日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG36] 衛星による地球環境観測

2024年5月27日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:沖 理子(宇宙航空研究開発機構)、本多 嘉明(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、松永 恒雄(国立環境研究所地球環境研究センター/衛星観測センター)、高橋 暢宏(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)

17:15 〜 18:45

[ACG36-P09] 北海道胆振道有林におけるCO2高度分布日変化(Kプロ/高感度小型多波長赤外線センサ技術の開発およびフィールド実証)

*中川 広務1、井上 誠2、渡辺 一生3、武田 知己4、寺田 怜央5、白旗 麻衣5、武山 芸英5、笠原 寛史6、村田 悠7、三浦 拓実7佐川 英夫8栗原 純一9佐藤 隆雄9、北村 光10村田 功13、永吉 武志2、長井 正彦11、橋詰 卓実6、志村 幸美6、福代 孝良12 (1.東北大学 大学院理学研究科 地球物理学専攻太陽惑星空間物理学講座 惑星大気物理学分野、2.秋田県立大学、3.合同会社ソラビジョン、4.宇宙システム開発利用推進機構、5.株式会社ジェネシア、6.株式会社三菱UFJ銀行、7.株式会社アイネット、8.京都産業大学、9.北海道情報大学、10.室蘭工業大学、11.山口大学、12.株式会社アークエッジ・スペース、13.東北大学 大学院 環境科学研究科)

キーワード:温室効果ガス、赤外線センサ、分光、ドローン、森林

「経済安全保障重要技術育成プログラム」の本研究開発構想では、研究開発ビジョン(第一次)に定められたセンシング能力の抜本的強化のため、個別研究型として軽量・小型で高感度な多波長赤外線センサに必須の技術である赤外線検出器、分光デバイスと光学系を研究開発し、ドローン及び小型衛星に搭載してシステム実証を行うことを目的としている。わが国が社会経済活動、安全保障活動を世界的に優位に進めるためには、他国に依らず自律的に多波長赤外線センサを製造し活用する能力を持つことが重要である。安全保障分野に加え、鉱物資源探査、農林水産業の効率化、そして環境に過度な負荷を与えない持続可能な社会経済活動を行う分野と連携して、宇宙監視・リモートセンシング技術をもってして様々な用途・市場を新たに開拓することができれば、小型衛星事業者、ドローン事業者等の国際競争力向上にもつながる。  本構想の実施項目は、「赤外線検出器、分光デバイス及び光学系、それらを含めた多波長赤外線センサの開発」と「多波長センサの実証」を掲げている。1-2.5μm(SWIR)と2.5-5μm(MWIR)域においてそれぞれをカバーする赤外線検出器を浜松ホトニクス・住友電工が異なる構成で開発する計画であり、2024年度末の中間審査までに64x64画素、研究実施期間最終段階においては1000x1000画素、2000x2000画素のへの発展に向けて進めている。分光デバイスは、グレーティング等の従来型での効率50%以下に比べ85-90%以上の高感度を達成するリニア可変フィルタ、高速波長掃引型のスナップショット2次元撮像用液晶ファブリペロ、2-2.5μmで透過幅10nmを達成する液晶可変フィルタの分光デバイス開発を進めている。光学系は、高空間分解能光学系(空間分解能:1画素あたり5m@衛星搭載、5cm@ドローン搭載を100kg級衛星・ドローン搭載用に)、広視野光学系(1フレーム50kmx50km以上@衛星搭載、500mx500m@ドローン搭載を6-12U衛星・ドローン搭載用に)を開発することを企図する。これらと並行して開発するドローンや小型衛星に搭載して実際に多波長赤外画像を取得し、衛星用校正サイトやISS搭載ハイパースペクトルセンサHISUIのデータをリファレンスとすることで、大気放射伝達モデルを構築する。本構想では、屋外計測・センサ有用性検証という狭義のフィールド実証に留まらず、経済マーケットで有用性を発揮する広義のフィールド実証を目指すため、産学官連携による社会実装体制を敷いている点に独自性がある。本発表では本構想のフレームワークの中で推進されている、三菱UFJ銀行とジェネシアがリードする森林環境計測プロジェクトについて紹介する。特にその初動となった、2023年度北海道有林上空におけるドローンCO2計測の初期結果について報告する。
本発表のドローンCO2計測の目的は、北海道有林胆振管理区・冬季広葉樹林におけるローカルスケールでのCO2濃度の鉛直分布とその日変化の特徴を明らかにすることである。これは、本事業期間内に実施予定のCO2広域撮像監視のためのCO2導出手法検証用の教師データの取得も兼ねている。ドローンDJI Matrice600にCO2アナライザーLI-840AならびにCO2センサモジュールSenseair K30を搭載して2023年11月30-31日に計測した。ドローンは、航空機と比較して高度は限られるが、低コストで手軽に扱えるため、高頻度でさまざまな地点を観測できる。また、観測タワーと比較して鉛直・水平方向に広域連続して取得可能である利点がある。今回は、CO2濃度鉛直分布を異なる地方時(10月30日に11:07, 14:07; 10月31日に8:40, 9:38, 13:14)でCO2濃度鉛直分布を5, 10, 50, 100, 148mで取得した。また、数mスケールでのCO2濃度不均一分布を明らかにするため、170x210mの水平領域を地表面から約50m高度を保持したまま地方時11:03-11:48の45分間で取得した。観測されたCO2濃度鉛直分布は、全ての地方時において地表面付近から148m高度まで高度が上昇するに従って、CO2濃度が数ppmから5 ppm程度増加する傾向が見られた。鉛直分布に加えて、CO2鉛直分布が早朝から午後にかけて日変動する様子が捉えられ、最大で4 ppmの変化があった。また、CO2濃度の日々変動は最大で5 ppm程度であった。さらに、170x210mの水平領域において、CO2濃度の相対的不均一性が10-20ppm程度(要校正値)みられた。CO2濃度の時空間変動は、気象条件に大きく依存するため、生物呼吸や植物光合成によるCO2変化への寄与を明らかにするためには、風速・気温・湿度・地温・植生等の環境同時計測が必要不可欠である。