10:45 〜 11:00
[AGE28-06] 一般化多峰性不飽和水理水分移動性モデルのHYDRUS-1Dへの導入
キーワード:水理特性モデル、一般化多峰性モデル、HYDRUS-1D
不飽和土中水の圧力水頭hに対する体積含水率θの関係である水分保持曲線θ(h) (WRF)およびhに対する不飽和透水係数K(h) (HCF)を関数として表すモデルは、不飽和水分移動の数値解析において重要である。これまでに単峰性の間隙径分布に基づきθ(h)を推定する水分保持関数(WRF)が多く提案されており(Brooks and Corey, 1964: van Genuchten, 1980: Kosugi, 1996など)、WRFからは連結した間隙に対して等価間隙径を仮定したMualem モデル(Mualem, 1976)によりK(h)を推定できる。
しかし、これら単峰性モデルは、団粒構造が発達し二重間隙構造を持つ黒ボク土での適用性が悪く、また砂質土において乾燥領域でのK(h)を極端に過小評価するなどの課題が指摘されている。その克服のため、複数の単峰性モデルを線形結合させたモデルが提案された(Priesack and Durner, 2006; Seki et al., 2022)。複数の単峰性モデルを自由に組み合わせることで様々な土壌に柔軟に適合することが期待される一方、汎用不飽和水分移動解析モデルへの実装が進んでいないため不飽和水分移動解析に適用してきた例は限られている。
本研究の目的は、第一に一般化多峰性モデルを汎用不飽和土中水分・熱・溶質移動解析プログラムHYDRUS-1D(Šimůnek et al., 2008)へ導入し、同モデルによる不飽和水分移動解析を可能にすることである。第二に、改良したHYDRUS-1Dを用いて蒸発法(Šimůnek et al., 1998)に基づくパラメータ推定を行い、これを通してモデルの水分移動解析における性能評価を行うことである。逆解析には汎用逆解析ソフトウェアPEST (Doherty, 2015)を活用した。
HYDRUS-1Dへの導入に関して、Brooks and Corey (BC)モデル,van Genuchten (VG)モデル,Kosugi (KO)モデルのうち任意のモデルを最大4つまで線形結合し水分移動解析を可能とした。なお、Seki et al.(2022)はWRFと連結させる毛管束モデルとして、Mualemモデルの指数部分を2か所パラメータとすることで一般化した一般化Mualemモデル(Hoffmann-Riem, 1999)を使用しており、本研究ではそれに基づく実装を行った。
一般化多峰性水分移動モデルを実装したHYDRUSを用いて熊本黒ボク土と鳥取砂丘砂における蒸発法のデータ(坂井および取出、2007)より、一般化多峰性モデルのパラメータ推定を行い、単峰性モデルVGの場合と比較した。なお,ここではBC,VG,またはKOをそれぞれ2つ結合させたモデルを用いた(BC-BC,VG-VG,またはKO-KO)。黒ボク土において、一般化多峰性モデルはVGに比べ、土中水圧力変化や階段状の水分保持曲線をよく表現した。また砂丘砂において、数値計算が不安定だったBC-BCを除くVG-VGとKO-KOは、VGの課題であった乾燥領域におけるK(h)の極端な過小評価を克服した他、表層付近の蒸発に伴う土中水圧力の急激な減少を表現した。
しかし、これら単峰性モデルは、団粒構造が発達し二重間隙構造を持つ黒ボク土での適用性が悪く、また砂質土において乾燥領域でのK(h)を極端に過小評価するなどの課題が指摘されている。その克服のため、複数の単峰性モデルを線形結合させたモデルが提案された(Priesack and Durner, 2006; Seki et al., 2022)。複数の単峰性モデルを自由に組み合わせることで様々な土壌に柔軟に適合することが期待される一方、汎用不飽和水分移動解析モデルへの実装が進んでいないため不飽和水分移動解析に適用してきた例は限られている。
本研究の目的は、第一に一般化多峰性モデルを汎用不飽和土中水分・熱・溶質移動解析プログラムHYDRUS-1D(Šimůnek et al., 2008)へ導入し、同モデルによる不飽和水分移動解析を可能にすることである。第二に、改良したHYDRUS-1Dを用いて蒸発法(Šimůnek et al., 1998)に基づくパラメータ推定を行い、これを通してモデルの水分移動解析における性能評価を行うことである。逆解析には汎用逆解析ソフトウェアPEST (Doherty, 2015)を活用した。
HYDRUS-1Dへの導入に関して、Brooks and Corey (BC)モデル,van Genuchten (VG)モデル,Kosugi (KO)モデルのうち任意のモデルを最大4つまで線形結合し水分移動解析を可能とした。なお、Seki et al.(2022)はWRFと連結させる毛管束モデルとして、Mualemモデルの指数部分を2か所パラメータとすることで一般化した一般化Mualemモデル(Hoffmann-Riem, 1999)を使用しており、本研究ではそれに基づく実装を行った。
一般化多峰性水分移動モデルを実装したHYDRUSを用いて熊本黒ボク土と鳥取砂丘砂における蒸発法のデータ(坂井および取出、2007)より、一般化多峰性モデルのパラメータ推定を行い、単峰性モデルVGの場合と比較した。なお,ここではBC,VG,またはKOをそれぞれ2つ結合させたモデルを用いた(BC-BC,VG-VG,またはKO-KO)。黒ボク土において、一般化多峰性モデルはVGに比べ、土中水圧力変化や階段状の水分保持曲線をよく表現した。また砂丘砂において、数値計算が不安定だったBC-BCを除くVG-VGとKO-KOは、VGの課題であった乾燥領域におけるK(h)の極端な過小評価を克服した他、表層付近の蒸発に伴う土中水圧力の急激な減少を表現した。