17:15 〜 18:45
[AAS05-P09] 台風制御の実証実験ガバナンスの論点−Stormfury計画の分析から−
キーワード:台風制御、ELSI、ガバナンス
内閣府ムーンショット型研究開発制度の目標8「2050年までに、激甚化しつつある台風や豪雨を制御し極端風水害の脅威から解放された安全安心な社会を実現する」におけるコア研究プロジェクトとして、「安全で豊かな社会を目指す台風制御研究」が採択され、台風制御の手法が模索されている。2030年には積雲・積乱雲・熱帯的気圧等の小規模な気象を対象とした制御実験、2040年には台風を対象とした気象制御実験を実施することが目指されている。
実証実験段階では、実験領域を「陸に影響を与えない」ような非常に狭い領域に絞り、対象とする台風を「実験後陸に影響を与えないもの」に選別するなど、社会実装段階とは異なるルール形成が必要である。
本研究では、米国のStormfury計画(1962-1983)を分析し、台風制御の実証実験ガバナンスの論点を探求した。Stormfury計画では、太平洋での実証実験実施をめぐり日本をはじめ関係国との間で国際的な議論が展開された。当時太平洋での実証実験当時の議論の論点は何だったのかを明らかにすることで現代の台風制御実証実験ガバナンスの示唆が得られる。
Stormfury計画において、太平洋での実証実験実施をめぐって1970年に実証実験基準案がアメリカから初めて提案され、台風委員会等の議論を通して1974年までに2度改定されていた。基準案は5つの要素、①実験基点をどこに置くか、②実験起点からの最大距離、③シーディング後から陸に接近するまでに確保するべき時間、④陸までの接近距離、⑤実験対象とするハリケーンの最大風速から構成されていた。当該基準案は「実験の影響評価の正確性」に重きを置いていたため、日本代表は実施基準に「陸上の安全性」を保障する要素を組み込むべきである旨を主張した。米国は日本の意向を重んじ、基準を一部変更(要素④シーディング24時間後のハリケーン中心と陸までの接近距離を50海里から270海里に変更(1974)し、陸上になるべく影響を与えない台風を選別することを試みた)したが、日本は当時、台風に関するメカニズム理解が不十分であり、観測と統計データもほとんどなく、台風進路予報が信頼できる精度でなかったために、太平洋での実験に反対の姿勢を崩さなかった。なお、Table 1に実証実験基準の5要素の変遷をまとめた。
現代の台風制御実証実験においても、Stormfury計画と同様、実施前に国際的な合意を得る必要があ理、国際的議論の論点は実証実験実施基準の策定になると考えられる。実験基準は、介入の効果を正確に判定すること(サイエンス的側面)と、陸上の安全を保障すること、市民の理解を得ること、国際的な合意を得ること(社会的側面)を両立する基準策定が求められる。
実証実験段階では、実験領域を「陸に影響を与えない」ような非常に狭い領域に絞り、対象とする台風を「実験後陸に影響を与えないもの」に選別するなど、社会実装段階とは異なるルール形成が必要である。
本研究では、米国のStormfury計画(1962-1983)を分析し、台風制御の実証実験ガバナンスの論点を探求した。Stormfury計画では、太平洋での実証実験実施をめぐり日本をはじめ関係国との間で国際的な議論が展開された。当時太平洋での実証実験当時の議論の論点は何だったのかを明らかにすることで現代の台風制御実証実験ガバナンスの示唆が得られる。
Stormfury計画において、太平洋での実証実験実施をめぐって1970年に実証実験基準案がアメリカから初めて提案され、台風委員会等の議論を通して1974年までに2度改定されていた。基準案は5つの要素、①実験基点をどこに置くか、②実験起点からの最大距離、③シーディング後から陸に接近するまでに確保するべき時間、④陸までの接近距離、⑤実験対象とするハリケーンの最大風速から構成されていた。当該基準案は「実験の影響評価の正確性」に重きを置いていたため、日本代表は実施基準に「陸上の安全性」を保障する要素を組み込むべきである旨を主張した。米国は日本の意向を重んじ、基準を一部変更(要素④シーディング24時間後のハリケーン中心と陸までの接近距離を50海里から270海里に変更(1974)し、陸上になるべく影響を与えない台風を選別することを試みた)したが、日本は当時、台風に関するメカニズム理解が不十分であり、観測と統計データもほとんどなく、台風進路予報が信頼できる精度でなかったために、太平洋での実験に反対の姿勢を崩さなかった。なお、Table 1に実証実験基準の5要素の変遷をまとめた。
現代の台風制御実証実験においても、Stormfury計画と同様、実施前に国際的な合意を得る必要があ理、国際的議論の論点は実証実験実施基準の策定になると考えられる。実験基準は、介入の効果を正確に判定すること(サイエンス的側面)と、陸上の安全を保障すること、市民の理解を得ること、国際的な合意を得ること(社会的側面)を両立する基準策定が求められる。