17:15 〜 18:45
[AHW24-P01] 群馬県藤岡市八塩地区と埼玉県神川町渡瀬地区の河川水・浅層地下水への高濃度塩水の混入について
キーワード:河川水・浅層地下水、高濃度塩水、混入、塩化物イオン、溶存負荷量、鉱泉
三波川帯に位置する群馬県藤岡市八塩地区(神流川左岸)には高Cl-濃度を有する冷鉱泉が複数地点から自然湧出し,地区を東流する小河川の水質に影響を及ぼしている(高瀬,1967).高瀬(1967)によると,これらの鉱泉の水質はNaCl型(Cl-濃度:10,430~12,560 mg/L)であり,松葉谷ほか(1985)はその水の起源を新第三紀堆積岩中に取り込まれた海水(化石海水)としている.一方,神流川を挟んで対岸に位置する埼玉県神川町渡瀬地区も三波川帯に属するが,同地区の三波川変成岩を覆う河岸段丘堆積物中に賦存する浅井戸地下水は,最高で1,720 mg/Lという高いCl-濃度によって特徴づけられる(高瀬,1967).三波川帯でしばしば認められる,このような地下深部から上昇してくるCl-に富んだ’深部流体’の地表水系や浅層地下水系への混入地点,さらにそのフラックスについてはいまだに不明の点が多く,知見の集積が待たれているところである.
本研究では,八塩地区を東流する南沢川と周辺の9つの小河川(いずれも全長1 km程度;最終的には神流川に合流)を対象に,それらの最下流部におけるCl-濃度の測定とCl-負荷量(Cl-濃度×河川流量)の算出を行った.渡瀬地区においても,同地区を西流して神流川に注ぐ4本の小河川において同様の調査を実施した.さらに,浅層地下水のCl-濃度分布図,地下水面図(動水勾配),揚水試験によって求めた透水係数に基づく水理計算により,渡瀬地区において深部からもたらされ,その浅層地下水系に混入するCl-フラックスの推定を行った.現地水文調査は,2018年7-8月(夏季豊水期)と2018年12月-2019年2月(冬季渇水期)に実施した.
2018年8月の八塩冷鉱泉のCl-濃度は4,798mg/L~11,892 mg/L,また同年12月のそれは5,162 mg/L~11,032 mg/Lであった.南沢川は全長1 km程度の短い河川であるにもかかわらず,12月のその水素同位体比(δD)は源流部で-54.5‰,最下流部で-46.7‰と1 kmの間に約8 ‰大きくなり,また酸素同位体比(δ18O)も源流部の-8.0 ‰から最下流部の-7.3 ‰と0.7 ‰大きくなった.これは同位体的に重い深部流体(八塩冷鉱泉:δD=-29.8~-10.8 ‰,δ18O=-1.4~4.3 ‰)が河床を通じて河川水中に混入するためと判断される.
さて,南沢川最下流部のCl-濃度は2018年7月には632.5 mg/L,同年12月には213.7 mg/Lであった.神流川合流直前の南沢川における7月と12月のCl-負荷量はそれぞれ約44 kg/day,約45 kg/dayと求められ,南沢川のCl-負荷量に明瞭な季節変化は認められなかった.ここで,南沢川を含む八塩地区の小河川の神流川合流前のCl-負荷量は12月には合計で50 kg/day程度であることから,冬季渇水期には八塩地区の河川のCl-負荷量の90%を南沢川が担っていることになる.一方,渡瀬地区の冬季渇水期における小河川のCl-負荷量は0.2 kg/day,また浅層地下水系に混入するCl-負荷量は76 kg/dayと求められた.以上のことから,冬季の八塩・渡瀬両地区には地下深部から約130 kg/dayのCl-フラックスがあることが明らかとなった.ここで,エンドメンバーである深部流体のCl-濃度を12,000 mg/Lとすると,冬季の八塩・渡瀬両地区の表層部には,地下深部から11 m3/day程度の深部流体(塩水)がもたらされていることになる.
本研究では,八塩地区を東流する南沢川と周辺の9つの小河川(いずれも全長1 km程度;最終的には神流川に合流)を対象に,それらの最下流部におけるCl-濃度の測定とCl-負荷量(Cl-濃度×河川流量)の算出を行った.渡瀬地区においても,同地区を西流して神流川に注ぐ4本の小河川において同様の調査を実施した.さらに,浅層地下水のCl-濃度分布図,地下水面図(動水勾配),揚水試験によって求めた透水係数に基づく水理計算により,渡瀬地区において深部からもたらされ,その浅層地下水系に混入するCl-フラックスの推定を行った.現地水文調査は,2018年7-8月(夏季豊水期)と2018年12月-2019年2月(冬季渇水期)に実施した.
2018年8月の八塩冷鉱泉のCl-濃度は4,798mg/L~11,892 mg/L,また同年12月のそれは5,162 mg/L~11,032 mg/Lであった.南沢川は全長1 km程度の短い河川であるにもかかわらず,12月のその水素同位体比(δD)は源流部で-54.5‰,最下流部で-46.7‰と1 kmの間に約8 ‰大きくなり,また酸素同位体比(δ18O)も源流部の-8.0 ‰から最下流部の-7.3 ‰と0.7 ‰大きくなった.これは同位体的に重い深部流体(八塩冷鉱泉:δD=-29.8~-10.8 ‰,δ18O=-1.4~4.3 ‰)が河床を通じて河川水中に混入するためと判断される.
さて,南沢川最下流部のCl-濃度は2018年7月には632.5 mg/L,同年12月には213.7 mg/Lであった.神流川合流直前の南沢川における7月と12月のCl-負荷量はそれぞれ約44 kg/day,約45 kg/dayと求められ,南沢川のCl-負荷量に明瞭な季節変化は認められなかった.ここで,南沢川を含む八塩地区の小河川の神流川合流前のCl-負荷量は12月には合計で50 kg/day程度であることから,冬季渇水期には八塩地区の河川のCl-負荷量の90%を南沢川が担っていることになる.一方,渡瀬地区の冬季渇水期における小河川のCl-負荷量は0.2 kg/day,また浅層地下水系に混入するCl-負荷量は76 kg/dayと求められた.以上のことから,冬季の八塩・渡瀬両地区には地下深部から約130 kg/dayのCl-フラックスがあることが明らかとなった.ここで,エンドメンバーである深部流体のCl-濃度を12,000 mg/Lとすると,冬季の八塩・渡瀬両地区の表層部には,地下深部から11 m3/day程度の深部流体(塩水)がもたらされていることになる.