16:30 〜 16:45
[AAS08-10] 気候帯と対流到達高度により異なる雲粒子の特徴

キーワード:雲微物理、AI
固体雲粒子は0℃より上空の雲を構成し, 気温と水蒸気量によって成長する粒子特性が変化することが知られている(Nakaya 1954, 小林1961 ). また雲粒子は降水と深く関係しているため, 気候帯や対流の深さによって粒子の分布や種類に違いが出ると推測できる.そこで本研究の目的は, パラオ共和国, 沖縄県, 北海道の異なる気候帯での雲粒子観測結果から, 気候帯や雲の対流の深浅によって粒子の特性の違いとその原因を明らかにすることである.
雲粒子ゾンデ (Hydrometeor Video sonde : HYVIS , Murakami and Matsuo 1990, Orikasa and Murakami 1997)を用いて北海道陸別町 (RKB), パラオ共和国 (PLW), 沖縄県与那国島 (YNG) で観測を行った. 固相の雲粒子を対象として2011年2月8日から28日に北海道陸別町で9本, 熱帯積乱雲を対象として2013年5月28日から7月1日にパラオ共和国では7本, 梅雨前線を対象として2023年6月7日から7月2日に沖縄県与那国島で10本のHYVISを放球した. 本研究では, RKB 9本,PLW から6本, YNGから1本抽出し, RKB, PLW 観測についてはAIを用いた客観的雲粒子判別システム(吉村他,2022年気象学会春季大会)を観測されたすべてのフレームに対して, YNG観測については, 顕微画像を10枚ごとに使用した. AIにより, 板状粒子, 柱状粒子, 鼓状粒子, 砲弾状粒子, 過冷却水滴, 凍結水滴, それぞれの粒子が重なり合ったaggregate, どれにも分類されない不定形粒子 の8種類に分類され, その結果を比較した. YNGで観測対象となったのは, 対流生の降水システムで, 直前に観測点付近で弱い降水があった事例である. この事例では, 下層5-5.5km付近に70000[1/m3]近い数濃度の過冷却水滴が観測され, 板状粒子が高度10km付近, 不定形粒子は13km付近まで観測された. 鼓状粒子や砲弾状粒子は観測されなかった. この時, 地表から高度3kmまでは非常に湿っていた. PLW観測では, 数濃度が最大300000から2300000[1/m3]と, YNGに比べてかなり多かった. さらに, 粒子の種類も7-8種類観測された. 粒子が観測された最も高い高度は13から15kmとかなり高かった. RKB観測では, 柱状粒子が多く, 接写カメラでもはっきりと映るほどの大きさのものも存在した.
AIを用いた客観的雲粒子判別システムは, 学習データに固体粒子はパラオ共和国での観測結果, 過冷却水滴は沖縄本島の観測結果を用いているが, 目視による検証と比較してもYNGに誤検知は少なかった. 一方, RKB観測では誤検知がYNGの約2倍であった. 特に, 過冷却水滴の粒径がパラオや沖縄本島と比べて小さいため, 重なり合った過冷却水滴の不明瞭な輪郭や白黒の濃淡よって板状粒子と誤判定されることが多かった. 学習データとして取り込んだ粒子とRKB観測の粒子には形状や色などに違いがあると推測できるが, 具体的な違いやその原因については今後詳細に調べる.
雲粒子ゾンデ (Hydrometeor Video sonde : HYVIS , Murakami and Matsuo 1990, Orikasa and Murakami 1997)を用いて北海道陸別町 (RKB), パラオ共和国 (PLW), 沖縄県与那国島 (YNG) で観測を行った. 固相の雲粒子を対象として2011年2月8日から28日に北海道陸別町で9本, 熱帯積乱雲を対象として2013年5月28日から7月1日にパラオ共和国では7本, 梅雨前線を対象として2023年6月7日から7月2日に沖縄県与那国島で10本のHYVISを放球した. 本研究では, RKB 9本,PLW から6本, YNGから1本抽出し, RKB, PLW 観測についてはAIを用いた客観的雲粒子判別システム(吉村他,2022年気象学会春季大会)を観測されたすべてのフレームに対して, YNG観測については, 顕微画像を10枚ごとに使用した. AIにより, 板状粒子, 柱状粒子, 鼓状粒子, 砲弾状粒子, 過冷却水滴, 凍結水滴, それぞれの粒子が重なり合ったaggregate, どれにも分類されない不定形粒子 の8種類に分類され, その結果を比較した. YNGで観測対象となったのは, 対流生の降水システムで, 直前に観測点付近で弱い降水があった事例である. この事例では, 下層5-5.5km付近に70000[1/m3]近い数濃度の過冷却水滴が観測され, 板状粒子が高度10km付近, 不定形粒子は13km付近まで観測された. 鼓状粒子や砲弾状粒子は観測されなかった. この時, 地表から高度3kmまでは非常に湿っていた. PLW観測では, 数濃度が最大300000から2300000[1/m3]と, YNGに比べてかなり多かった. さらに, 粒子の種類も7-8種類観測された. 粒子が観測された最も高い高度は13から15kmとかなり高かった. RKB観測では, 柱状粒子が多く, 接写カメラでもはっきりと映るほどの大きさのものも存在した.
AIを用いた客観的雲粒子判別システムは, 学習データに固体粒子はパラオ共和国での観測結果, 過冷却水滴は沖縄本島の観測結果を用いているが, 目視による検証と比較してもYNGに誤検知は少なかった. 一方, RKB観測では誤検知がYNGの約2倍であった. 特に, 過冷却水滴の粒径がパラオや沖縄本島と比べて小さいため, 重なり合った過冷却水滴の不明瞭な輪郭や白黒の濃淡よって板状粒子と誤判定されることが多かった. 学習データとして取り込んだ粒子とRKB観測の粒子には形状や色などに違いがあると推測できるが, 具体的な違いやその原因については今後詳細に調べる.