09:45 〜 10:00
[U06-04] 地下文化遺産「田谷の洞窟」の多分野横断型研究プロジェクトによるインクルーシブ・アウトリーチ・デザイン
★招待講演
キーワード:田谷の洞窟、自然科学、都市近郊農村、インクルーシブ・アウトリーチ、コミュニティ、持続可能性
世界人口が増加する一方、先進国、とりわけ日本においては、少子超高齢化社会が進んでいる。国連では、人口1000万人以上の都市を「Megacity」と位置づけ、20世紀末ころより様々な都市問題の発生について警鐘を鳴らしている。東京は世界でも有数のMegacityであり、現在も拡大し続けている。巨大な人口が集中する都市を維持するためには、その人口を養うためのエネルギー確保が重要であり、とりわけ水と食料エネルギーの確保は世界的な喫緊の課題である。したがって、都市を思考するときには、同時に食料と水を調達する事が出来る農山間漁村部を思考することが重要になると言える。この時、都市と農村の境界部に当たる都市近郊農村は、都市と農村の文化が混在し都市に飲込まれやすく、農村を維持することが難しい地域と言える。
したがって、都市近郊農村が都市化するという事は、都市化を止められないということに繋がると言える。一方、日本における農業の維持を考えると、農業従事者の超高齢化が進んでおり、人的リソースの観点から将来的な農業維持が困難と言わざるを得ない。このような状況下で、都市近郊農村の持続可能性について様々な取組を行うことは、日本の都市の維持のために避けられないことだと考える。そのためには、都市近郊農村が強い地域力を持つことが必須であり、そのためには地域コンテンツの再検証を行い続ける事と、それを維持していく人々のCivic Prideの醸成が重要な要素と考える。
横浜市の南部に位置する栄区田谷町は、都市近郊農村である。この地域には、他に類を見ない地下文化遺産(以下、UBH:Underground Built Heritage)「田谷の洞窟」がある。
田谷の洞窟は、定泉寺の境内の里山地中に存在する、全長約570m、三層構造、11のドーム空間を配し、洞壁や天井には約200点を超えるレリーフが彫られている、横浜市登録史跡の真言密教の修行窟である。都市近郊農村の田谷地域の強い地域力に繋がる良好な地域コンテンツと言えるUBHである。筆者らは、2017年よりこの洞窟の保全と利活用のための多分野横断型の調査研究をはじめとする保存活動を実施している。
田谷の洞窟の保存活動は、3つの軸を基本に実施している。第1軸は、この洞窟を知るための学際的な基礎調査である。この基礎調査は、地質、地形、地理、環境、洞内外の空間構造などの基礎的なデータや3次元情報を収集し、保全計画の立案のために必要な自然科学を中心にした調査を行っている。これらの基礎調査から、このUBHの上部里山の保全が重要であることが明らかになった。第2軸は、包括的な地域デザインである。都市近郊農村の里山は、放置状態となっているものが多い。放置里山問題は、地権者の高齢化と後継者不足、高額な維持管理費、各種税金の負担などの主に3つの原因が考えられる。この洞窟上部の里山は、複数の地権者により所有されており、彼らに洞窟を保全するために里山保全を依頼することは事実上困難である。
里山保全のためには、地域全体としてのメリットを検討する必要があり、包括的な地域デザインを検討する必要性がある。第3軸は、次世代につなぐ人づくりである。筆者らは、人的リソース開発のために近隣小学校と研究者の連携授業の実施し、また、障害者福祉施設と連携して田谷の里山由来の手作り品の制作を通したインクルーシブなコミュニティの実現を目指している。
本発表では、田谷の洞窟保存活動に関する研究者と小学生と障害者福祉までが連携するインクルーシブなコミュニティーデザインの概要を紹介する。
したがって、都市近郊農村が都市化するという事は、都市化を止められないということに繋がると言える。一方、日本における農業の維持を考えると、農業従事者の超高齢化が進んでおり、人的リソースの観点から将来的な農業維持が困難と言わざるを得ない。このような状況下で、都市近郊農村の持続可能性について様々な取組を行うことは、日本の都市の維持のために避けられないことだと考える。そのためには、都市近郊農村が強い地域力を持つことが必須であり、そのためには地域コンテンツの再検証を行い続ける事と、それを維持していく人々のCivic Prideの醸成が重要な要素と考える。
横浜市の南部に位置する栄区田谷町は、都市近郊農村である。この地域には、他に類を見ない地下文化遺産(以下、UBH:Underground Built Heritage)「田谷の洞窟」がある。
田谷の洞窟は、定泉寺の境内の里山地中に存在する、全長約570m、三層構造、11のドーム空間を配し、洞壁や天井には約200点を超えるレリーフが彫られている、横浜市登録史跡の真言密教の修行窟である。都市近郊農村の田谷地域の強い地域力に繋がる良好な地域コンテンツと言えるUBHである。筆者らは、2017年よりこの洞窟の保全と利活用のための多分野横断型の調査研究をはじめとする保存活動を実施している。
田谷の洞窟の保存活動は、3つの軸を基本に実施している。第1軸は、この洞窟を知るための学際的な基礎調査である。この基礎調査は、地質、地形、地理、環境、洞内外の空間構造などの基礎的なデータや3次元情報を収集し、保全計画の立案のために必要な自然科学を中心にした調査を行っている。これらの基礎調査から、このUBHの上部里山の保全が重要であることが明らかになった。第2軸は、包括的な地域デザインである。都市近郊農村の里山は、放置状態となっているものが多い。放置里山問題は、地権者の高齢化と後継者不足、高額な維持管理費、各種税金の負担などの主に3つの原因が考えられる。この洞窟上部の里山は、複数の地権者により所有されており、彼らに洞窟を保全するために里山保全を依頼することは事実上困難である。
里山保全のためには、地域全体としてのメリットを検討する必要があり、包括的な地域デザインを検討する必要性がある。第3軸は、次世代につなぐ人づくりである。筆者らは、人的リソース開発のために近隣小学校と研究者の連携授業の実施し、また、障害者福祉施設と連携して田谷の里山由来の手作り品の制作を通したインクルーシブなコミュニティの実現を目指している。
本発表では、田谷の洞窟保存活動に関する研究者と小学生と障害者福祉までが連携するインクルーシブなコミュニティーデザインの概要を紹介する。