日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC36] 火山・火成活動および長期予測

2023年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (6) (オンラインポスター)

コンビーナ:長谷川 健(茨城大学理学部地球環境科学コース)、上澤 真平(電力中央研究所 サステナブルシステム研究本部 地質・地下環境研究部門)、及川 輝樹(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、清杉 孝司(神戸大学海洋底探査センター)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 17:15-18:45)

13:45 〜 15:15

[SVC36-P13] 済州島・万丈窟(Man Jang Gul)を形成した溶岩流の降伏値とその温度の推定

*本多 力1、鈴木 一年1、川村 一之1 (1.火山洞窟学会)

キーワード:溶岩チューブ、降伏値、溶岩流、溶岩温度

[はじめに]
図1~3に示す済州島北東部に存在する万丈窟(Man Jang Gul)[1~4]は玄武岩からなる全長8.9kmであり,部分的に多層構造を持つ溶岩チューブ洞窟で,平均傾斜角度が0.4度で,幅が最大23m,空洞高さが最大30mに達する大規模な溶岩チューブ洞窟システムである.ここでは,万丈窟の空洞高さと傾斜角から溶岩降伏値を求め,洞窟が形成されたときの溶岩温度を推定した.

[溶岩降伏値と溶岩温度の推定]
チューブ状洞窟の平均傾斜角度α:0.4度,空洞最高高さH:30m(写真1)から,チューブ内(H=2R)の限界流動条件[5]を示す降伏値を得る式fB= R(ρgsinα)/2= H(ρgsinα)/4,とρ=2500kg/m3, g=9.8m/sec2からfB=1282.6Paが得られる.
万丈窟の溶岩の降伏値の温度依存データは存在していないが,ここでは他で得られている玄武岩溶岩降伏値の温度依存式[6]を用いて温度を推定した.(a)三原山1951年溶岩温度依存降伏値:log10fB=12.67-0.0089θ(ここでθは摂氏温度, fBの単位はPa) を用いると θ=1074℃,(b)エトナ山の溶岩温度依存降伏値:log10fB=34.1836-0.0289θ, (θ is Celcius, unit of fB is Pa)を用いるとθ=1075.4℃,(c)富士山の溶岩温度依存降伏値:log10fB = 27.533-0.0229θ, (θ is Celcius, unit of fB is Pa)を用いるとθ=1066.6℃. このように各溶岩温度依存式から同様な温度が得られ,ほぼ1070℃程度と推定される.

[多段洞窟(チューブインチューブ)について]
写真2に見るように洞窟内にさらに溶岩チューブ洞窟ができる例が見られる。一度形成された洞窟(一次洞窟)(写真1)の中に溶岩の再流入による溶岩チューブ洞窟(二次洞窟)(写真2)が形成された例で、第二次洞窟高さは一次洞窟より小さいので形成時の溶岩温度は高くなる。

[まとめ]
済州島・万丈窟(Man Jang Gul)を形成した溶岩流の降伏値とその温度の推定をおこなった。得られた降伏値と推定温度はfB=1283Pa,θ=1067~1075℃と推定され,玄武岩溶岩として他の例と比較しても妥当な値と考えられる. 空洞高さの小さいチューブインチューブの形成温度はさらに高いと考えられる。

参考文献:
[1]小川孝徳(1985):済州島の溶岩洞窟,韓国文化7-5
[2]小川孝徳(1988):韓国済州島の溶岩洞窟,洞人,第7巻,第4号,日本洞窟協会
[3]洪始煥(1988):済州島の洞窟,立正大学日韓合同韓国済州島学術調査団,韓国済州島の地域研究調査報告書
[4]Teruhiko Sameshima, Takanori Ogawa, and Naruhiko Kashima (1988): Fifth International Symposium on Vulcanospeleology,Excursion Guide Book
[5]本多力(2001): B10富士山溶岩洞窟の形成機構と得られる知見,日本火山学会講演予稿集
[6]本多力,春山純一(2020):3E11地球・月の溶岩チューブ洞窟形成時の溶岩流温度の同定法,第64回宇宙科学技術連合講演会,日本航空宇宙学会.