日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG44] 黒潮大蛇行

2024年5月29日(水) 09:00 〜 10:15 106 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:西川 はつみ(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、平田 英隆(立正大学)、碓氷 典久(気象研究所)、日下 彰(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産資源研究所 )、座長:西川 はつみ(東京大学 大気海洋研究所)、平田 英隆(立正大学)、碓氷 典久(気象研究所)、日下 彰(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産資源研究所)

09:45 〜 10:00

[ACG44-04] 北西太平洋における冬季海面熱フラックスの経年変動

*藤島 遼人1小橋 史明1、岩坂 直人1 (1.東京海洋大学)

キーワード:黒潮大蛇行、黒潮続流、大気海洋相互作用、熱フラックス、海面水温

南からの黒潮と北からの親潮がせめぎあう混合水域では、冬季の寒冷な季節風によって海面が冷却され、海洋から大気へ膨大な熱が放出されている。従来、中・高緯度での海洋からの熱放出は大気変動、すなわち海上風によって駆動されると言われてきたが、一方で、混合水域では海面水温が主要因であるという主張もされてきた。また、近年の黒潮大蛇行の発生に関連する黒潮続流の極端な北偏・安定化は東北沖での高水温や親潮面積の縮小などをもたらし、これらの変動は海洋から大気への熱輸送に多大な影響をもたらしていると考えられる。 そこで、本研究は黒潮続流の上流域(東経142-155度)における冬季の乱流熱フラックスに着目し、J-OFURO3データを用いて、1993年から2022年の期間での変動とその要因について調べた。まず、衛星観測による海面高度と海面水温を用いて黒潮続流軸域とその北の混合水域を定義した。すると流軸域では、黒潮続流軸が黒潮大蛇行に伴って極端に北上する2020年以降、熱フラックス、海面水温がともに急激に上昇していた。このような2020年以降の黒潮続流軸上での海水温変動について、続流の入り口にあたる房総半島沖での黒潮流軸上の水温と水平流速について解析を行った結果、2019年ごろから黒潮流軸上での流量の増加と水温の上昇が見られ、より暖かい海水が大量に黒潮続流として北西太平洋へ流れ込んでいることが分かった。このような黒潮流速の増加と高温化により、続流軸上での水温と熱フラックスの値はかつてないほど上昇し、多くの熱が大気へと放出される。一方、その北側の混合水域や南側の海域では流軸域ほどの値の顕著な上昇は見られなかった。また、発表ではこれらの内容に加えて、北西太平洋大気場との関係について、アリューシャン低気圧やジェット気流の変動がどのように大気海洋間の熱輸送に影響を与えているのかについても言及する。