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[SVC36-P09] マグマだまり熱モデリングと斜長石の拡散モデリングの併用による深成岩体形成過程制約の適用可能性評価
キーワード:深成岩岩石学、拡散年代計、斜長石
深成岩体は主として沈み込み帯のマグマ活動で形成され、地殻深部・マントルからの熱や物質の移動、地球史を通じた分化地殻の形成などを支配する。
深成岩体は地中でマグマだまりが固結して形成されるが、その形成・成長モデルはいまだ研究の途上にある。溶融状態を維持して成長する古典的なモデル (melt-rich model) では、大規模なマグマ貫入によりmelt poolが形成され、壁面からの冷却による分別結晶化で岩体が作られるとされた。Skaergaardなどの層状岩体の地質構造や化学組成をよく説明し、多量のメルトを保持することからいわゆるsuper-eruptionとの関連も指摘されている (Annen et al., 2022) 。一方、活動的火山の物理探査や成長中の深成岩体の調査からは、活動中のマグマだまりであってもメルト割合は低い(<~30%)ことが示唆されてきた (Samrock et al., 2021; Doi et al., 2001)。近年の詳細な年代測定などの結果から、crystal-dominatedの状態を維持しながらシルが次々と付加することによって成長が進むモデル (crystal-rich model) が広く受け入れられつつある。
このモデルでは温度履歴によってメルト量が変動するため、メルトの付加フラックスや付加イベントの時間間隔などが重要になる。珪長質カルデラ噴火ではcrystal-poor rhyoliteが数多く報告されており、噴火発生時にはメルトに富む領域が形成されていると考えられている。Crystal-richな状態からmelt-richな状態への遷移は重要な課題であり、melt extraction (Bachmann and Bergantz, 2004) の提案をはじめとして多く研究されているが、物質的な研究はいまだ途上にあり共通見解には至っていない。
深成岩体は固結したマグマだまりであり、それぞれの岩体は過去の多様なマグマだまり成長に関する情報を保有する。深成岩体の形成様式を判別して研究を行うことで、マグマ活動の多様性に関して多くの情報を得られる期待がある一方、その判別は容易ではない。
本研究では、成長モデル判別の手がかりとして、深成岩体の経た熱史に着目した。深成岩体の熱史は岩体へのマグマインプットによって変化するため、岩体の成長履歴をよく反映することが期待できる。また熱史の記録媒体として、深成岩に含まれる斜長石結晶中の微量元素 (Sr, Ba, REE) の拡散に着目した。元素拡散は高温時に進行し低温時は停止することから、拡散の強度によって高温状態の持続時間を推定できる。拡散を用いた比熱履歴推定は火山岩斑晶に適用例が多い一方、深成岩への適用は極めて限られることから、本研究では数値計算によって適用可能性評価を行った。計算では、はじめに異なる成長モデルを想定したマグマ供給システム (温度、供給頻度、マグマの付加位置、噴火によるマグマ排出の有無) について岩体の熱モデリングを行い、深成岩体成長時の温度構造履歴を推定した。つぎに得られた各温度構造履歴について、斜長石中の元素拡散のシミュレーションを行った。数値計算の結果と判別が可能となる条件、また手法の適用に際して求められる条件などについて報告する。
深成岩体は地中でマグマだまりが固結して形成されるが、その形成・成長モデルはいまだ研究の途上にある。溶融状態を維持して成長する古典的なモデル (melt-rich model) では、大規模なマグマ貫入によりmelt poolが形成され、壁面からの冷却による分別結晶化で岩体が作られるとされた。Skaergaardなどの層状岩体の地質構造や化学組成をよく説明し、多量のメルトを保持することからいわゆるsuper-eruptionとの関連も指摘されている (Annen et al., 2022) 。一方、活動的火山の物理探査や成長中の深成岩体の調査からは、活動中のマグマだまりであってもメルト割合は低い(<~30%)ことが示唆されてきた (Samrock et al., 2021; Doi et al., 2001)。近年の詳細な年代測定などの結果から、crystal-dominatedの状態を維持しながらシルが次々と付加することによって成長が進むモデル (crystal-rich model) が広く受け入れられつつある。
このモデルでは温度履歴によってメルト量が変動するため、メルトの付加フラックスや付加イベントの時間間隔などが重要になる。珪長質カルデラ噴火ではcrystal-poor rhyoliteが数多く報告されており、噴火発生時にはメルトに富む領域が形成されていると考えられている。Crystal-richな状態からmelt-richな状態への遷移は重要な課題であり、melt extraction (Bachmann and Bergantz, 2004) の提案をはじめとして多く研究されているが、物質的な研究はいまだ途上にあり共通見解には至っていない。
深成岩体は固結したマグマだまりであり、それぞれの岩体は過去の多様なマグマだまり成長に関する情報を保有する。深成岩体の形成様式を判別して研究を行うことで、マグマ活動の多様性に関して多くの情報を得られる期待がある一方、その判別は容易ではない。
本研究では、成長モデル判別の手がかりとして、深成岩体の経た熱史に着目した。深成岩体の熱史は岩体へのマグマインプットによって変化するため、岩体の成長履歴をよく反映することが期待できる。また熱史の記録媒体として、深成岩に含まれる斜長石結晶中の微量元素 (Sr, Ba, REE) の拡散に着目した。元素拡散は高温時に進行し低温時は停止することから、拡散の強度によって高温状態の持続時間を推定できる。拡散を用いた比熱履歴推定は火山岩斑晶に適用例が多い一方、深成岩への適用は極めて限られることから、本研究では数値計算によって適用可能性評価を行った。計算では、はじめに異なる成長モデルを想定したマグマ供給システム (温度、供給頻度、マグマの付加位置、噴火によるマグマ排出の有無) について岩体の熱モデリングを行い、深成岩体成長時の温度構造履歴を推定した。つぎに得られた各温度構造履歴について、斜長石中の元素拡散のシミュレーションを行った。数値計算の結果と判別が可能となる条件、また手法の適用に際して求められる条件などについて報告する。