日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG38] 沿岸海洋生態系-2.サンゴ礁・藻場・マングローブ

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:梅澤 有(東京農工大学)、樋口 富彦(東京大学大気海洋研究所)、中村 隆志(東京工業大学 環境・社会理工学院)、渡辺 謙太(港湾空港技術研究所)

17:15 〜 18:45

[ACG38-P01] 未利用海産植物資源の昆虫用飼料への利用可能性

*佐野 浩幸1、鈴木 丈詞2、村田 光陽2宮田 達1梅澤 有1 (1.東京農工大学 農学研究院 · 物質循環環境科学部門、2.東京農工大学 農学研究院 · 生物システム科学部門)

コオロギは従来の家畜に代わる新たなタンパク源として盛んに研究されている。しかし現在商業的なコオロギの生産には養鶏飼料が用いられており、資源集約的で人間の食料資源と競合することから持続可能性の面で課題がある。そのため他の用途と競合しない未利用資源を飼料として用いることが重要であり、陸域では作物の茎葉やビール酵母などの農業・産業残渣を用いた給餌試験が盛んにおこなわれている。一方で、藻場から脱離した海草の地上部や富栄養環境下で異常増殖した大型海藻は、放置されると栄養塩や炭素の放出源となり沿岸の景観にも悪影響を及ぼすため、沿岸の自治体により除去と焼却処分が行われる未利用資源である。漂着した草体の回収・処理には多額の費用がかかるため、経済面での持続可能性を高めるために回収した草体の収益性のある活用方法の提案が必要である。以上のことから本研究では、海草・海藻をコオロギに給餌した際の養鶏飼料と比較した成長成績から、未利用海産資源である海草や海藻をコオロギの飼料として利用可能かを評価することを目的とした。
 海草としてアマモ(Zostera marina)、海藻としてアオサ(Ulva spp.)、コオロギとしてフタホシコオロギ(Gryllus bimaculatus)を使用した。養鶏飼料とアマモ・アオサ単一の飼料、およびアマモ・アオサの養鶏飼料との25%・50%混合飼料を作成し、各飼料で実験区を作成して生後24時間以内のフタホシコオロギ幼体50匹を飼育した。7日ごとに幼体の生存率、体重を測定し、また成虫が発生した場合は都度取り除いて羽化した日数、成虫体重を記録した。最終的な成長成績は、得られた各成虫の体重を羽化日数で割り、それを実験区で得られたすべての成虫分合計して求められるYPD(Yield Per Day)値を用いて評価した。また、給餌試験で得られた結果の要因考察のため、給餌した養鶏飼料、アオサ、およびアマモの栄養組成(水分・粗タンパク質・粗脂肪・粗繊維・粗灰分)の分析を行った。単一飼料どうしで比較を行うと、アマモ、アオサはどちらも養鶏飼料より著しく低い生存率・YPD値を示した。次に混合飼料についてみると、アオサ50%飼料区では養鶏飼料区と比較し生存率、YPDが有意に小さく、他の混合飼料区では養鶏飼料との有意差は見られなかった。餌試料におけるタンパク質量、繊維質、灰分含量の違いにより生存率や成長成績に違いが生じた可能性がある。