日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS08] 気象学一般

2024年5月28日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:那須野 智江(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、久保田 尚之(北海道大学)、Sugimoto Shiori(JAMSTEC Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)、清水 慎吾(国立研究開発法人防災科学技術研究所)

17:15 〜 18:45

[AAS08-P03] 日本の山岳が爆弾低気圧の構造に及ぼす影響

*近藤 亜美1、川村 隆一2、川野 哲也2、望月 崇2 (1.九州大学大学院 理学府 地球惑星科学専攻、2.九州大学大学院 理学研究院 地球惑星科学部門)

キーワード:爆弾低気圧、山岳、構造変化

中緯度傾圧帯で発達する爆弾低気圧は、日本付近において猛烈に発達し短時間で高潮・高波や暴風、大雪などの深刻な気象災害をもたらす。特に近年、北日本や北海道では爆弾低気圧による被害が深刻である。2013年3月に発生した爆弾低気圧では、北海道近傍で低気圧中心近傍が構造変化したことにより、暴風雪をもたらしたと示唆している。この構造変化には、オホーツク海の海氷が影響したと示しているが、本州の山岳が低気圧構造の複雑化に寄与する可能性は大いにある。実際、本州の山岳と同程度の標高をもつ長白山系が、日本海で猛威を振るうJPCZの形成と低気圧の構造に大きな影響をもたらすことが示唆されている。そこで、本研究では、2013年2月に北海道を通過した爆弾低気圧に注目し、標高改変実験から日本の山岳が爆弾低気圧の構造に及ぼす影響を調査し、北海道で増加する暴風雪に与える影響を明らかにすることを目的とする。
本研究では、領域気象モデルWRF version 4.4を用いてシミュレーションを行った。水平解像度27km(D1),9km(D2),3km(D3)の3つのドメインを3-wayネスティングし、モデルの上端を50 hPa(鉛直50層)とした。雲微物理過程および境界層過程にはWRF Double Moment 7-class スキームとYonsei University スキームをそれぞれ用いた。積雲パラメタリゼーションとしてD1とD2にKain-Fritsch スキームを導入した。NCEP-FNLデータとMANALデータから初期値・境界値を作成し、計算期間は2013年2月6日18UTCから2013年2月10日00UTCとした(CTLラン)。また、日本列島の地形が低気圧の構造に及ぼす影響を調べるため、北緯32.7度~41.5度、東経129.7度~142.0度を平坦化する(以後MODラン)地形改変実験を同期間で実施した。
結果として、標高改変実験から、低気圧が急発達する過程で本州の山岳による障壁効果によって、低気圧の構造変化が広範囲に及んだ。2/7 12UTCにおける南北風と水蒸気混合比を比較し、CTLランに比べ、MODランは低気圧中心に向かう北向きの水蒸気輸送が弱化していると確認できた。また、水蒸気輸送に関連して、温暖コンベアベルト(WCB)に伴う降水量も減少していることが分かった。また、同時刻における950hPaでの水平風速と海面更正気圧を比較し、MODランでは、CTLランで見られた三陸沖でのメソ低気圧は見られなかった。さらに、発達最盛期には低気圧中心近傍での軸対称構造がCTLより明瞭であり、風速分布にも差が生じていた。