13:45 〜 14:00
[ACG42-11] カナダ海盆に流入する低塩分な太平洋水の栄養塩濃度とその季節変動
キーワード:低塩分な太平洋水、栄養塩、季節変動
カナダ海盆の一次生産には、有光層に流れ込む低塩分な太平洋水(S<32)による窒素栄養塩の供給が鍵だと考えられる。しかし、海氷の存在により船舶観測が夏に制限されるため、夏以外の栄養塩濃度が明らかになっていない。そこで本研究では、太平洋水のカナダ海盆への流入口であるバローキャニオンの観測点(BCE)において、硝酸塩センサーと、定期的に自動採水作業を行う時系列採水器(RAS)を係留系に取り付けることで、低塩分な太平洋水に含まれる窒素栄養塩濃度の季節変動とその供給フラックスを調べた。
係留系による観測は、水深108 m点の深度42 mにおいて、2021年9月12日から約1年後の2022年8月28日まで行った。観測項目は、水温・塩分・クロロフィルa蛍光・流向流速(センサー、1時間毎)、硝酸塩(センサー、3時間毎)、時系列採水器で採取した試料の各種栄養塩濃度(8日毎)である。採水試料はあらかじめ塩化水銀を加えたサンプルバッグ中で保存し、係留系回収後に船上にて連続流液方式で各種栄養塩の分析を行った。センサーによる測定データは、潮汐の影響を取り除くため、25時間の移動平均を計算し利用した。また、北極データアーカイブ(ADS)から観測地点の海氷密接度の情報を得た。
本観測により、年間を通して塩分32以下の低塩分な太平洋水を捉えることに成功した。その窒素栄養塩(DIN:硝酸塩+亜硝酸塩+アンモニウム塩)濃度は、夏に低く、秋に増加し、初冬に最高値を示した。冬の間は濃度が頻繁に増減し、春のブルームの後に大きく減少した。DINに占めるアンモニウム塩の割合は夏に6割程度と高く、冬の間に減少した。亜硝酸塩濃度は年間を通して低かった。時系列採水器を用いたことで、センサーでは測定できないアンモニウム塩の供給が無視できないことが示された。
海盆への栄養塩供給の指標として、DIN濃度と流軸方向の流速を掛け合わせることで、観測深度の単位面積当たりのDINフラックスを計算した。DINフラックスは、濃度が高く、流速も大きい初冬に最大となった。しかし1月以降は、濃度は高いものの流軸方向の流れが弱まったため、フラックスは小さい値、もしくは負の値となった。一方、夏は低濃度ではあるが流速が大きいため、初冬に次ぐ高い値を示した。年間最高DIN濃度を示した秋は逆向きの流れが頻発したため、フラックスは小さかった。
本研究の結果、低塩分な太平洋水のDIN濃度の季節変動が初めて明らかになり、主に夏と初冬にDINをカナダ海盆に供給していることが明らかとなった。
係留系による観測は、水深108 m点の深度42 mにおいて、2021年9月12日から約1年後の2022年8月28日まで行った。観測項目は、水温・塩分・クロロフィルa蛍光・流向流速(センサー、1時間毎)、硝酸塩(センサー、3時間毎)、時系列採水器で採取した試料の各種栄養塩濃度(8日毎)である。採水試料はあらかじめ塩化水銀を加えたサンプルバッグ中で保存し、係留系回収後に船上にて連続流液方式で各種栄養塩の分析を行った。センサーによる測定データは、潮汐の影響を取り除くため、25時間の移動平均を計算し利用した。また、北極データアーカイブ(ADS)から観測地点の海氷密接度の情報を得た。
本観測により、年間を通して塩分32以下の低塩分な太平洋水を捉えることに成功した。その窒素栄養塩(DIN:硝酸塩+亜硝酸塩+アンモニウム塩)濃度は、夏に低く、秋に増加し、初冬に最高値を示した。冬の間は濃度が頻繁に増減し、春のブルームの後に大きく減少した。DINに占めるアンモニウム塩の割合は夏に6割程度と高く、冬の間に減少した。亜硝酸塩濃度は年間を通して低かった。時系列採水器を用いたことで、センサーでは測定できないアンモニウム塩の供給が無視できないことが示された。
海盆への栄養塩供給の指標として、DIN濃度と流軸方向の流速を掛け合わせることで、観測深度の単位面積当たりのDINフラックスを計算した。DINフラックスは、濃度が高く、流速も大きい初冬に最大となった。しかし1月以降は、濃度は高いものの流軸方向の流れが弱まったため、フラックスは小さい値、もしくは負の値となった。一方、夏は低濃度ではあるが流速が大きいため、初冬に次ぐ高い値を示した。年間最高DIN濃度を示した秋は逆向きの流れが頻発したため、フラックスは小さかった。
本研究の結果、低塩分な太平洋水のDIN濃度の季節変動が初めて明らかになり、主に夏と初冬にDINをカナダ海盆に供給していることが明らかとなった。