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[AAS08-07] MAX-DOAS法による大気下層水蒸気濃度の水平不均一性の長期連続観測

キーワード:水蒸気、地上リモートセンシング
2017年から2022年までの6年間、我々はつくばと千葉において多軸差分吸収分光法 (MAX-DOAS; Multi-Axis Differential Optical Absorption Spectroscopy) による大気下層の水蒸気濃度の長期連続観測を実施した。MAX-DOAS法は太陽光を光源とする受動型の地上リモートセンシング技術であり、比較的安価で連続観測を行うことができる。千葉においては、東西南北の4方位にMAX-DOASの観測視線を向けたシステム (4AZ-MAXDOAS) による観測を行った。これらの観測から得られたデータを用いて、大気の不安定性と大気下層水蒸気濃度の水平不均一性の関係を調べた。大気の安定性を示す指標であるL指数 (LI; Lifted Index) を解析したところ、大気が不安定な時に水蒸気の水平分布の不均一性が増大する傾向がみられた。この解析を踏まえて、大気が特に不安定で水蒸気の水平不均一性が顕著に大きかった26事例を特定した。このうち20事例では日本上空に停滞前線が発生していた。さらに、これらの事例の中で最も水蒸気の水平不均一性が大きかった事例について、気象庁の局地解析 (LA; Local Analysis) を実施した結果、実際に南西方向からの暖湿流の流入が起きており、この流入が水蒸気の顕著な水平方向の不均一性をもたらしていることが示唆された。このように、MAX-DOAS法を用いた大気下層水蒸気の水平不均一性の観測は従来の観測とは異なる重要な情報を提供し、ラジオゾンデなどとの相補的な利用を通じて、より精密なデータ同化技術の開発や、集中豪雨の早期警戒システムへの応用、予測の精度向上に貢献することが期待される。