日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS10] 成層圏・対流圏 (大気圏) 過程とその気候への影響

2024年5月28日(火) 15:30 〜 16:30 104 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:江口 菜穂(九州大学 応用力学研究所)、野口 峻佑(九州大学 理学研究院 地球惑星科学部門)、原田 やよい(気象研究所)、田口 正和(愛知教育大学)、座長:野口 峻佑(九州大学 理学研究院 地球惑星科学部門)、原田 やよい(気象研究所)



16:00 〜 16:15

[AAS10-09] 大気角運動量の長周期変動とそのメカニズムに関する研究

*佐々木 謙介1佐藤 薫1小新 大1 (1.東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)

キーワード:大気角運動量、波動

大気角運動量(AAM)の変動は、予測可能性を持つため、気象予報や気候予測の視点から重要な現象である。また、AAMの変動は地球の自転速度や一日の長さにもかかわるため、GNSSなど、測地技術にも影響が大きい。AAM変動は数十日から数年の広い周期帯にわたる。特に、長い周期においてはENSOとの関連が指摘されている。また、AAM変動の位相は赤道域から中高緯度に伝播することが多い。この伝播機構については、先行研究によりいくつか提案されている。共通するのは運動量フラックスの役割である。しかし、統一的な見解には至っていない。特に、運動量フラックスをもたらす波の種類やその生成については十分に明らかではない。本研究の目的は、このAAM変動にかかわる大気波動を特定し、AAM偏差の発生と、極向き伝播の力学的メカニズムを解明することである。
解析には、特徴の異なる2つの大気再解析データ(MERRA-2、JRA-55)に加え、d4PDFの過去実験の結果も用いた。d4PDFでは100メンバーのデータが公開されており、そのアンサンブル平均により、統計的に有意な変動の特徴を捉えることができる。解析期間は、d4PDFでは1951年1月から2011年12月までである。鉛直方向に100 hPaから750 hPaの範囲で積分したAAMの偏差(各カレンダー日に対する気候値からの差)について、先行研究の結果との整合性を確認した。同様の計算により、EPフラックス発散(EPFD)の偏差も計算し、特徴を調べた。
まず、先行研究で指摘されている極向きに伝播するAAMの変動を確認した。また、対応するようにEPFDの極向き伝播も確認できた。特に、極向きに位相が伝播する際に、緯度20 °から30 °付近で、AAMとEPFDのどちらも値が大きくなることが分かった。さらに、ENSO指数との相互相関を調べてみると、緯度30°付近において、AAMとEPFDのどちらについても有意な正相関があることが分かった。講演では、EPFDについて、全球をインド洋、太平洋、大西洋をそれぞれ含む3つの領域に分割し、領域別に解析を行った結果も示す。