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[ACC27-P03] グリーンランド南東ドームアイスコア中の気泡が近赤外反射率と誘電異方性に与える影響

アイスコアの物理的性質を明らかにする方法として、近赤外反射率(Near-Infrared Reflectance; 以降NIR)や誘電率がある。雪氷のNIRや誘電異方性(アイスコアにおいて2方向の誘電率の差)は、積雪粒子や空隙・氷中の気泡の大きさや形状、氷結晶のc軸の集中度の程度を明らかにできるため、広く使われている方法である(1,2)。このような雪氷の物理量は、積雪の積雪表面での変態や圧密の程度などによって値が変わる (3)。氷床深部で積雪が氷化した後にこれらの物理量がどのように保存されているのかについては、南極内陸など低涵養量地域で研究されており、気泡中のO2/N2比が夏季の積雪変態の指標になりうるメカニズムなどが提唱されている(4,5)。しかし、高涵養量地域での研究はあまり知られていない。グリーンランド南東部の高涵養量域(約1 m w.e. a-1)で掘削された2本のアイスコアは、1960–2014年(長さ約60 m; 以降SE-Dome Iコア)と1799–2020年(約250 m; 以降SE-Dome IIコア)の涵養量や気温を季節分解能で復元可能なアイスコアである(6)。これらのアイスコアは、ともに氷化後の平均年層厚が約1 mであることから、氷化後も月涵養厚よりも薄い層を解析できる。本研究では、SE-Dome I, IIコアのNIRと誘電異方性を測定し、mmスケールの気泡がNIRや誘電異方性に与える影響を調査することで、氷床深部の気泡に表面付近で生じた変態の程度がどのように保存されているのかについて考察した。
SE-Dome I, IIコアのNIRと誘電異方性は季節変動が検出された。SE-Dome IIコアにおいて、NIRは春夏層で低下し、その低下量は北極域が温暖(7)な1990年以降(深度0–50 m)と1970–1950年(深度76–100 m)で大きい。誘電異方性は、1990年以降で春層より冬層の方が小さく、1950–1940年で季節による値の変化はみられなかった。1950年はすでに氷化している深度であり、春夏にみられるNIRの低下は気泡が関与していると考えられる。1950年に相当する層内の気泡の顕微鏡観察から、春夏にNIRが低下する層はその前後の層より気泡の形状が丸く小さいことが分かった。フィルンの浅いほうで形成された古い気泡のほうが圧密をより受けるため、より収縮することが知られている(8)。すなわち、丸く小さい気泡は、表面付近で雪の変態の程度が大きく、フィルンの浅いほうで形成された古くから存在していると考えられる。高涵養域のSE-Domeアイスコアにおいて、氷化後のNIR値は積雪表面での変態の程度の指標になることが示唆された。発表当日は、これらの層の誘電異方性の変動も交えて報告する。
SE-Dome I, IIコアのNIRと誘電異方性は季節変動が検出された。SE-Dome IIコアにおいて、NIRは春夏層で低下し、その低下量は北極域が温暖(7)な1990年以降(深度0–50 m)と1970–1950年(深度76–100 m)で大きい。誘電異方性は、1990年以降で春層より冬層の方が小さく、1950–1940年で季節による値の変化はみられなかった。1950年はすでに氷化している深度であり、春夏にみられるNIRの低下は気泡が関与していると考えられる。1950年に相当する層内の気泡の顕微鏡観察から、春夏にNIRが低下する層はその前後の層より気泡の形状が丸く小さいことが分かった。フィルンの浅いほうで形成された古い気泡のほうが圧密をより受けるため、より収縮することが知られている(8)。すなわち、丸く小さい気泡は、表面付近で雪の変態の程度が大きく、フィルンの浅いほうで形成された古くから存在していると考えられる。高涵養域のSE-Domeアイスコアにおいて、氷化後のNIR値は積雪表面での変態の程度の指標になることが示唆された。発表当日は、これらの層の誘電異方性の変動も交えて報告する。