴出していること等から,苦鉄質マグマの貫入がそれぞれのユニット噴火の引き金であったとしている.本研究結果では,深部由来と考えられる変質岩の割合が増加するのは,Unit 2の初期,NW方向のUnit 3-LそしてUnit 4である.上記のデータを統合すると,KpIV噴火では,Unit 2, Unit 3およびUnit 4のそれぞれが,苦鉄質マグマの深部からの貫入~珪長質マグマとの混合によって駆動され,噴出したと結論できる.特にUnit 3-LではNW方向で変質岩が急増することから,Unit 3を駆動した苦鉄質マグマの貫入はカルデラ北西部で起きたと考えられる.Unit 4は,Hasegawa et al., (2016)によって,苦鉄質マグマがカルデラ北東部へ貫入して発生したとされており,本研究の結果と整合的である.Hasegawa et al., (2016)では,Unit 3-Uの噴出も苦鉄質マグマの貫入で駆動されたとしているが,このこととUnit 3-U のNE方向における堆積岩の増加との関係については,今後さらなる検討が必要である.