日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

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[U-10] 人新世の地球システム論:環境・都市・社会

2023年5月23日(火) 13:45 〜 15:15 展示場特設会場 (1) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:石川 正弘(横浜国立大学大学院環境情報研究院)、山本 伸次(横浜国立大学大学院環境情報研究院)、高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)、原田 尚美(東京大学)、座長:原田 尚美(東京大学)、山本 伸次(横浜国立大学大学院環境情報研究院)

13:45 〜 14:00

[U10-01] 地球人間システムの連環に基づく未来社会の共創

*谷口 真人1 (1.総合地球環境学研究所)

キーワード:地球人間システム、連環、共創、相乗効果

人間活動の拡大による地球環境の限界とそれを越える事象の連鎖が危惧されるなか、人類はどのように持続可能な社会を構築できるかが問われており、その根底には「人はどのように生きるべきか」という問いがある。人新世における、持続可能な社会を脅かす地球温暖化や生物多様性の減少、水資源の枯渇、貧困や格差の問題は、複合的な地球環境問題として連環しているが、学術や社会の極端なサイロ化が問題の解決を阻んでいる。このような複雑な問題を解決に導くには、異分野間を跨ぐ学術と社会との共創によって、様々な要素が連環する地球人間システムの変化を解明し、人類生存のための規範的な方法を示すとともに、持続可能な社会へと移行・転換する必要がある。また異なる歴史・文化を有する多様な地域の課題解決を地球環境課題への挑戦につなぐには、人と自然との対峙ではなく、地球史・文明史を踏まえた地域により異なる自然・社会構造に応じた社会変革と実装の視点が不可欠である。
本研究では、上記の背景および認識と、自然と人間の相互作用環の解明と未来可能な社会の構築のための学際研究・超学際研究をもとに、地球を構成する人と社会と自然の連環を地球人間システムと捉え、ステークホルダーとの共創の視点から、以下の3つのアプローチを中心に、地球環境学の統合化と多様化を高めることで地球環境学の総合化を深化させる。
1つ目は、地球人間システムの様々な要素間に存在する物理的、環境的、社会的な関係性と連環を明らかにし、人間社会の生存基盤を支える水・大気・生態系・エネルギー・食料・土地・労働などの資源間や、社会活動の生産・流通・貯蔵・分配・消費・廃棄のプロセス間、ステークホルダー間における二律背反の減少と相乗効果の増大を、ステークホルダーとの共創を通して行い、部分最適解ではない地域と地球、及び仮想空間を含むマルチスケールの社会をデザインする。
2つ目は、人と社会および自然の連環における、被害と恩恵の閾値の新たな設定や、自己と他者および社会の間で価値を共有し、相互理解を進めるためのコミュニケーション方法の開発等を通して、情報化社会における人の生き方や価値と人々の行動及び社会の変容、そしてそれらを地球環境課題に総合的につなぐことで、地球環境問題の解決へ向けた道筋の提示に挑戦する。
3つ目は、地球人間システムの中にある資源や環境などの均質性と多様性を踏まえ、循環する自然システムと人間社会の相互作用環の観測・観察やモニタリング、地球人間システムのモデリングや未来社会へのビジョニングなどを通して、地球史・生命史・人類史・文明史の時間構造を踏まえた、持続可能な未来に向けた人と自然の関係性の変容を目指す。