日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC27] アイスコアと古環境モデリング

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:齋藤 冬樹(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、植村 立(名古屋大学 環境学研究科)、竹内 望(千葉大学)、川村 賢二(情報・システム研究機構 国立極地研究所)

17:15 〜 18:45

[ACC27-P07] 南極アイスコア中の古代真菌DNA解析のための試料濃縮方法の検討

*中澤 文男1,2 (1.国立極地研究所、2.総合研究大学院大学)

キーワード:微生物、古代DNA、集団遺伝学、進化

過去の地球環境変動に伴う生物の数や種組成の変化を解明することは、今後懸念される急激な温暖化が生物多様性に与える影響や、生物保全への対応を探るための基礎的な情報として重要である。過去の生物に関する情報は、堆積物中に保存される化石から得られるが、有機物であるDNAは分解されているため、遺伝情報まで得ることはできない。南極氷床の氷には、古代に南極に飛来した真菌や細菌などの微生物が、過去数十万年間にわたり冷凍保存されている。
本研究の最終目的は、ドームふじ基地で掘削されたアイスコアから古代真菌細胞を抽出し、DNA分析する手法を開発することにある。しかし試料中の細胞数濃度は低いため、アイスコア中の真菌細胞を迅速かつ隈なく採取する必要がある。そこで本研究では、試料から細胞を抽出する方法を検討した。試料水に含まれる細胞は、誘電泳動法によって水試料中の細胞を捕集する装置(ELESTA, AFIテクノロジー社製)をもちいて分離した。但し、本装置の試料導入量は数mlに限られるため、試料を予め濃縮する必要がある。また、DNA分析のために、最終的には数μLまで濃縮が必要である。本研究ではロシア・シベリアの氷河から採取した雪試料を使用した。
融解水試料25mLを50mL遠沈管に入れ、遠心分離後(8,000 g、20分)、上澄み液20mLを捨てることにより真菌細胞を集めた。そして5mLの残試料をELESTAに導入した。細胞は、スライドグラスの形をしたELESTAチップのマイクロ流路内に捕集され、顕微鏡で観察できる。真菌が捕集されていた場合、ELESTAチップから140µLの水と共に細胞を回収し、0.2µLのPCRチューブへ移し替えた。そしてドライブロックヒーター上で5µLまで濃縮した。以上の操作で試料の濃縮を簡単に行うことができ、DNA分析の準備が完了した。但し、細胞の顕微鏡観察では、細胞と不純物の見分けが難しい場合があった。ELESTAへの導入の前に細胞を染色する必要があると考えている。