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[AAS03-P02] f面放射対流平衡系における熱帯低気圧形成のコリオリパラメラ閾値とその領域サイズ依存性に関する数値的研究
熱帯低気圧の形成過程には、SST をはじめとした熱的因子や、惑星渦度や鉛 直シア等の力学的因子といったさまざまな要因が複雑に関係している。その中でも惑星渦度(コリオリパラメタ)は熱帯低気圧の回転や構造形成などに寄与しており、その値が小さい赤道付近では熱帯低気圧の発生数が少ないことが統計的事実として知られている。しかし、熱帯低気圧形成にコリオリパラメタの大きさが寄与するかについては十分に解明されていない。そこで、本研究では鉛直シアや陸地等の環境場の影響を除いた理想的な条件を用意して、熱帯低気圧形成に必要なコリオリパラメタの大きさを調査した。雲解像モデル SCALE-RM を用いて回転を与えた放射対流平衡系シミュレーションを行い、熱帯低気圧の形成にコリオリパラメタの閾値が存在するか、そして、その閾値は領域サイズへ依存するかを調査した。 実施した実験は大きく分けて3つである。まず、(ⅰ)水平解像度 4km で正方形領域の一辺の長さを 96km から 960km まで変更して、熱帯低気圧形成に必要なコ リオリパラメタの閾値の存在を調べた。次に(ⅱ)水平解像度を変更して熱帯低気圧形成に必要なコリオリパラメタの閾値が変化するかを調べた。最後に(ⅲ) 領域サイズを拡大して(ⅰ)の実験を行った。(ⅰ)の結果、領域サイズが 96km 四 方から 960km 四方に至るまで、すべての実験で熱帯低気圧形成が確認できるコリオリパラメタの閾値が実験ごとに確認できた。(ⅲ)においてこの閾値は、領域 サイズが大きくなるにつれて小さくなっていた。領域サイズを1600km,3200km,4800km 四方とさらに拡大して同様の実験を行うと、赤道近傍のコリオリパラメタでも熱帯低気圧の形成が確認できた。また、これらの領域サイズを熱帯低気圧の形成に必要な空間スケールと考え、横軸を領域サイズ[km]、縦軸をコリオリパラメタの閾値[s-1]として作図すると、等価深度を一定として評価したロスビー変形半径に近い値をとることが分かった。