日本地球惑星科学連合2024年大会

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[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW17] Near Surface Investigation and Modeling for Groundwater Resources Assessment and Conservation

2024年5月31日(金) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:Tsai Jui-Pin(National Taiwan University, Taiwan)、谷口 真人(総合地球環境学研究所)、PINGYU CHANG(Department of Earth Sciences, National Central University )、Yu Hwa-Lung(Taiwan Society of Groundwater resources and hydrogeology)

17:15 〜 18:45

[AHW17-P07] 人工林におけるドローンLiDARデータを使った林内光環境の推定と林床面蒸発散量への影響

*高村 詩央里1恩田 裕一1ZHANG YUPAN1橋本 朝陽1、Chiu Chen wei1加藤 弘亮1五味 高志2 (1.筑波大学、2.名古屋大学)

キーワード:ドローン、LiDAR、人工林、光環境、林床面蒸発散

日本の国土に占める森林面積の割合は67%であり、そのうち人工林は40%を占める。
しかし国内の林業衰退化の背景により、人工林における森林管理の不足から樹冠閉鎖による森林環境の悪化が問題となり、降水や日射の遮断による下層植生への影響、樹冠蒸発量の増加による地下水涵養量の減少が考えられる。また強度間伐が実施された場合、たしかに樹冠蒸発散量は減少するものの相対的に林床面蒸発散量の増加から地下水涵養量への増加へとつながらない場合もある。そのような背景から、適切な間伐量の把握や下層植生への影響を予想するためにも林内光環境の定量化は必要である。
そこで本研究では、ドローンで森林上空から計測した三次元点群データを活用することで、林内日射量を推定したモデルを作成し、樹冠による日射量の遮断や下層植生の蒸発散量の影響に注目し、ドローンデータが森林管理や林内環境の評価に活用させることを目的とする。
調査地は、栃木県佐野市東京農工大学演習林FM唐沢山にあるヒノキ人工林プロットである。ここは傾斜約30度の南向き斜面である2011年に間伐率50%で列状間伐が行われた。林内には日射計を1メートル間隔で格子状に25地点設置し、2022年6月から約1年間、林内日射量の実測値を計測した。
従来の方法では、林内環境は魚眼レンズにより撮影された全天空写真による画像解析により、林内日射量や樹冠開空度などが評価されてきた。しかし解像度の低さやレンズの歪みの問題により実際の樹冠構造を正しく表現できないため推定精度に限界があり、林内作業での多くの労力を必要とするうえ、代表地点が限定されることにより林内の複数ポイントでの比較が難しい。
しかしドローンデータを使うことで、上空から飛行させるだけでデータ計測が可能なため林内での作業が不必要となる。また今回利用するLiDARデータは三次元座標をもつ点群データであり、樹冠構造そのものを高精度に再現できるため任意の地点での日射量の推定比較など活用範囲が非常に大きいことが利点である。
林内日射量を推定する方法としてドローンで計測したLiDARデータに極座標変換を施し、林内から上空を見上げたような画像に合成した。合成画像を作成するために、点群を林床面からの距離より点群データのポイントサイズを林床面から近いものは大きく、樹冠上部などの遠い点は小さく表現し遠近感を調整することで天空画像を複数パターン作成した。それらを画像解析から樹冠の開空部分と太陽の軌跡を重ね合わせることで林内日射量の大きさを推定し、林内に設置した日射量の実測値と比較しモデルの精度を評価した。
結果、合成画像のパラメータ設定により日射量の推定精度は変化し、特に適切なパラメータ設定を決定するために、遠近感や点群データ間の間隔を複数調整することで実際の樹冠構造に近いもの再現した。作成した合成画像をもとに日射量の日積算量を計算し、また林外日射量計との相対関係をとることで、林内日射量から樹冠による遮断量を考慮し、ライシメーターによる下層植生の蒸発散量の関係を考えた。
以上からドローンデータから林内環境を表現することができ、結果的に森林管理の効率化を目指した光環境の定量化が可能ということがわかった。