日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS09] 大気化学

2024年5月27日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、石戸谷 重之(産業技術総合研究所)、江波 進一(国立大学法人筑波大学)

17:15 〜 18:45

[AAS09-P22] つくばの地上設置FTIRによるHFC-134aの観測と解析

*中島 英彰1村田 功2森野 勇1、Toon Geoff C.3 (1.国立研究開発法人 国立環境研究所、2.東北大学大学院 環境科学研究科、3.NASA Jet Propultion Laboratory)

キーワード:オゾン破壊、FTIR、フロン、HFC、SFIT4

1980年代の南極オゾンホールの発見以降の研究によって、人為起源のCFC(クロロフルオロカーボン)がオゾン層破壊の原因物質であることが特定された。そのため、1985年3月に「オゾン層保護のためのウィーン条約」が、1987年9月に「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」が採択され、CFCの放出は徐々に規制され、代替物質であるHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)や、さらなる代替物質であるHFC(ハイドロフルオロカーボン)へと冷媒が切り替わってきた。2010年までにCFCはすべての国で生産と消費が禁止され、2020年までに先進国ではHCFCの生産と消費も禁止された。現在先進国では冷媒や発泡剤としてHFCが中心的に使用されており、その中でもHFC-134a(CH2FCF3)が最大の生産量となっている。HFC-134aは、大気中の寿命が14年、100年地球温暖化ポテンシャル(GWP100)が1470の冷媒・発泡剤である。本研究では、つくばに設置してある地上FTIRによる太陽を光源とした赤外分光データから、世界に先駆けてHFC-134aの大気中濃度の測定を試みた結果について報告する。

今回の解析では、FTIRコミュニティーにより継続的に共同で開発されている共通の解析ツールであるSFIT4 Ver. 1.0.18を利用した。HFC-134aの解析にはMCTディテクターの観測領域である1104-1106 cm-1と、1182-1187 cm-1の2つのMicro-Window(MW)領域をfitting領域として利用した。HFC-134aの吸収線には、G. C. Toonによる疑似吸収線データを利用した。その他の干渉気体のラインパラメータには、HITRAN 2000とATM 2000によるline parameterを利用した。HFC-134aの初期プロファイルとしては、ACE-FTS衛星によるL2 v4.0の2018年の高度分布(Harrison et al., 2021)を利用した。つくばのIFS-125HR FTIRによるMCT領域での観測がある2014年から最近の2023年までのデータの解析を行った。

図1に、解析で得られたHFC-134aの気柱全量日平均値の経年変化を示す。HFC-134aは春に極大、秋~冬にかけて極小となる季節変化を示すが、これは圏界面高度の変化を反映しているものと考えられる。Boot strap resamplingによる年変化量の増加率は、Tikhonov方式による解法だと+5.9 %/y、OEMによる解法だと+5.3 %/yとなった。これは、スイスJungfraujochにおけるFTIRによる解析結果(+4.65 %/y)や、同場所のTOMCAT CTM(+4.42 %/y)、ACE-FTSによる増加率(+4.81 %/y)と整合的か、若干大きめの結果となった。将来的には、昭和基地や陸別におけるFTIRデータも解析し、場所による違いや南北半球の違いについても考察していきたいと考えている。