日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG44] 黒潮大蛇行

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:西川 はつみ(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、平田 英隆(立正大学)、碓氷 典久(気象研究所)、日下 彰(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産資源研究所 )

17:15 〜 18:45

[ACG44-P03] 黒潮大蛇行の流路変化とその瀬戸内海への影響

*美山 透1宮澤 泰正1吉江 直樹2郭 新宇2 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構、2.愛媛大学)

キーワード:黒潮大蛇行、瀬戸内海、豊後水道

黒潮の流路を大きく変える黒潮大蛇行は、流速・温度・栄養塩などの分布を変え、日本の南岸の生態系に大きな影響を与える。2017年に始まった黒潮は6年半以上続いており、その影響の理解が求められている。2017年からの黒潮大蛇行の特徴は、2019年前後から、典型的な黒潮大蛇行(それ以前や2004~2005年の大蛇行を基準にした場合)と異なり、冷水渦が西寄りの流路を取っている点である。典型的な黒潮大蛇行時は、黒潮の流路が足摺岬に接近し、紀伊半島で離れるため、豊後水道から流入して紀伊水道を抜ける瀬戸内海の通過流量が増加すると考えられる(駒井等2008、Hayashida et al. 2023)。しかし、2019年頃からの黒潮大蛇行では、冷水渦が西寄りになった影響で、足摺岬からの離岸が増え、それまでと瀬戸内海への影響が異なると考えられる。このような流路は、他の大蛇行期では1975-1980年の期間にのみ観察された特異な状況である(美山等2023)。黒潮大蛇行の流路変化の影響を調査するために、海洋研究開発機構のJCOPE2M再解析データを用いた。JCOPE2M再解析には、1993年から現在までの日本周辺の水平分解能1/12度の日平均データがある。これを月平均にして豊後水道への流入の時系列を分析した結果、2019年頃から、それ以前には見られなかった豊後水道への流入の減少が明らかになった。観測に基づくデータによれば、2019年以降、黒潮はそれ以前に比べて足摺岬で離岸することが増えており、流入の変化と黒潮の流路の変化は密接に関連している。この流入の減少は、瀬戸内海の生態系に影響を与える可能性がある。例えば、2020年には豊後水道での赤潮の発生が観測史上最も遅く、秋まで発生しなかったのは、黒潮が豊後水道から離れて流入が弱まり、水温が上昇しなかったためである可能性が指摘されている。