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[U08-P03] 原始熱水噴出環境におけるマッキナワイトへの地球電気化学的アンモニア濃集
キーワード:アンモニア濃集、地球電気化学、熱水噴出孔
窒素は、炭素と並び生命の重要な構成元素のひとつである。原始地球海洋では、炭素はCOやCO2の固定により比較的豊富に入手できた一方、反応性窒素であるアンモニア (NH3、NH4+)に代表される利用可能な形態の窒素の原始海洋濃度は3.6–70 µM程度と推定され、炭素に比べ希少である。一方、アンモニアを基質としてアミノ酸等を合成する生命前駆化学実験ではmM単位のアンモニアが用いられ、実際の原始海洋環境において想定される濃度との差が指摘されてきた。そのため、高効率な生命前駆化学にはアンモニアの濃集プロセスが必要であった可能性が高いが、一部の多孔質粘土鉱物への吸着が報告されているのみで、生命が誕生したとされる熱水噴出孔近傍で現実的に起こりうるかは検証が不足している。また、海水中に豊富に存在するナトリウムイオンなどの陽イオンはアンモニウムイオン濃集と競合するため、それらを解決するアンモニア濃集プロセスの探索が必要である。
本研究では、初期の熱水噴出孔に豊富に存在する鉄硫化鉱物のひとつであるマッキナワイト (FeS)への、熱水噴出孔想定環境におけるアンモニア濃集プロセスの存在を提案する。約40億年前の海洋はCO2に富み、弱酸性であった。一方、熱水噴出孔から噴出する熱水は海水と比較して低い酸化還元電位を持ち、それらがマッキナワイトなどの導電性鉱物により隔てられることにより、噴出孔の内外に大きな電位差が生じていたと考えられている。このような環境では、マッキナワイトは–0.6 VSHE以下でその一部が還元され、0価の鉄 (Fe0)を含む構造を形成する。生成したFe0はアンモニアの吸着サイトとなり、模擬原始海水 (pH 6–7、1M NaCl)に1mMの濃度で混和させたアンモニアの90%以上を吸着することができ、アンモニアに対して55倍の固液分配係数を達成した。マッキナワイトは、それ自身が生命前駆化学の触媒となり得るため、本研究で提案したアンモニア濃集プロセスはCOワールドにおける炭素中心の生命前駆代謝形成に続いて起こる、窒素源の導入としての役割を担っていたかもしれない。
本研究では、初期の熱水噴出孔に豊富に存在する鉄硫化鉱物のひとつであるマッキナワイト (FeS)への、熱水噴出孔想定環境におけるアンモニア濃集プロセスの存在を提案する。約40億年前の海洋はCO2に富み、弱酸性であった。一方、熱水噴出孔から噴出する熱水は海水と比較して低い酸化還元電位を持ち、それらがマッキナワイトなどの導電性鉱物により隔てられることにより、噴出孔の内外に大きな電位差が生じていたと考えられている。このような環境では、マッキナワイトは–0.6 VSHE以下でその一部が還元され、0価の鉄 (Fe0)を含む構造を形成する。生成したFe0はアンモニアの吸着サイトとなり、模擬原始海水 (pH 6–7、1M NaCl)に1mMの濃度で混和させたアンモニアの90%以上を吸着することができ、アンモニアに対して55倍の固液分配係数を達成した。マッキナワイトは、それ自身が生命前駆化学の触媒となり得るため、本研究で提案したアンモニア濃集プロセスはCOワールドにおける炭素中心の生命前駆代謝形成に続いて起こる、窒素源の導入としての役割を担っていたかもしれない。