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[AAS08-P05] 複雑地形環境におけるGNSS視線方向湿潤遅延量の同化技術開発と雨量予測精度検証
キーワード:視線方向水蒸気遅延量のデータ同化、複雑地形におけるデータ選択
先行研究によりGNSS等の視線方向遅延量を気象モデルに同化することで、可降水量の非一様性や水平傾度を予測の初期値に導入することで、関東地方の豪雨事例において予測精度が改善することが報告されている(Shoji et al., 2014, JMSJ)。こうした衛星を利用した水蒸気の同化技術は、線状降水帯等の豪雨予測の精度改善において重要であるが、複雑な地形環境でも利用可能となるような開発が喫緊の課題である。視線方向遅延量を計算する際に、九州地方などの複雑な地形状況においては、1)地上基地局と衛星間の観測PATHにおいて地形による遮蔽を考慮した上で、利用可能な衛星データを選別することと、2)数値モデルの標高と実際の標高の差が、標高が高い地上基地局で顕著にあり、標高の違いを考慮したデータ同化の開発が必要となる。本研究では、2021年8月12日に九州地方で発生した線状降水帯を対象に、上記の2点に対応した視線方向湿潤遅延量を求め、データ同化実験を行った。予測モデルは雲解像数値モデルCReSSを用いて水平解像度1kmで実験を行った。データ同化には防災科研が開発したCReSS-3DVARを用いて視線方向湿潤遅延量を初期値に同化した。1時間先までの予測を12日の10JSTから14JSTまでの期間で1時間毎に行った(4個の予報)。遅延量の算出において、次世代高精度衛星測位(Next CLAS: Next Centimeter Level Augmentation Service)と超速報歴を用いた。
地上基地局から衛星までの観測パスの経路を追跡し、CReSSの3次元格子グリッドの交点を求め、モデル標高よりも低い交点がある場合、その視線方向のデータは棄却した。九州地方の148の基地局データを活用した。実際の標高とCReSSの標高差が50m以上になるか、もしくはCReSSの地形よりも実際の標高が低い場合において観測データを棄却すると、83の基地局のデータが利用できなくなる。CReSSの地形が低い場合には、より上空のCReSSの格子情報を使って同化を行い、また、CReSSの地形が高い場合には、気圧の測高式による補正と気温の外挿補正、さらにSaastamoinenモデルによる重力加速度(Saastamoinen, 1973)を用いて同化を行うことで、棄却した83地点のうち、71地点が利用可能となる。
データ同化実験は1)データ同化を行わない標準実験(CNTL)、2)天頂角15度以内の衛星のみを活用した天頂湿潤遅延量を同化した実験(ZWD: zenith wet delay)、3)天頂角が15度以上の視線方向の湿潤遅延量を同化した実験(SWD: slant wet delay)の3種類で予測精度を比較した。ZWD実験では、136個のPATHしか利用できないが、SWDでは1200個のPATHが利用可能となり、約10倍の観測が利用可能となった。予測精度の検証方法として、FSS(Fractional Skill Score)を指標として用いた。位置ズレ許容の空間スケールとして、11kmとし、評価する降雨閾値としては20mm/hrの強雨を評価対象とした。検証として用いる観測は、国交省XRAINが提供する1分毎の降雨強度を活用した。1時間後の予測精度は4つの予報実験を平均して、CNTL実験が0.23程度、ZWD実験が0.31程度、SWD実験が0.39程度となり、水蒸気同化により予測が改善することと、視線方向を活用することで精度が上がることが示された。
地上基地局から衛星までの観測パスの経路を追跡し、CReSSの3次元格子グリッドの交点を求め、モデル標高よりも低い交点がある場合、その視線方向のデータは棄却した。九州地方の148の基地局データを活用した。実際の標高とCReSSの標高差が50m以上になるか、もしくはCReSSの地形よりも実際の標高が低い場合において観測データを棄却すると、83の基地局のデータが利用できなくなる。CReSSの地形が低い場合には、より上空のCReSSの格子情報を使って同化を行い、また、CReSSの地形が高い場合には、気圧の測高式による補正と気温の外挿補正、さらにSaastamoinenモデルによる重力加速度(Saastamoinen, 1973)を用いて同化を行うことで、棄却した83地点のうち、71地点が利用可能となる。
データ同化実験は1)データ同化を行わない標準実験(CNTL)、2)天頂角15度以内の衛星のみを活用した天頂湿潤遅延量を同化した実験(ZWD: zenith wet delay)、3)天頂角が15度以上の視線方向の湿潤遅延量を同化した実験(SWD: slant wet delay)の3種類で予測精度を比較した。ZWD実験では、136個のPATHしか利用できないが、SWDでは1200個のPATHが利用可能となり、約10倍の観測が利用可能となった。予測精度の検証方法として、FSS(Fractional Skill Score)を指標として用いた。位置ズレ許容の空間スケールとして、11kmとし、評価する降雨閾値としては20mm/hrの強雨を評価対象とした。検証として用いる観測は、国交省XRAINが提供する1分毎の降雨強度を活用した。1時間後の予測精度は4つの予報実験を平均して、CNTL実験が0.23程度、ZWD実験が0.31程度、SWD実験が0.39程度となり、水蒸気同化により予測が改善することと、視線方向を活用することで精度が上がることが示された。