日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG36] 衛星による地球環境観測

2024年5月27日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:沖 理子(宇宙航空研究開発機構)、本多 嘉明(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、松永 恒雄(国立環境研究所地球環境研究センター/衛星観測センター)、高橋 暢宏(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)

17:15 〜 18:45

[ACG36-P19] 高分解能雲移動ベクトルとForTraCCを用いたGSMaP降水トラッキング手法の改良

*広瀬 民志1、由良 建人1山本 宗尚2久保田 拓志2牛尾 知雄1 (1.大阪大学 大学院工学研究科、2.国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構)

キーワード:全球衛星降水観測、降水トラッキング手法、高分解能化

全球降水衛星マップ(GSMaP)は,複数の極軌道衛星に搭載されたマイクロ波放射計(PMW)による降水観測網の隙間を捕間するため,静止気象衛星(GEO)の高頻度観測を用いている.この補間手法ではGEOの連続観測を用いて雲の移動を追跡し,PMWで観測された降水雲の移動先を計算している.雲移動ベクトルは2.5°格子ごとに1時間毎で計算しているが,近年ではGEOの時・空間分解能の向上により 1.0°格子ごとに10分毎で計算することが可能になった.この高分解能雲移動ベクトルを用いてGSMaPの降水トラッキングアルゴリズムを改良する実験を行った.
中高緯度域における実験では,東西方向の降水トラッキング精度が向上するという結果が得られた.しかしながら強い鉛直シアー下では,中下層の降水に対するトラッキング精度が十分に改善されなかった.これは雲移動ベクトルが被覆率の高い上層雲の移動方向に強く影響されることが原因と考えられる.高分解能化によって鉛直シアー下における降水トラッキング精度はある程度改善したが,熱帯域のような恒常的に強い鉛直シアーの下では依然として中下層の降水の移動先を誤認する場合が発生していた.そこで本研究では異なる降水トラッキング手法である(ForTraCC; Vila et al. 2008)を導入することを試みた.ForTraCCは降水強度を閾値として降水クラスターを検出し,各クラスターを個別に追跡する手法である.熱帯域の強い鉛直シアー下でおこなった実験では,雲移動ベクトルが中下層の降水の移動方向を誤認している事例に対して,ForTraCCは降水クラスターを適切にトラッキングできていることが確かめられた.高分解能雲移動ベクトルとForTraCCを組み合わせることで,GSMaPの降水トラッキング精度をさらに向上させることが期待できる.
本研究は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の助成を受け,共同研究「高分解能GSMaPアルゴリズムの研究開発」として行われているものである.