11:00 〜 11:15
[AHW24-02] 東京都品川区の湾岸低地の浅層地下水システムに関する実証的研究
キーワード:東京湾岸低地、都市域、浅層地下水、同位体、下水漏水
阪神・淡路大震災を機に,都市の「自己水源」である地下水が非常・緊急用水源として注目を集めているが,都市の地下水は長年にわたり行政や住民の興味・関心の埒外に置かれていた。そのため,都市の地下水システムについては不明の部分が多く(安原,2008),非常・緊急用水源としての地下水の適切かつ有効な利用の妨げとなっている。そこで,都市の浅層地下水を対象に,地下水システムの解明および類型化を目的とした研究を実施中である。本発表では,東京湾岸低地の品川区北品川地区と南品川地区の浅層地下水水質とその起源について,比較をしながら議論する。
北品川地区の8本の井戸(深度12 m以浅),南品川地区の15本の井戸(深度11 m以浅)を対象として,現地調査・採水を2021年8月(北品川地区),2023年9月(南品川地区)に実施した。両地区の地質は主に礫~シルト質砂と似通っているが,公共下水道の敷設年代は両地区で最大約10年の違いがある(北品川地区:1960年代,南品川地区:1970年代)。水質結果について,塩化物イオンは11.4~38.3 mg/L(北品川地区),4.0~28.0 mg/L(南品川地区),硝酸イオンはn.d.(不検出)~22.4 mg/L(北品川地区),7.2~38.1 mg/L(南品川地区),硫酸イオンは10.6~40.4 mg/L(北品川地区),7.3~34.6 mg/L(南品川地区)を示した。また両地区の地下水において,都市の浅層地下水の涵養源と考えられる降水・水道漏水・下水漏水の地下水涵養に果たす役割(寄与率)を,塩化物イオン濃度と水の酸素安定同位体比に基づく3成分混合解析により算出した。下水漏水の寄与率は北品川地区の地下水で高くなる傾向を示した。また硝酸イオンの窒素安定同位体比と硫酸イオンの硫黄安定同位体比の結果から,北品川地区の地下環境は南品川地区のそれよりも還元的であり,北品川地区の地下水中では脱窒反応と硫酸還元反応が進行していると考えられる。これは上記の通り,両地区の公共下水道の敷設年代の違い,すなわち公共下水道の老朽化の程度の違いが,両地区の地下水の水質と起源に明瞭な違いをもたらす主たる原因であることが示唆される。
北品川地区の8本の井戸(深度12 m以浅),南品川地区の15本の井戸(深度11 m以浅)を対象として,現地調査・採水を2021年8月(北品川地区),2023年9月(南品川地区)に実施した。両地区の地質は主に礫~シルト質砂と似通っているが,公共下水道の敷設年代は両地区で最大約10年の違いがある(北品川地区:1960年代,南品川地区:1970年代)。水質結果について,塩化物イオンは11.4~38.3 mg/L(北品川地区),4.0~28.0 mg/L(南品川地区),硝酸イオンはn.d.(不検出)~22.4 mg/L(北品川地区),7.2~38.1 mg/L(南品川地区),硫酸イオンは10.6~40.4 mg/L(北品川地区),7.3~34.6 mg/L(南品川地区)を示した。また両地区の地下水において,都市の浅層地下水の涵養源と考えられる降水・水道漏水・下水漏水の地下水涵養に果たす役割(寄与率)を,塩化物イオン濃度と水の酸素安定同位体比に基づく3成分混合解析により算出した。下水漏水の寄与率は北品川地区の地下水で高くなる傾向を示した。また硝酸イオンの窒素安定同位体比と硫酸イオンの硫黄安定同位体比の結果から,北品川地区の地下環境は南品川地区のそれよりも還元的であり,北品川地区の地下水中では脱窒反応と硫酸還元反応が進行していると考えられる。これは上記の通り,両地区の公共下水道の敷設年代の違い,すなわち公共下水道の老朽化の程度の違いが,両地区の地下水の水質と起源に明瞭な違いをもたらす主たる原因であることが示唆される。