14:15 〜 14:30
[U13-09] 2023年2月トルコ・カフラマンマラシュ地震における各地の地震動と構造物被害
キーワード:地震動、構造物被害、現地調査、パルス波、指向性効果、盆地端効果
2023年2月6日現地時間の4時17分と13時24分にトルコ中南部で M 7.8,M7.5 の地震が相次いで発生し Kahramanmaraş地震と呼ばれた.トルコでの観測史上最大級の2つの地震により,強い地震動が発生して東アナトリア断層に沿う地域とシリア北部に甚大な被害がもたらされた.2月末の時点で報告されている 50,000人を超える犠牲者の数は近代・現代のトルコで最大のものとなった.
地震直後にインターネットから得られる情報に基づいて地震動の分析と被害状況の把握を試みた.地震直後の逆解析からはKahramanmaras地震の震源から東アナトリア断層帯を北西に延びる方向での断層運動が注目されたが,震源からHatay県を貫く南南西方向に延びる方向での揺れが,体感震度には反映されていた.トルコのAFADが強震観測をしており,地震直後に結果を公開していた.その最大加速度の分布も震源より南南西方向に延びる方向で大加速度が観測されており,震源より南南西方向に被害が多くなる懸念があった.懸念が公式な被害数として現実のものとなった.AFAD地震動の分析結果から,観測点の一部に震源断層近傍に特徴的な明瞭な1~3秒で卓越する強震動パルス波が認められた.地盤増幅の視点と震源近傍パルス波の観点から構造物被害を実地で観察する必要性があった.また,日本とは大きく異なる地形・地質・地盤条件も構造物被害を調査して考察する際の重要な視点である.さらに構造物被害という観点から作用したであろう地震動を推察する際の重要な視点は,特に建築物であり,トルコでは多様な構造がある中で,主に組積造の1,2階建て住宅と中高層の鉄筋コンクリート造アパート(組石造充填内壁鉄筋コンクリート骨組み構造)に分類される.このRC造形式はヨーロッパの建物ストックの大部分を占めている.トルコにおけるRC造建物は建築物の耐震設計基準に従って設計されるが,基準準拠(AC)と非準拠(NAC)は過去の地震被害分析研究で主要な指標となっており,この視点も被害分析では不可欠である.現地調査では,コンクリートの品質,主鉄筋・せん断補強筋などの鉄筋システムの詳細の観察が不可欠である.衛星画像とそれに基づく被害検出結果が地震直後から多くの機関から公開されていた.現地被害調査は,それらを効果的に事前参照することで,効率的で高精度の現地調査が可能である.著者らは,以上の観点で,2月6日の地震直後から,各種の分析を実施して,現地調査の事前準備を実施した.現地調査に際しては,AFADとの連絡を取り,JICAの協力を得て,森とPolatは3月3日から3月7日まで現地調査を実施した.現地調査は,Gaziantep,Kahramanmaras,Hatay,Adiyamanの各県におけるAFAD地震計設置点とその市町の被害集中域で微動測定と建物被害観察を実施した.また,移動する道路と地表地震断層(事前にUSGSにより読み取られていたものと現地で判断できたもの)との交差点では,道路被害と構造物被害の有無と状況を確認した.地震計周辺の建物被害分布の把握や倒壊を免れた被害建物の詳細観察に,構造物点検用の軽量小型ドローンを使用した.最も倒壊被害が集中したAntakya市では,震災の帯とも言える被害集中帯を現地で確認し,その中にある地震計の上空から周囲の被害状況を確認した.Hatay県を南南西に延びる地震断層の連続的断層運動によるパルス波の指向性効果とHatay地溝帯に堆積するAntakya市の盆地構造の相互作用から予想される盆地端効果の可能性があることを推察する.
地震直後にインターネットから得られる情報に基づいて地震動の分析と被害状況の把握を試みた.地震直後の逆解析からはKahramanmaras地震の震源から東アナトリア断層帯を北西に延びる方向での断層運動が注目されたが,震源からHatay県を貫く南南西方向に延びる方向での揺れが,体感震度には反映されていた.トルコのAFADが強震観測をしており,地震直後に結果を公開していた.その最大加速度の分布も震源より南南西方向に延びる方向で大加速度が観測されており,震源より南南西方向に被害が多くなる懸念があった.懸念が公式な被害数として現実のものとなった.AFAD地震動の分析結果から,観測点の一部に震源断層近傍に特徴的な明瞭な1~3秒で卓越する強震動パルス波が認められた.地盤増幅の視点と震源近傍パルス波の観点から構造物被害を実地で観察する必要性があった.また,日本とは大きく異なる地形・地質・地盤条件も構造物被害を調査して考察する際の重要な視点である.さらに構造物被害という観点から作用したであろう地震動を推察する際の重要な視点は,特に建築物であり,トルコでは多様な構造がある中で,主に組積造の1,2階建て住宅と中高層の鉄筋コンクリート造アパート(組石造充填内壁鉄筋コンクリート骨組み構造)に分類される.このRC造形式はヨーロッパの建物ストックの大部分を占めている.トルコにおけるRC造建物は建築物の耐震設計基準に従って設計されるが,基準準拠(AC)と非準拠(NAC)は過去の地震被害分析研究で主要な指標となっており,この視点も被害分析では不可欠である.現地調査では,コンクリートの品質,主鉄筋・せん断補強筋などの鉄筋システムの詳細の観察が不可欠である.衛星画像とそれに基づく被害検出結果が地震直後から多くの機関から公開されていた.現地被害調査は,それらを効果的に事前参照することで,効率的で高精度の現地調査が可能である.著者らは,以上の観点で,2月6日の地震直後から,各種の分析を実施して,現地調査の事前準備を実施した.現地調査に際しては,AFADとの連絡を取り,JICAの協力を得て,森とPolatは3月3日から3月7日まで現地調査を実施した.現地調査は,Gaziantep,Kahramanmaras,Hatay,Adiyamanの各県におけるAFAD地震計設置点とその市町の被害集中域で微動測定と建物被害観察を実施した.また,移動する道路と地表地震断層(事前にUSGSにより読み取られていたものと現地で判断できたもの)との交差点では,道路被害と構造物被害の有無と状況を確認した.地震計周辺の建物被害分布の把握や倒壊を免れた被害建物の詳細観察に,構造物点検用の軽量小型ドローンを使用した.最も倒壊被害が集中したAntakya市では,震災の帯とも言える被害集中帯を現地で確認し,その中にある地震計の上空から周囲の被害状況を確認した.Hatay県を南南西に延びる地震断層の連続的断層運動によるパルス波の指向性効果とHatay地溝帯に堆積するAntakya市の盆地構造の相互作用から予想される盆地端効果の可能性があることを推察する.