17:15 〜 18:45
[AAS04-P05] 山陽における大雨の発生頻度とメソ・総観スケールの環境場の特徴
キーワード:山陽、大雨、湿潤絶対不安定層、地形効果
山陽(広島県・岡山県)は中国山地と四国山地に囲まれ,降水量の少ない瀬戸内式気候の特徴を持つ.暖候期に上位0.04パーセンタイルの3時間積算降水量も九州・四国・中国地方のなかで少ない.土砂災害や洪水に脆弱な地域であり,近年では毎年のように洪水による被害を経験している.[陽釜1] [陽釜2] 特に2014年広島豪雨や2018年西日本豪雨では山陽で甚大な豪雨災害を招く大雨が発生した.これらの事例では,事例解析を通して総観規模の特徴的な水蒸気輸送の存在が指摘された.一方で,山陽での強い大雨に着目し,複数の事例をもとにした総括的な分析は進んでいない.特に,山地や瀬戸内海といったメソスケールでの地形の効果と降水の関係を評価した例は少ない.本研究では1979年から2015年の39年間について暖候期の山陽の大雨日における総観規模の特徴を水蒸気輸送と関連付けて月別に整理した.また,中国・四国・九州地方のうち特に山陽で降水量が多い日の総観規模の特徴とメソスケールの特徴を明らかにすることで山陽の地形の効果を評価した.メソスケールの議論には東アジアの大雨の評価に用いられている湿潤絶対不安定層を導入し、複雑な地形を持つ山陽におけるMAULの有用性についても検討を行った。
山陽に大雨があった日について,気象庁55年長期再解析データ (Japanese 55-years Reanalysis: JRA-55; Kobayashi et al. 2015)を用いてジオポテンシャル高度や鉛直積算水蒸気輸送量などについて月ごとの合成解析を行った.6月から9月の間で月ごとに異なった環境場で発生していることが分かった.6月・9月は停滞前線と降水を強化する水蒸気輸送や上空の不安定の特徴があり,毎年の大雨日数に大きな長期トレンドはない.8月の山陽の大雨は記録的冷夏の年に多い.熱帯西部北太平洋上の海面更正気圧と日本上空のジオポテンシャル高度とが共変動する南北パターンの特徴を持ち,傾圧的構造により上空の大気が不安定となることで降水の要因となっている.従って,負の太平洋-日本(Pacific-Japan; PJ)パターンは卓越した年に山陽の大雨日と冷夏を伴って現れた.
また,西日本全体で大雨が降るパターンの特徴はよく知られている一方で,山陽に降水の極大をもたらすパターンは解明されていなかった.そこで,中国・四国・九州地方のうち特に山陽で降水量が多い日の特徴を調査した.その結果,西日本の南側に低気圧が存在し太平洋高気圧との間の強い気圧勾配に沿って水蒸気が北上するパターンと,南シナ海上に存在する熱帯低気圧からの水蒸気輸送が中国南東部を経由して中国地方西部から流れ込むパターン,の二つのパターン分けられることが明らかになった.前者では下層の水蒸気が紀伊水道・豊後水道に流れ込み山陽の山地と前線によって持ち上げられることで降水が生じていた.また,MAULが降水分布と一致して発達した.後者では厚みのある水蒸気輸送が山陽の複雑な地形によって収束発散することで降水に結び付いたと考えられる.この場合,前者と比較してMAULは発達せず、発達していても降水域を十分には説明できなかった.本研究で明らかになった山陽に降水の極大をもたらす総観規模のパターンに注目することで,山陽の大雨・土砂災害のリスクを数日前から予測できる可能性がある.また,MAULに関連づけられた降水分布は総観規模の特徴や水蒸気輸送の特徴によって異なることが示唆されたことは,短時間の強い降水予報の評価に有用である.
山陽に大雨があった日について,気象庁55年長期再解析データ (Japanese 55-years Reanalysis: JRA-55; Kobayashi et al. 2015)を用いてジオポテンシャル高度や鉛直積算水蒸気輸送量などについて月ごとの合成解析を行った.6月から9月の間で月ごとに異なった環境場で発生していることが分かった.6月・9月は停滞前線と降水を強化する水蒸気輸送や上空の不安定の特徴があり,毎年の大雨日数に大きな長期トレンドはない.8月の山陽の大雨は記録的冷夏の年に多い.熱帯西部北太平洋上の海面更正気圧と日本上空のジオポテンシャル高度とが共変動する南北パターンの特徴を持ち,傾圧的構造により上空の大気が不安定となることで降水の要因となっている.従って,負の太平洋-日本(Pacific-Japan; PJ)パターンは卓越した年に山陽の大雨日と冷夏を伴って現れた.
また,西日本全体で大雨が降るパターンの特徴はよく知られている一方で,山陽に降水の極大をもたらすパターンは解明されていなかった.そこで,中国・四国・九州地方のうち特に山陽で降水量が多い日の特徴を調査した.その結果,西日本の南側に低気圧が存在し太平洋高気圧との間の強い気圧勾配に沿って水蒸気が北上するパターンと,南シナ海上に存在する熱帯低気圧からの水蒸気輸送が中国南東部を経由して中国地方西部から流れ込むパターン,の二つのパターン分けられることが明らかになった.前者では下層の水蒸気が紀伊水道・豊後水道に流れ込み山陽の山地と前線によって持ち上げられることで降水が生じていた.また,MAULが降水分布と一致して発達した.後者では厚みのある水蒸気輸送が山陽の複雑な地形によって収束発散することで降水に結び付いたと考えられる.この場合,前者と比較してMAULは発達せず、発達していても降水域を十分には説明できなかった.本研究で明らかになった山陽に降水の極大をもたらす総観規模のパターンに注目することで,山陽の大雨・土砂災害のリスクを数日前から予測できる可能性がある.また,MAULに関連づけられた降水分布は総観規模の特徴や水蒸気輸送の特徴によって異なることが示唆されたことは,短時間の強い降水予報の評価に有用である.
