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[U13-11] 過去から学ぶ-東アナトリア断層周辺の自然災害と人類史:トルコ・カイセリの例
キーワード:自然災害、地考古学、地震、断層、洪水、崩壊
地震、洪水、暴風雨、火山活動など、さまざまな自然災害が歴史上あるいは先史時代にどのように発生したかを知ることは、特に地殻変動が激しい地域において、将来の災害軽減に不可欠である。しかし、トルコやシリアを含む中近東諸国では、このような激甚な自然現象が頻繁は起らず、深刻な自然災害に関する歴史的記録や人々の記憶はしばしば欠如している。そのため、過去の自然災害現象の発生を考古学的な記録から評価することは非常に重要である。ここでは、氾濫原、火山、断層などの特徴的な自然環境下に、多くの先史時代の集落が存在するアナトリア中央部のカイセリ地域において、地形学的・地考古学的アプローチからその実態を調査する。これまで、レーザ測距、全地球測位衛星システム、SfM多視点ステレオ写真測量などの高精細地表計測技術を用いて、調査地の詳細な地形データを得るための現地調査を行い、また浅地下環境の一部についても調査を行ってきた。氾濫原、扇状地、断層崖、岩屑なだれ堆積物などの地形調査から、この地域の自然災害のリスクとして、更新生後期から完新世にかけての盆地における洪水、火山性山体崩壊、正断層変位による地震などが示唆されたが、それらのいくつかは考古記録に残る人間活動の時代的分断と関連していた可能性も示唆される。今後さらに詳細な地形区分図などの地形・地質データの解析を進め、人間の居住と地形発達の時空間的な関係を明らかにする必要がある。また、これらの研究成果に基づく事実を地域に発信することは、地震だけでなく、多様な自然現象による将来の災害リスクを軽減するためにも重要である。すなわち、当該地域の自然災害リスクを効果的に発信し、地域住民が日常生活やまちづくりで何をすべきかを考えるためにも、2次元地図や3次元地形モデルなどの空間データの活用を推進する必要があると考えられる。