日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS04] Extreme Events and Mesoscale Weather: Observations and Modeling

2024年5月30日(木) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:竹見 哲也(京都大学防災研究所)、Nayak Sridhara(Japan Meteorological Corporation)、飯塚 聡(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)


17:15 〜 18:45

[AAS04-P10] 水蒸気輸送場の経年変化に着目した九州地方における停滞性の短時間強雨の増加要因の解明

*若尾 和哉1佐藤 友徳2 (1.北海道大学大学院環境科学院、2.北海道大学)

キーワード:集中豪雨、メソ気象学、局地気候、気候変動

令和2年7月豪雨では,発達した積乱雲が組織化し降水帯が数時間停滞したことで,局地的に大雨が発生した.その結果,九州地方西部を中心として河川が相次いで氾濫し甚大な被害が引き起こされた.数時間停滞して局所的に大雨をもたらす降水帯は過去にも日本で甚大な災害を引き起こしていることから,停滞性の短時間強雨の特徴と発生メカニズムの理解を目的とした研究が精力的に行われている.これまでの研究により,短時間強雨は西日本において顕著に増加していることが指摘されており,長期的な気温上昇に伴う水蒸気量の増加で説明されることが多い.しかし,短時間強雨が発生した際の水蒸気量は大気の川や太平洋高気圧の位置といった総観規模の大気場の影響を強く反映していることが多い.大気循環場と流入する水蒸気量の変動を客観的に評価することは,短時間強雨の増加要因を調査する上で重要である.そこで本研究は水蒸気の流入場やそれを決める大気循環場の経年変化に着目し,九州地方で発生する停滞性の短時間強雨の空間的特徴や近年の増加要因を解明することを目的とした.
本研究では,気象庁の解析雨量データから停滞性の短時間強雨に相当する強雨域を2006-2022年の4-11月の期間について抽出した.また,大気循環場の経年変化を考慮するために,自己組織化マップを用いて日本周辺の大気循環場を分類した.ここでは,水蒸気の水平輸送を支配する海面更正気圧に基づいて分類を行った.分類した気圧配置パターンや水蒸気の流入場ごとに強雨域の空間的特徴や強雨域の発生数の経年変化を調査した.その結果,強雨域が多く発生する場所や形状は気圧配置によって異なることが分かった.九州地方の南海上に太平洋高気圧が張り出している気圧配置(太平洋高気圧型)で発生する強雨域は2015年以降に多く,その傾向が継続していることが明らかになった.さらに太平洋高気圧型の気圧配置で発生した強雨域の年々変動を3つの要素,すなわち気圧配置の出現数,強雨域の発生確率,強雨域の同時発生数に分解しそれぞれの年々変動を調査した.その結果,強雨域の発生回数の年々変動は強雨域の発生確率の年々変動と高い相関があることが分かった.同様の結果はAMeDASを用いた過去41年間(1980-2020年)にわたる長期解析でも確認された.以上の結果から,近年の強雨の増加は太平洋高気圧に関連する大気循環場によってもたらされており,類似した総観場のもとでの強雨の発生確率の増加が大きく寄与していることが明らかになった.