日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS09] 大気化学

2024年5月27日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、石戸谷 重之(産業技術総合研究所)、江波 進一(国立大学法人筑波大学)

17:15 〜 18:45

[AAS09-P01] CO2濃度多点観測網の構築に向けたローコストセンサによる簡易観測手法の検討

*藤田 遼1坪井 一寛1石島 健太郎1、稲飯 洋一2石戸谷 重之3、前田 高尚3亀崎 和輝3村山 昌平3森本 真司4、高辻 慎也5、福田 裕大5、吉田 雅司5、潮 延泰5、藤原 昴5、山田 健太郎5、石原 昂典5、松岡 優輝5 (1.気象庁気象研究所、2.気象庁札幌管区気象台、3.産業技術総合研究所、4.東北大学大学院理学研究科、5.気象庁)

キーワード:CO2、温室効果ガス、ローコストセンサ、G3W

パリ協定の実施状況を各国の統計値とは独立して監視・検証するためには、時空間的に密な大気観測データが不可欠である。WMOは2023年の第19回世界気象会議にて新イニシアティブ「全球温室効果ガス監視(G3W)」のコンセプト案を承認した。G3Wは従来の研究ベースの観測体制から、よりoperationalな体制強化を世界全体で取り組む方向性を提案する。しかしながら、高精度のGHG観測に要する金銭的・人的コストは未だに高く、G3Wの実現に向けた大きな課題となっている。
GHG観測網を強化する重要性・喫緊性に対するコスト面の課題を踏まえて、筆者らは1台5万円程度の小型かつ低コストのNDIR式CO2センサを複数台購入し、新たな国内多点観測網の構築に向けた試験・検討を開始した。本発表ではセンサの性能評価に加え、つくば、札幌、仙台、綾里の4点で実施した試験観測結果を報告する。
つくば実験室内の外気導入型の空調直下にて複数台のCO2センサによる並行観測を2年間実施した。どのセンサも周辺の植生活動や大気境界層高度の変化に伴う明瞭な日内変動、大気の総観規模変動に伴う数日スケールの変動を観測した。同時に測定した高精度レーザー分光型測定器とも概ね変動が一致することを確認した。これより比較的短い時間スケールの変動検出におけるセンサの性能の高さが明らかとなった。一方で長期間のドリフトには個体差が大きいことがわかり、定期的なセンサ較正の必要性も明らかとなった。札幌と仙台では平日と休日に異なるCO2濃度の日内変動を観測し、地方都市における人為CO2排出量の週内変動の影響を示唆した。特に札幌では晴れと曇りの日のCO2濃度の日内変動の違いもわかり、風向との関係から近傍の山林における光合成影響の可能性を示唆した。これらの結果は地方都市において新たなCO2観測網の構築する意義を期待させる。
発表当日はセンサの定期較正、環境場(湿度、気温、気圧)の影響補正の検討、大気輸送モデルの活用といった現在の中心課題と今後の展望についても合わせて議論したい。将来的には多点CO2観測網と数値モデルの活用により、各自治体の脱炭素策の効果検証材料の提供や地域住民の意識啓発への貢献を目指す。