日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG40] 海洋と大気の波動・渦・循環の力学

2024年5月29日(水) 13:45 〜 15:00 106 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:大貫 陽平(九州大学 応用力学研究所)、久木 幸治(琉球大学)、杉本 憲彦(慶應義塾大学 法学部 日吉物理学教室)、松田 拓朗(北海道大学地球環境科学研究院)、座長:大貫 陽平(九州大学 応用力学研究所)、久木 幸治(琉球大学)、杉本 憲彦(慶應義塾大学 法学部 日吉物理学教室)、松田 拓朗(北海道大学地球環境科学研究院)

14:45 〜 15:00

[ACG40-05] 地形に沿って伝播するsuperinertialな内部潮汐波の発生:地形の影響を受けた内部ケルビン波の形成における「地形性モード」の役割

*田中 祐希1 (1.福井県立大学 海洋生物資源学部)

キーワード:外部–内部モード分解、エネルギー変換率、海底地形、鉛直乱流混合

内部潮汐は海洋内部における鉛直乱流混合の主要なエネルギー源である。よく知られているように、慣性周波数以下の周波数を持つ(subinertialな)内部潮汐は、深海域では傾圧的な鉛直構造を持つのに対し、浅海域ではより順圧的な鉛直構造を持つため、従来の順圧­–傾圧モード分解では正確に外部潮汐から分離することができない。この問題を解決するために、Tanaka (2023)は順圧的な鉛直構造を持つ内部モードを表す「地形性モード」の概念を導入し、subinertialな内部潮汐の発生率を定量化できる新しいエネルギーダイアグラムを提案した。本研究では、この新しいエネルギーダイアグラムを慣性周波数以上の周波数を持つ(superinertialな)内部潮汐へと適用し、その有効性を検証する。この目的のために、様々な慣性周波数において、海岸線にバンプのある大陸斜面上を一様な外部潮汐が通過する理想化された数値実験を行う。計算の結果、地形性モードと傾圧モードの両方がバンプ上で励起され、海底地形に沿って下流へ伝播すること、さらに、地形性モードと傾圧モードは結合することで、地形の影響を受けた内部ケルビン波を形成することが示された。その鉛直断面構造は、superinertialな周波数に対する2次元の固有値問題を解くことで得られる内部ケルビン波のモード構造と非常に類似していた。外部モードから地形性モードへのエネルギー変換率は、潮汐周波数がわずかにsuperinertialな場合には外部モードから傾圧モードへのエネルギー変換率の約半分に達し、潮汐周波数が大きくsuperinertialな場合であっても無視できない寄与を維持していた。本研究の結果は、Tanaka (2023)の新しいエネルギーダイアグラムが臨界緯度を超えてシームレスに適用可能であり、内部潮汐の発生率の全球分布が従来よりもかなり大きくなる可能性を示している。