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[U13-08] 修正経験的グリーン関数法による2023年トルコ地震の強震動シミュレーション
キーワード:2023年トルコ地震、強震動シミュレーション
2023年2月6日1時17分(UTC)にトルコ南東部で発生した地震(Mw 7.8)は,カフラマンマラシュ県の東アナトリア断層から南に少し外れた分岐断層から始まり,その後東アナトリア断層に移り,北東と南西にバイラテラルに破壊が進行した.地表地震断層は震源の北東から南西まで約300kmにわたって検出されている.また,主に左横ずれ断層であることが分かっている.東アナトリア断層に沿って強震計が多数設置されており,断層近傍の強震動が余震記録も含めてインターネット上で公開されている.Mw 7.8規模の地震で断層近傍の強震動が多く観測された例は少なく,これらの発生要因の分析を行うことは今後の強震動予測や設計用地震動を考える上でも参考になる.
そこで,本検討ではトルコ・カフラマンマラシュ地震の本震(Mw 7.8)を対象として強震動シミュレーションを行い,強震動生成メカニズムについて考察を行った.強震動シミュレーション手法は修正経験的グリーン関数法を用いた.まずは公開されている中小地震記録を用いてスペクトルインバージョンを行い,強震観測点のサイト増幅特性と対象地域の伝播経路特性を評価した.さらに,推定されたサイト増幅特性と伝播経路特性を用いて断層近傍地点を対象に強震動シミュレーションを行った.震源モデルは矩形アスペリティからなるものとしたが,試験的な検討として観測記録に見られる主な波群に対応するようにアスペリティを配置しており,パラメータの最適化は行っていない.また,本検討は強震動記録が密に得られている震源から見て南西部のみを対象とする.
地表地震断層の影響について,2016年熊本地震のように地表地震断層近傍の強震動は地表付近の破壊の影響を強く受け,断層平行成分に大きな速度を有すると考えられる.それに加え,1995年兵庫県南部地震で見られたようなディレクティビティ効果による地震動も見られると考えられる.実際にトルコ地震の断層近傍強震動を調べると,多くの地点で断層直交成分に100 cm/sを超えるような大きな速度パルスが見られる.揺れの向きも理論上期待されるディレクティビティパルスの向きと一致する.さらに,そのパルス幅はアスペリティによると思われる周期3秒程度のものや,全体的な破壊の進行を反映していると考えられる周期10秒程度のものまで地点によって異なる特徴を持っている. 断層直交成分は断層との位置関係によらず左横ずれ断層の場合に理論上期待されるディレクティビティパルスと整合する極性を示す一方,断層平行成分は断層両側の地点では反対の方位を向いており,表層付近の破壊を反映したものであることが分かる.従って,本地震の強震動を理解するにはではディレクティビティパルスを伴うようなアスペリティの破壊と浅部のすべりの双方を適切に組み合わせることが不可欠である.本検討では,ある程度の高周波成分はアスペリティから放出されたものであるという仮定のもと,おおよその加速度の包絡形を再現するようなアスペリティのパラメータを設定した.
強震動シミュレーションに用いるサイト増幅特性と伝播経路特性は中小地震記録を用いたスペクトルインバージョンにより推定した.野津・長尾(2005)と同様の基準で記録の選定を行い,56地点,44地震,736記録を使用した.使用したすべての波形について加速度波形と加速度フーリエスペクトルを目視確認している.震源・伝播・サイトすべてノンパラメトリックなモデルとし,拘束条件は2023/02/12 18:33の地震(Mw 4.6)についてオメガスクエアモデルによる震源特性を与えた.これは,サイト増幅特性の基準点の選定を行う十分な情報がないこと,強震動シミュレーションでオメガスクエアモデルによる震源を用いることとの整合性を考えてのことである.
強震動シミュレーション手法は修正経験的グリーン関数法を用いた.震源特性はオメガスクエアモデルに従う要素の重ね合わせ,伝播経路特性は幾何減衰と非弾性減衰を考慮,さらに経験的サイト増幅・位相特性を組み合わせることで強震動を合成する.震源付近から南西のハタイ県にかけて7つのアスペリティを使用した.アスペリティの配置は地表地震断層に沿った傾斜角90°の断層面上とした.アスペリティの数やパラメータは今後の検討により変わる可能性があるが,少数のアスペリティにより強い揺れがもたらされたというよりは,破壊の進行に従って連続的に強い揺れが発生していることが示唆される結果が得られた.伝播経路のQ値は120f1.2(ただし100を下限値とする)とした.強震動シミュレーションの結果,加速度波形や低周波数帯を除くフーリエスペクトルはおおむね良い再現性が得られた.地表付近の影響を取り入れ低周波数帯や長周期パルスを再現すること,断層近傍における断層直交・並行成分の大振幅速度の生成要因をより詳細にモデル化すること,等が今後の課題である.
そこで,本検討ではトルコ・カフラマンマラシュ地震の本震(Mw 7.8)を対象として強震動シミュレーションを行い,強震動生成メカニズムについて考察を行った.強震動シミュレーション手法は修正経験的グリーン関数法を用いた.まずは公開されている中小地震記録を用いてスペクトルインバージョンを行い,強震観測点のサイト増幅特性と対象地域の伝播経路特性を評価した.さらに,推定されたサイト増幅特性と伝播経路特性を用いて断層近傍地点を対象に強震動シミュレーションを行った.震源モデルは矩形アスペリティからなるものとしたが,試験的な検討として観測記録に見られる主な波群に対応するようにアスペリティを配置しており,パラメータの最適化は行っていない.また,本検討は強震動記録が密に得られている震源から見て南西部のみを対象とする.
地表地震断層の影響について,2016年熊本地震のように地表地震断層近傍の強震動は地表付近の破壊の影響を強く受け,断層平行成分に大きな速度を有すると考えられる.それに加え,1995年兵庫県南部地震で見られたようなディレクティビティ効果による地震動も見られると考えられる.実際にトルコ地震の断層近傍強震動を調べると,多くの地点で断層直交成分に100 cm/sを超えるような大きな速度パルスが見られる.揺れの向きも理論上期待されるディレクティビティパルスの向きと一致する.さらに,そのパルス幅はアスペリティによると思われる周期3秒程度のものや,全体的な破壊の進行を反映していると考えられる周期10秒程度のものまで地点によって異なる特徴を持っている. 断層直交成分は断層との位置関係によらず左横ずれ断層の場合に理論上期待されるディレクティビティパルスと整合する極性を示す一方,断層平行成分は断層両側の地点では反対の方位を向いており,表層付近の破壊を反映したものであることが分かる.従って,本地震の強震動を理解するにはではディレクティビティパルスを伴うようなアスペリティの破壊と浅部のすべりの双方を適切に組み合わせることが不可欠である.本検討では,ある程度の高周波成分はアスペリティから放出されたものであるという仮定のもと,おおよその加速度の包絡形を再現するようなアスペリティのパラメータを設定した.
強震動シミュレーションに用いるサイト増幅特性と伝播経路特性は中小地震記録を用いたスペクトルインバージョンにより推定した.野津・長尾(2005)と同様の基準で記録の選定を行い,56地点,44地震,736記録を使用した.使用したすべての波形について加速度波形と加速度フーリエスペクトルを目視確認している.震源・伝播・サイトすべてノンパラメトリックなモデルとし,拘束条件は2023/02/12 18:33の地震(Mw 4.6)についてオメガスクエアモデルによる震源特性を与えた.これは,サイト増幅特性の基準点の選定を行う十分な情報がないこと,強震動シミュレーションでオメガスクエアモデルによる震源を用いることとの整合性を考えてのことである.
強震動シミュレーション手法は修正経験的グリーン関数法を用いた.震源特性はオメガスクエアモデルに従う要素の重ね合わせ,伝播経路特性は幾何減衰と非弾性減衰を考慮,さらに経験的サイト増幅・位相特性を組み合わせることで強震動を合成する.震源付近から南西のハタイ県にかけて7つのアスペリティを使用した.アスペリティの配置は地表地震断層に沿った傾斜角90°の断層面上とした.アスペリティの数やパラメータは今後の検討により変わる可能性があるが,少数のアスペリティにより強い揺れがもたらされたというよりは,破壊の進行に従って連続的に強い揺れが発生していることが示唆される結果が得られた.伝播経路のQ値は120f1.2(ただし100を下限値とする)とした.強震動シミュレーションの結果,加速度波形や低周波数帯を除くフーリエスペクトルはおおむね良い再現性が得られた.地表付近の影響を取り入れ低周波数帯や長周期パルスを再現すること,断層近傍における断層直交・並行成分の大振幅速度の生成要因をより詳細にモデル化すること,等が今後の課題である.