日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC36] 火山・火成活動および長期予測

2023年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (6) (オンラインポスター)

コンビーナ:長谷川 健(茨城大学理学部地球環境科学コース)、上澤 真平(電力中央研究所 サステナブルシステム研究本部 地質・地下環境研究部門)、及川 輝樹(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、清杉 孝司(神戸大学海洋底探査センター)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 17:15-18:45)

13:45 〜 15:15

[SVC36-P14] ヴェトナム・Chu B’luk火山の溶岩チューブ洞窟の形成温度の推定

*本多 力1、宮下 弘文1、宮崎 哲1、ラ・テイ ・プック2、ローン・テイ ・トゥアン2 (1.火山洞窟学会、2.ヴェトナム地質学連合)

キーワード:溶岩チューブ洞窟、降伏強度、溶岩温度、粘性係数

1.はじめに
Chu B’luk 火山は、ベトナム中部高地のダクノン省クロンノ地区に位置している,ケイ酸重量分率が 48.3 ~ 52.4% の玄武岩溶岩を大量に噴出した大陸火山の 1 つである[1]. 2012 年から 2015 年にかけて,NPO法人火山洞窟学会 はベトナム地質博物館とともに一連の調査を実施し,合計 50 の火山洞窟のうち 16 の洞窟の測量を行った[2].その後2017年にベトナム国立自然博物館とともに 5 つの洞窟が追加測量され21となった.その測量に基づいた検討結果である.

2.C2溶岩チューブ洞窟
C2 溶岩チューブ洞窟(Fig.1,Fig.2)は,測量された 21 の溶岩チューブ洞窟の典型的な例の 1 つであり,洞窟壁から採取された岩石の K/Ar 同位体年代測定は,0.671 ± 0.17 Ma の値を示している[3].ここでは,溶岩チューブのビンガム流体の流体力学的モデルを使用して[4],溶岩チューブ洞窟の傾斜角度と高さから得られた溶岩流の降伏強度: 2.3x104 dyne/cm2[5](Table.1)からC2 溶岩チューブ形成時の溶岩流温度を,さらに粘性係数を推定することを試みた.

3.形成温度の推定およびその粘性係数
Chu B’luk 火山の溶岩の降伏強度と粘度の温度依存データは存在しないため,富士山 1707 玄武岩[4],エトナ火山玄武岩[4],伊豆大島 1951 玄武岩のデータを使用した[4,6].各データから得られた温度依存式と溶岩の降伏強度: 2.3x104 dyne/cm2 から得られた温度とその温度から得られた粘性係数を表1に示す.溶岩洞の形成温度として 1045°C から 1067°C の範囲にあり,さらに得られた粘性係数は2.2x104 から 2.5x105 poiseの範囲である(Table.2)。これらは,玄武岩溶岩流の妥当な値である.

4.おわりに
あらかじめ降伏強度と粘度の温度依存データが得られていれば,過去に形成された溶岩チューブ洞窟の形状から得られた降伏強度によってその形成温度を推定することができる。さらにその温度から溶岩の粘性係数の推定も可能である.

参考文献:
[1] N. Hoang & M. Flower (1998):Petrogenesis of Cenozoic Basalts from Vietnam: Implication for Origins of a ‘Diffuse Igneous Province’,J. Petrology,vol39,No3, pp. 369-395.
[2] La The Phuc, H. Tachihara, T. Honda, Luong Thi Tuat et al. (2018). Geological values of lava caves in Krongno Volcano Geopark, Dak Nong, Vietnam. Vietnam Journal of Earth Sciences, 40(4), pp.299–319.
[3] La The Phuc et al. (2020). Report “Research on the value of cave heritage, propose building on-site conservation museums in The Central Highlands; take for example the volcanic cave in Krong No, Dak Nong province”, code TN17/T06. Archived at the Vietnam Museum of Nature.
[4] 本多力, 春山純一 (2020): 3E11 地球・月の溶岩チューブ洞窟形成時の溶岩流温度の同定法. 第64回宇宙科学技術連合講演会,日本航空宇宙学会
[5] 本多 力, 立原 弘, ラ・テイ・プック, ローン・テイ・トゥアン, チュオン・クアイ・クイ((2015):P87ベトナム中部高原チュブルク火山の溶岩チューブ洞窟と溶岩樹型、日本火山学会講演予稿集,2015,p185
[6] 石原和弘,井口正人,加茂幸介(1988):数値計算による1986年伊豆大島溶岩流の再現,火山,第2集,第33巻,伊豆大島噴火特集号,S64-S76