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[U13-01] 2023年2月トルコ・東アナトリア断層帯の地震:その概要と予測可能性の検討
キーワード:トルコ、東アナトリア断層、2023年地震、歴史地震、地表地震断層、古地震学
2023年2月6日現地時間の4時17分と13時24分にトルコ中南部で発生した Mw 7.8,Mw7.5 の地震について,既往の研究論文や地震後公表された研究成果をレビューして,断層・地殻変動・地震・地震動等について概観し,歴史記録や古地震資料を検討してこの地震の予測可能性について検討する.USGS の資料によれば,Mw 7.8の本震の震央は Gaziantep の西北西約 35 km で死海地溝断層帯北端部を構成する断層が分布する地域に位置する.破壊は死海地溝断層ではなく北西に約27 km 離れた東アナトリア断層で発生し,南南西と東北東に向けて進行した.活動区間は南方の Antakya から東北東の Malatya 南方までの約 300 km であった.地表で観測された断層変位は最大 7 m,多くの区間で3〜5mの右横ずれであった.9時間後に本震の北約 90 km を震央とする Mw 7.5 の地震は,東アナトリア断層から分岐,並走する Çardak 断層と Sürgü 断層の約150 km の区間を震源とした.西寄りの約 100 km の区間では本震の地表変位を上回る6〜8mの地表変位が観測された.強震動の観測からは,1000 gal を上回る PGA と 200 cm/sec を上回る PGV が記録されており,兵庫県南部地震や熊本地震の震度7の領域での地震動に匹敵する強い揺れが大きな被害を引き起こした.今回の地震について,明確な予測は公表されておらず,イスタンブール沖合いの北アナトリア断層のように警告が行われることもなかった模様である.歴史記録からは,1822年の地震 (M 7.4) が Gaziantep よりも南のシリア領内を中心に大きな被害を発生させた.この地震が東アナトリア断層南端部の今回も活動した区間の活動か,その東 20 km を並走する死海地溝断層帯北端部の活動かを直接示す記録は得られていない.詳しい歴史記録が存在する18 世紀以降,1822年の地震以外は多くが M 7.0前後で今回のように規模の大きな地震はなかった.1513年の地震 (M 7.4) を Mw 7.8の本震の中部区間の1回前の活動とする見解もあるが,この地震についての歴史記録,地質記録は十分ではない.古地震記録の質と量からみて2023年2月の地震発生が予測可能であったかを検討してみたい.