日本地球惑星科学連合2023年大会

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[E] オンラインポスター発表

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[U-03] Advanced understanding of Quaternary and Anthropocene hydroclimate changes in East Asia

2023年5月26日(金) 15:30 〜 17:00 オンラインポスターZoom会場 (1) (オンラインポスター)

コンビーナ:Li Lo(Department of Geosciences, National Taiwan University)、横山 祐典(東京大学 大気海洋研究所 )、窪田 薫(海洋研究開発機構海域地震火山部門)、Chuan-Chou Shen(National Taiwan University)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/25 17:15-18:45)

15:30 〜 17:00

[U03-P05] TraCE-21ka気候モデル実験を用いた、4.2 ka イベントの三内丸山遺跡における冷夏の頻度解析

*横山 裕介1木野 佳音2沖 大幹1 (1.東京大学大学院工学系研究科、2.東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻)


キーワード:4.2 ka イベント、異常気象、気候モデル、冷夏、縄文時代、climate variability

約4200年前の気候変動イベントである「4.2 ka イベント 」は寒冷化や干ばつによって世界中の文明に影響を与えたとされている。日本においても縄文時代を代表する遺跡である青森県の三内丸山遺跡で4.2ka頃に集落の衰退が報告されている。遺跡近傍の陸奥湾の表層古水温復元は約2℃の低下を示しており、集落の衰退の背景には寒冷化に伴うクリの収量減少があった可能性が指摘されている (Kawahata et al., 2009) 。しかし、集落の衰退要因としては、長期的な寒冷化に加えて人々の生活の時間スケールにおいて当時の気候がどのようであったか考える必要がある。
そこで本研究では、三内丸山遺跡で集落の衰退が起こった頃の東北北部の気候を、超長期連続気候モデル実験結果 (TraCE-21ka; He, 2011) の6000−200BPの月次データ解析により調べた。気象庁の定義に基づいて6−8月の平均気温が下位3分の1に含まれる場合を冷夏としたとき、4100BP頃に冷夏の頻度が増加する結果が得られた。
また、同じくTraCE-21kaを解析した先行研究 (Yan and Liu, 2019) においては、北半球全体の寒冷化の要因として北大西洋振動 (NAO; North Atlantic Oscillation) が指摘されている。そこで、本研究でもNAOと東北北部の気温との関連を、NAO指数と月次気温の回帰分析により調べた。結果として、4100BP頃に東北北部で頻発した冷夏には、NAOが頻度・強度ともに関連していることが示された。
本研究により、4.2kaイベントの頃にNAOと関連した冷夏の頻発が、当時のクリの不作の頻発と三内丸山集落の衰退の要因になり得ることが示唆された。今後は別の気象要素についても解析することで、当時の気候についてさらに理解を深めていく。また、NAOの変動がプロキシデータにもみられるのか、調べる必要がある。

1. He, F. SIMULATING TRANSIENT CLIMATE EVOLUTION OF THE LAST DEGLACIATION WITH CCSM3. Ph.D Dissertation at the UNIVERSITY OF WISCONSIN-MADISON (2011).
2. Kawahata, H. et al. Changes of environments and human activity at the Sannai-Maruyama ruins in Japan during the mid-Holocene Hypsithermal climatic interval. Quat. Sci. Rev. 28, 964–974 (2009).
3. Yan, M. & Liu, J. Physical processes of cooling and mega-drought during the 4.2 ka BP event: results from TraCE-21ka simulations. Clim. Past 15, 265–277 (2019).